今月5日午後8時ごろ、在韓米軍第51飛行団に所属する憲兵7人が、京畿道平沢市の米軍基地(K55)周辺で、Yさん(35)など韓国の民間人3人に手錠を掛け、150メートルほど離れた部隊の正門まで連行するという事件が発生した。米軍の憲兵たちは、基地周辺のロデオ通りをパトロール中、駐車をめぐって口論の末、楽器店を営むYさんたちを力で押さえ付け、腹ばいにさせた上、手錠を掛けたという。そして、約35分後に平沢警察署松炭派出所(日本の交番に相当)の警察官4人が出動したのを受け、ようやく手錠を外した。
平沢市の米軍基地の正門から約500メートルにわたって続くロデオ通りは、同市が条例で「車のない道」に指定し、駐停車が禁止されている区域だ。米軍の憲兵らは警察の調べに対し「(駐車の取り締まりを行っていたところ)Yさんが先に(憲兵隊員を)こぶしで殴打しようとしたため、正当防衛として手錠を掛けた」と供述したが、たとえそれが事実だったとしても、武器を持たない民間人に手錠を掛けるという行為は、過剰防衛に当たる可能性が高い。
韓米駐留軍地位協定(SOFA)は、在韓米軍による部隊外のパトロールについて「韓国当局との連携の下で行うべきで、米軍の規律や秩序の維持、または安全保障のために必要な範囲内に限定される」と定めている。SOFAが「米軍の秩序の維持や安全保障のため」米軍の憲兵に基地周辺の道路での駐車を取り締まる権限の行使を認めているのかどうかもあいまいだ。しかし、米軍が基地の外で取り締まりを行う際には、韓国の警察の立ち会いの下で行うか、または韓国の警察と合同で行うべきだというのが、SOFAの規定の背景にある基本精神だ。
女子中学生2人が米軍の装甲車にひかれ死亡した「ヒョスン・ミソン事件」も、結局は単なる事故だったことが判明したが、米国側の初動対応が不適切だったため、反米デモに発展してしまった。同事件以後、米軍は韓国の民間人との間で事件が発生するたび直ちに謝罪し、事件が思わぬ方向に発展しないよう気を使ってきた。今回の事件でも、ジェームズ・サーマン在韓米軍司令官が8日、報道資料を通じて謝罪したほか、第7空軍のジャン・マーク・ジュアーズ司令官も記者会見を開き、謝罪するとともに再発防止を約束した。
今回の事件は、米軍の憲兵隊が基地の外でパトロールを行った上、民間人に対し過剰防衛行為に及んだことから、韓国の主権侵害をめぐる論議の余地もある事件だ。韓米両国はSOFAの条文をより明確化するとともに、米軍と韓国の民間人の間でのささいな衝突が外交問題や反米デモに発展しないよう、迅速かつ明確な処理を行うという基本的な手続きを盛り込むべきだ。