在日中国大使館の李春光1等書記官(45)が、外国人登録証明書を不正入手したとして、警視庁公安部からの出頭要請を受けていた問題で、李書記官が複数の防衛関連企業にも接触していた疑いが浮上した。中国人民解放軍の情報機関「総参謀部第2部」所属という素性を隠し、日本の防衛体制を支える技術や情報に触手を伸ばそうとしていたのか。
捜査関係者によると、李書記官が接触していたとされるのは、総合重機メーカーのIHI(東京都江東区)や、総合重機大手など、複数の防衛関連企業。中国人民解放軍との関係を隠し、近づいていた。
警察当局は、ある関係者が中国大使館を訪れていたことも確認しているという。
IHIは護衛艦や航空機のエンジンなどを製造しているほか、ロケットなど宇宙・防衛機器の設計・製造を行う「IHIエアロスペース」(東京都江東区)を傘下に持つ。ロケット技術は弾道ミサイルなどへの転用も可能とされる。
一方、総合重機大手は、護衛艦や戦車、戦闘機などの開発を担う企業。いずれも、日本の防衛システムの根幹を担うメーカーだ。
警察当局によると、李書記官が所属する「総参謀部」は、軍事情報の収集を主な任務とし、各国にスパイを送り込んでいる。李書記官は「松下政経塾出身」「元東大研究員」という肩書や人脈を使って、防衛関連企業も諜報活動のターゲットにしていたとみられる。
防衛関係者は「中国の諜報活動は、時間をかけてエージェントを対象国に潜り込ませる。相手を信用させて最新技術や情報を収集したり、世論工作を行う。米国ではかつて、軍需兵器の開発研究者に接近し、軍事情報を不正入手していたことが発覚した」と話す。
現時点で、李書記官がどんな防衛情報を狙い、どこまで肉薄したかは不明だが、前代未聞の事態に関係者の間には動揺が広がっている。先の防衛関係者は「機密情報は一部の開発者や企業幹部しか知らない。簡単に情報が漏れることはないはずだ」という。
IHIは夕刊フジの取材に「現在確認している段階」(広報)と回答。総合重機大手は「初めて聞く話。確認もできていない」と話している。
李書記官をめぐっては、農水省の機密文書の内容を把握していた疑いも出ている。