簡易ブログのツイッターや交流サイト(SNS)のフェイスブックを利用しているインターネットユーザーは、8日中にマルウエア(悪意のあるソフトウエア)に感染していないかどうか確認したほうがいいかもしれない。
1年以上前にマルウエアに感染した世界で何十万台ものコンピューターが米東部夏時間9日午前零時01分(日本時間同日午後1時01分)にインターネットに接続できなくなる恐れがあるからだ。
米連邦捜査局(FBI)はこの時刻に、このマルウエアに感染したコンピューターのための一時的な対策として設けていたインターネットサーバーを閉鎖する。FBIはこのサーバーを、8カ月間運用してきた。FBIはサーバーの運営維持の仮処分命令を裁判所から得ていたが、その期限が切れ、更新もされなかったためだ。
マルウエア問題は、国際的なハッカーらがオンライン広告詐欺を働き、世界で57万台以上のコンピューターをマルウエアに感染させたことから始まった。FBIは昨年ハッカーらの取り締まりに踏み切ったが、その際、ハッカーらがコンピューターをコントロールするために使っていたサーバーを使えなくすると、全ての感染被害者がインターネットに接続できなくなってしまうことが分かった。
そのためFBIは異例の措置として安全網を設けた。民間企業と契約して問題のサーバーの代わりとなる未感染のインターネットサーバーを2台導入し、感染した人々が突然ネットに接続できなくなる事態を回避しようとした。
またFBIは、ユーザーがコンピューターの感染を確認したり、修正方法が掲載されたセキュリティー企業のサイトへのリンクを探せたりするサイトの運営を民間企業に依頼した。
感染当初から、大半の被害者は自らのコンピューターが感染していることを気づかずにいる。マルウェアによって恐らくネットサーフィンのスピードが遅くなったり、ウイルス対策ソフトが無効になったりしているにもかかわらず、である。そのため、感染したコンピューターは他の問題に対しても脆弱(ぜいじゃく)になっている。
多くのコンピューターユーザーは、電子メールの送信、ショッピング、それに情報検索のために日常的に使っているコンピューターに関する詳細な知識を持っていない。ウイルス、マルウエア、銀行詐欺、それにインターネット詐欺があふれるコンピューターの世界は遠く、分かりにくい世界であり、警告のメッセージは読まれなかったり、見過ごされることが多い。
また、中には単に政府を信用せず、連邦政府当局が人々をスパイしたり、インターネットを乗っ取ったりしようとしているだけだと考える人もいる。ブログやネット上のフォーラムには、米国民のコンピューターを乗っ取る策略として、政府がマルウエアを使っていると警告する内容の投稿が相次いだ。FBIやマルウエアに詳しいサイバーセキュリティー専門家は、こういった見方をばかばかしいと非難している。
それでも、インターネットには陰謀説が飛び交っている。
あるユーザーはネットへの投稿で、「FBIはみなにあのサイトに行ってチェックしてもらうことで、わたしたちのコンピューターをチェックしたいだけだと思う。FBI捜査のためにデータを盗もうとしているに過ぎない」と述べた。
「これもまた、みなを怖がらせるための策略だ。Y2K(2000年問題)を思い出せ」と投稿するユーザーもいた。
2000年が近づいたときのY2K問題のように、これが空騒ぎに終わるだろうという潜在的な意識も存在する。当時はコンピューターが2000年が来ることを前提とせずに製造され、2000年になるときに技術的な問題が生じて一部のコンピューターが動かなくなるとの懸念が生じた。しかし、結局のところ、問題はほとんど起きなかった。
全米で何百万ものインターネットユーザーがいることを考えれば、何千人というのはそれほど大きな問題ではない。ただし、あなたがその感染者の1人でなければ、だ。
議会のサイバー安全保障連絡会「コングレス’S」の共同発起人であるジム・ランジェビン下院議員(民主、ロードアイランド州)は、コンピューターユーザーには良識ある行動をし、自らのコンピューターがマルウエアなどに感染したり、犯罪者から乗っ取られたりしないようにする責任があると指摘した。
同下院議員は「こういったたぐいの問題は、われわれの社会のインターネットへの依存がますます大きくなっているのを背景に、増え続ける運命にある。この問題は、みながそれぞれ自分の役割を果たせるのだということを思い起こさせている」と述べた。
FBIの当局者は、まだマルウエアに感染していると思われるコンピューターの数を追跡している。4日の時点で米国内の数は約4万5600台と、1週間前から2万台近く減った。世界中ではおよそ25万台が感染している。この数は徐々に減っているほか、インターネットサービスプロバイダーの努力もあるため、9日に問題が生じる可能性は低くなっているかもしれない。
FBIの特別捜査官トム・グラッソ氏によると、多くのインターネットプロバイダーは顧客のサポートを計画している。一部のプロバイダーはサーバーの問題を修正するようなソリューションを導入している可能性もある。その場合、インターネットは機能するが、マルウエアは被害者のコンピューターに残るため、将来問題が発生する恐れがある。その他のプロバイダーは、コールセンターへの相談が増える事態に備えている。
9日に、読者の皆さんがこのWSJ記事をネットで読むことができないという事態が生じた場合、このようなコールセンターが唯一の問題解決法になろう。