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トレインメッセージ

Message76:心をこめて仕事をしよう。

掲出期間:2010.8.1〜8.31

小俣 智子 Tomoko Omata
武蔵野大学人間関係学部社会福祉学科講師

淑徳大学大学院福祉研究科社会福祉学専攻修士課程修了。
社会福祉学修士。横浜旭中央総合病院医療ソーシャルワーカー等を経て2007年より現職。
主な著書「セルフヘルプ・グループ活動の実際」(共著、中央法規)、「種まく子どもたち」(共著、ポプラ社・角川書店)など。

パーソナリティ:鈴木 美佳(武蔵野大学キャリア開発科目講師)

鈴木:
小俣先生が専攻・研究されている分野は何ですか?

小俣:
「患者会」などの、問題を抱えた当事者が問題解決のため同じ体験をした人たちと活動を行う「セルフヘルプ・グループ」の社会的役割の研究です。日本では病気に関するセルフヘルプ・グループが多く、星の数だけ存在すると言われています。また、小児がんの子どもたちと、大人になった小児がん経験者への心理社会的支援を研究しています。

鈴木:
小児がんについて教えてください。

小俣:
15歳未満の子どもに発症するがんを小児がんといいます。大人のがんが胃や肝臓など組織の表面上にできるがんであるのに対し、組織の奥深くから発生します(非上皮性腫瘍)。予防することは難しく、15歳未満の子どものうちおおよそ1万人に1人の割合で発症します。近年、小児がんの治癒率は7〜8割に向上しており、全国に小児がんを経験した人は5万人以上いるといわれています。また、治療の効き目があるため、大人よりも濃厚な治療を行ないます。

鈴木:
小児がんの子どもと家族に必要なサポートを教えてください。

小俣:
長期間にわたる濃厚な治療により、髪の毛が抜けたり、手術の痕が残ったり容姿の変化があります。入院生活によって体力が低下しており、みんなと同じように授業が受けられないこともあります。また勉強も大分遅れます。退院して学校に戻った時、必要に応じてクラスメートや周囲の大人に病気のことを説明する仕事が待っています。周囲への病気の説明は、退院後の復学時だけでなく、進学、就職、結婚、別の病気による受診時と続きます。病気が理由でいじめに遭ったり、進学や就職が思うようにいかないこともあります。病気の後遺症で病院と縁が切れない人もいます。一方で「多くの人に支えられた」と小児がんの経験をプラスの経験と捉え、医師や看護師、教師など人と関わる仕事に就く人も多くいます。

治療中は、あそびや学びの保障が必要となりますし、何より子どもの家族(両親、兄弟)への精神的なサポートが重要です。治療後の生活では小児がんという病気への周囲の理解が必要となります。現在、小児がんの子どもたち、大人になった小児がん経験者を支えるため、トータルケアを掲げ医師をはじめとした医療関係者、教育関係者などが必要な支援に取り組んでいます。

私も小児がん経験者へのサポート、小児がんに対する社会の理解を深めるため、5年前に「小児がんネットワークMN(みんななかま)プロジェクト」を立ち上げました。会報の発行や年に1回小児がん支援のシンボルであるゴールドリボンのイベントを開催したり、お声がかかれば出前講演と称して全国各地に小児がんのお話をしに行っています。

鈴木:
教育・研究職に就かれたきっかけや経緯について教えてください。

小俣:
私自身中学1年生の時に白血病になったことが大きなきっかけとなり、病院でソーシャルワーカーの職に就きました。経験を積む中で、自分が学んだ知識や技術を後進へ伝えていく役割があることに気付き、また、学生時代から続けていた小児がんの支援活動をさらに学術的な見地から深めることを考え、大学教員になりました。

鈴木:
医療の現場でソーシャルワーカーはどのような活動をしていますか。

小俣:
病気になるということは、病気が深刻であればあるほどその人の生活に大きな影響を及ぼします。例えばお父さんが入院すれば収入が途絶えてしまいます。障害が残った場合には自宅にすぐに帰ることが難しいかもしれません。時には児童虐待やがんの末期のように深刻な問題を抱えていることもあります。病院に訪れる患者さんが抱える生活問題について、じっくりと耳を傾け必要なサービスを紹介して、利用させる。そして、安心して生活が送れるように援助を行います。病院には赤ちゃんから高齢者まで、そして様々な病気を抱えた患者さんが訪れます。また、その人によって住むところも家族も仕事も全て違います。一人ひとりを大切に扱い、自身の力で問題が解決できるように援助を進める、非常にやりがいのある仕事です。

鈴木:
学問や教育に取り組む上で先生がモットーとしているものは何ですか?

小俣:
「感謝」「思いやり」そして「笑いとユーモア」です。どんなに大変な状況にあってもその意味を考え、感謝の気持ちを忘れないように日々努力しています。社会福祉とは人の幸せを考え実践する学問です。自分本位にならず相手の立場や気持ちを大切にする態度を持ち続けたいと思っています。そして1度しかない人生、同じ時を過ごすのであれば、楽しく笑いのある時を過ごしたいと願っています。このため常に笑いとユーモアを心がけています。

鈴木:
これから社会に出て行く学生へ向けてメッセージをお願いします。

小俣:
「大切なのはどれだけたくさんのことをしたかではなく、どれだけ心をこめたかです」。これはノーベル平和賞を受賞したマザーテレサの言葉ですが、ソーシャルワーカーの仕事をしていて心にしみている言葉です。数を誇るのではなく、どれだけ相手のことを思って心をこめたかを大切にしてください。そしてどうぞ自分のことも大切にしてください。

キャリアレポート 先輩社会人からのメッセージ

社会人2年生 田島友一さん
[H20年度 武蔵野大学 現代社会学部 社会福祉学科卒業]
−通信機器メーカー勤務−

―どのようなお仕事をされているのですか?
通信機器メーカーのバイヤーです。製品を生産するため、自社に部品を供給する仕事なのですが、相手企業の営業の方と値段の交渉をしたり、条件を話し合ったりします。

―お仕事で苦労されている点はありますか。
日本のメーカーの方だけでなく、海外のメーカーや自社の海外の方とも関係があり、コミュニケーションツールとして英語を使いますが、まだ上達していないので苦労しています。また、人と関わる仕事ですので、自分だけの都合ではスケジュールが管理できないことも上げられます。

―田島さんが学生時代に抱いていたバイヤーのイメージと、実際に働いてからのイメージで何か違う点はありましたか?
入職前は、単に「モノを買う仕事」と考えていましたが、購入すべき部品を生産ラインに供給できないと製品が作れないので、今は「人と人、モノとモノをつなぐ仕事」だと考えています。責任はとても重いですが、その分やりがいもあります。

―最後に学生へのメッセージをお願いします。
学生時代は時間を有効に使って、何事にもアクティブに取り組んでほしいと思います。