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[科学]ニュース トピック:杉浦美香のさくらんぼ白書
【杉浦美香の環境白書】温暖化問題の根拠となったIPCC報告書 次回は信頼性を取り戻せるのか
2011.1.23 07:00
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2度上昇に抑える意味
昨年12月の国連の気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)でまとまったカンクン合意では、「共有のビジョン」として産業革命以降気温上昇を2度以内に抑えるという文言が入った。
この2度について、IPCC設立当初から深く関わってきた地球環境産業技術研究機構(RITE)副理事長の茅陽一氏ら科学者有志は昨年11月時点で、意見書を発表した。
地球温暖化が起きていることが疑う余地がないことや、20世紀後半以降に起きた温度上昇の大部分が人類の活動による温室効果ガス増加による可能性が非常に高いとするIPCCの報告書は妥当であるとしたうえで「温室効果ガスの削減目標と2度抑制、そのための対策である2050年の世界の温室効果ガス排出半減などのG8で提唱された目標はあくまで政治的判断の一つであり、科学的要請ではない」と結論づけた。
確かにそのとおりだ。IPCCは政策提言を行っているわけではない。ただ、第5次で示される報告書のシナリオに沿って、大きな被害を受ける島嶼(とうしょ)国といった途上国や貧困国が存亡をかけて、先進国に対応を迫るだろう。
浜中裕徳・地球環境研究機関(IGES)理事長は「カンクン合意で、2015年までに気温上昇の抑制を2度か(島嶼国が求めていた)1・5度抑制かといったことの見直しを行うことになっている。第5次報告書はそういった意味でも重要だ」と指摘する。
IPCC評価報告書の中立性そして不確実性をふまえたうえで、科学の成果を「智恵」にするかどうかは、各国の政策決定者にかかることになる。(杉浦美香・社会部環境省担当)
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