▼常に監視されているようで不安もあります。プライバシーの問題は大丈夫でしょうか。
「最近は街でふと見上げると防犯カメラを見かけますね。防犯カメラとプライバシーの問題について、法律上の明確な決まりはありませんが、正当な目的や必要性があって公共性の高い場所に設置されるものであれば、大きな問題はないと一般に受け止められています。常に特定の民家の玄関が映り込んでいるような場合は、問題になる可能性があります」
「防犯カメラを設置するルールがないまま、数だけがどんどん増えている点は大きな問題です。どこにカメラがあり、誰が管理していて、苦情がある場合どこへ訴えればよいのかわからないからです。設置の基準を定め、映像の目的外使用を禁止するなどの統一的なルールづくりを急ぐ必要があります」
▼海外での取り組みはどうなっているのでしょう。
「英国は防犯カメラ大国として知られています。大きなテロ事件が相次いだことなどから、増えていったようです。高性能の防犯カメラが450万台設置され、ロンドンに1日出かけると300回撮影されるともいわれます。カメラで撮影していることや、誰が管理しているかは表示されているようです」
▼犯罪捜査で今後、科学技術の役割はさらに重要になっていくのでしょうか。
「現代捜査の三種の神器といえる技術があります。防犯カメラ、携帯電話の交信記録、そしてDNA(デオキシリボ核酸)型鑑定です。しかしどれだけ科学技術が進展しても、地道な聞き込みや証拠の裏付け作業の積み重ねが重要であることは、これからも変わらないでしょう。防犯カメラさえ付ければ犯罪がなくなり、犯人も捕まるというものではありません。科学技術の役割は、あくまで捜査を支援するということだと思います」
■記憶と記録、人の力を生かす
人の「記憶」による目撃証言より、機械が映像を「記録」する防犯カメラの方が信頼性は当然、高い。だが捜査の現場で、常に記録が記憶より勝っているかというと、そうではない。
象徴的なのは似顔絵だ。各地の警察には似顔絵捜査官がいて、被害者や目撃者の話を聞きながら、犯人の似顔絵を描く。「細くて鋭い目だった」「有名タレントに似ていた」といった特徴を強調して分かりやすく示すことができ、公開すると有力な情報が集まりやすい。
「見当たり捜査員」は、防犯カメラシステムにも負けない記憶力と解析能力を誇る。頭の中に数百人分に上る指名手配犯の顔と名前を焼き付け、街へ。駅やパチンコ店や路上で、すれ違う一瞬に、手配犯を見つけ出す。
見当たり捜査を生んだ大阪府警は、年間100人前後の手配犯を発見・逮捕。凶悪事件の時効撤廃もあり、警視庁などにも広がった。ポイントは年を取っても変わらない目や耳だという。
技術がさらに進歩すれば、たとえばカメラ映像の一部を人知れず書き換えるといった事態が起きるかもしれない。科学技術を過信せず、人の力も最大限生かす。捜査に限らず、この点が大きな課題であろう。(編集委員 坂口祐一)
防犯カメラ
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