テストのため、ウェンブリースタジアムに設置されたゴールライ ンテクノロジー
テストのため、ウェンブリースタジアムに設置されたゴールライ ンテクノロジー

ついにサッカーの歴史が動いた。5日、サッカーの規則改正を協議するIFAB(国際サッカー評議会)がスイス・チューリッヒで特別会合を開き、ボールがゴールを割ったかどうかを機械で判定する「ゴールラインテクノロジー」の使用を許可した。これまで人間によるジャッジにこだわってきたサッカーだが、ついに一線を越え、機械の助けを借りることが決まった。これを受けて、プレミアリーグでも2013−14年シーズンから、導入されることになりそうだ。

FIFA(国際サッカー連盟)のジェローム・ヴァルケ事務局長は記者会見で「12月のクラブ・ワールドカップ(W杯)、2013年のコンフェデレーションカップ、2014年W杯で使用する」と明言した。これまで試験的に使用されたことがあったが、正式に採用されるのは初めてだ。具体的には12月6日、横浜国際競技場(日産スタジアム)で行われる、今季のJリーグ優勝チームとオセアニア代表のオークランド・シティー戦が、最初のゲームになる。

他には豊田スタジアムなどにも設置され、主審が下すジャッジの手助けをする(昨年、FIFAのブラッター会長は、「2012年のクラブW杯の一部を被災地で開催する」と明言したが、公式発表では昨年と同様、会場は豊田と横浜の2カ所のみ。どうなっているんだろう…)。

さらにバルケ事務局長はこう強調した。「ゴールラインテクノロジーが導入されても、主審のジャッジが最終であることは変わらない」。また今回、IFABは試験導入してきた、両ゴール横に追加副審をおく、「追加レフリー制」も本格採用することを決定した。ただし今年のクラブW杯では、このゴールラインテクノロジーと「6人制レフリー」を併用するかどうは、「競技規則の問題だ」として、言及しなかった。

承認されたゴールラインテクノロジーは、現在2つの方式がある。今後、承認されれば増えるという。現行の2つとは、カメラを使った「フォークアイ」と磁気センサーを使った「ゴールレフ」。フォークアイはソニーが昨年、買収した英国の企業が開発したもので、すでにテニスやクリケットで採用されている技術だ。ゴールレフはデンマークとドイツの合弁企業が開発したシステムで、ゴール枠に磁場を発生させ、ボールが完全に超えたかどうかを判断する。

問題は費用だ。ひとつのスタジアムにつき、およそ20万ドル(約1600万円)もかかる。フォークアイよりも、ゴールレフのほうが、少し費用は安いという。2012年クラブW杯や、2013年コンフェデ杯、2014年W杯で導入する際の費用は、FIFAが負担する。だが今後、ゴールラインテクノロジーの導入を希望するリーグは、それぞれが負担しなければならない。懐が比較的豊かなプレミアリーグの各クラブは、今季から設置を開始し、テストを重ね、来季(2013−14年)からの導入が濃厚だ。

だが残念ながら、「このゴールラインテクノロジーは主審のジャッジを助けるためのもの。場内のスクリーンやテレビで、ジャッジの模様を放映するようには作られていない」とFA(イングランド協会)のアレックス・ホルン専務理事は話す。テニスやクリケットのように、微妙な判定のとき、ファンらが画面でそれを確認する、ということにはならないようだ。ウィンブルドンなどで、少し緊張しながら、画面でボールの軌跡を追うあの瞬間は、結構好きなのだが…。

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原田 公樹
1966(昭和41)年8月27日横須賀生まれ、呉育ち。国学院大学文学部中退。週刊誌記者を経てフリーのスポーツライターとして独立し、99年に英国へ移住。ウェンブリースタジアムを望む、北ロンドンの12階のアパートメントに住んでいる。東京中日スポーツやサッカーマガジンに寄稿し、ロンドン・ジャパニーズの不動の左サイドバックでもある。blog:http://blog.livedoor.jp/kokiharada/ mail:kokih@btinternet.com