「えーっ!?そんなにお給料低くてやっていけるの!」
博士過程に在籍中意気揚々と日本に帰省した際、母親に何故か自分の年収を誇らしげに話した僕は、コンプレックスを持つようになってしまいました。どこで道を間違って貧乏人に見られるようになってしまったのか。
大学からもらえる年間およそ二百◯十万円で暮らしていくことに、何の不自由も感じていませんでした。日本で大学院に行くと自己負担だから実質無料なのは正直お得だし、無事卒業したらPh.D.という誉れ高い学位ももらえるし、僕自身はそんなに切り詰めて生活をしているという実感がなかったのです。母親は高度成長やバブルで日本がバラ色だった時期に戦後型核家族を切り盛りしてきた専業主婦だから、失われた◯年で贅沢の味を忘れてしまった僕らの世代とはわけが違うともいえます。
しかし、バカにしたように驚かれると、自信がなくなってしまいます。
確かに僕は理系Ph.D.を目指す将来性豊かな独身貴族で、鏡をみると自分で惚れ惚れするぐらいの色男でした。でも、フェイスブックをのぞくと、宿題を写させてやった学部時代の同級生が今をときめく大企業で働いていたり、結婚しただの子供が出来ただの、頼まれているわけでもないのに宣伝してきます。大学の時あんなバカで、教科書の内容教えても何一つ分かってなかったあいつが、もう家買っただと?来たる夏のバケーションは、バハマで一週間だと?ロサンゼルスで二万円する寿司をたいらげただと?カバーチャージ20ドルするクラブで女と夜通し飲んで踊り狂っただと?その一方、僕は20万円ぐらいで中古のアメ車をやっとこさ手に入れ、自転車で毎日のようにスーパーに行く必要がなくなり、一週間分の買い物をまとめてできるようになったことをささやかに喜んでいる。
僕の今の姿は、仮の姿だ。年収200万円の科学者の幼虫は、脱皮して蝶となり、舞い狂い、いずれフェイスブックにいる自慢厨に毒針を刺すようになるのだ。(その後脱皮してなったのは年収400万円のしがないポスドクだったことは書くまでもない。)
フェイスブックの開いたブラウザーを閉じ、憂鬱なそんな夜に必ず訪れるサイトがありました。
「Global Rich List」−−世界富豪リスト。このサイトでは、年収を入力すると、自分が世界で何番目にリッチな人間なのかが分かる仕組みになっています。恐らく為替変動を考えていなかったり、元データがほぼ10年前のものといった弱みがありますが、世界におけるおおまかな位置は分かるのです。
僕は年収200万円でも世界でおよそ七億番目の長者、なんと上位11%に入るお金持ちだということがわかります。この世の女のすべてがお金の魅力で釣れるものとすれば、10人中9人は手に入れられるということなのです。
悪くない・・・ 悪くないぞ・・・。
母上さま、僕の収入は低くないんですよ・・・。実は隠れフユーソーだったのですよ。
このようにして、僕は自分がグローバルスタンダード上ではまったく貧乏でないばかりか、リッチな人間だということを悟ることができたのです。このサイトによると、日本円で年収550万円ぐらい貰っていれば、世界では上位1%の富裕層に属してしまうことがわかります。これだけの資産があれば、僕もPh.D.を取ってポスドクになれば、富裕層1%が目安のゆかしの入会審査に通るかもしれない。まわりから貧乏な空気を刷り込まれていた院生時代の僕は、このサイトによって精神の平衡を保っていたのです。
さて、今の僕はどれぐらいリッチなのかな、とチェックしてみました。
大変惜しいですが僕は、世界上位1%の富裕層には含まれていません!でもあともう少しの頑張りです。僕を狙っている女性の皆さん、リッチな僕に見初められるよう女子力をたんと磨いておいてください。奪い合いの競争激しくなりますから。しかし現時点での僕は下位99%に含まれてしまうので、とりあえず僕の住んでいる街に「Occupy ナンタラ」が来たら参加して、恵まれない僕をアピールしたいと思います。
「My postdoc employment contract runs out in several months. I'm the 99%!!」(あと数ヶ月でポスドク任期が切れます。私は99%のその他大勢です。)
デモに参加して、ちょっぴり可愛いボヘミアンな女の子でも見つけて、「今ぼくらが占拠しているのはウォール街だけど、本当はキミのハートを占拠しに来たんだ。」とかいう台詞を吐くチャンスをぜひ作りたいですね。デモは、志をともにする異性との出会いの場所でもあるのですから・・・。
ふと考えてみると、グローバルに見れば上位数パーセントに含まれるほどの富に恵まれているにもかかわらず、暮らしが良くならないと嘆き自分は不幸だと考える先進国の人間は、いったいどうすれば幸せになれると思っているのでしょうか。
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フツーに働く人が苦労せず富裕層になる、ものすごく簡単な方法 へのコメント
や、もう、答えは前文にある通り、彼氏彼女をゲットすれば、
幸せになれると思ってんじゃないでしょうか、
リンク先のVipper速報にある通り。
ところで、ブログタイトル下の一行紹介に
「昨年、とうとう人格崩壊。」とありますが、何かあったのでしょうか。
「石仮面」かぶって人間やめちゃったとか?
> や、もう、答えは前文にある通り、彼氏彼女をゲットすれば、
> 幸せになれると思ってんじゃないでしょうか、
女性は金の二乗に等しい
http://docnosuke.livedoor.biz/archives/51334646.html
ので先進国の人間なら他の恵まれない地域の女性なら殆ど手に入るはずです。
> ところで、ブログタイトル下の一行紹介に
> 「昨年、とうとう人格崩壊。」とありますが、何かあったのでしょうか。
ご存知のように最近運用中にデザイン変更のテストをしてるので(笑)、内容はまだ流動的です。
幸福度が伸び率の関数であるとするなら、先進国のじり貧の状況は政治的に非常に危険ですね。
> このエントリーといい、Chikirin女史の17日付のエントリーといい、貧富の格差についていろいろ考えさせられます。
まあ人の幸福感は、自分が属している環境内での相対的な位置で決まるということなのでしょう。
> 幸福度が伸び率の関数であるとするなら、先進国のじり貧の状況は政治的に非常に危険ですね。
というか、先進国内での「勝ち組」と「負け組」に分けて考えるべき時代になったと考えてます。アメリカで中流以下で暮らしてると、気分的に先進国で暮らしているような感覚がなくなります。
2012年07月08日 18:47
喜びを覚えるように出来ているからですよ。
他人の不幸は蜜の味と言うのは、下衆な人間だけに当てはまることではなく、
人間の脳のつくりに組み込まれた真理なのです。
だから、どんなに物や金や、その他欲望を満たす物を持っていても、
あなたの隣にあなたよりも裕福な人間が座った瞬間に、自分が不幸だと
感じてしまうのです。
人間の欲望には限りが無いと言うのは、まあそう作られちゃってるんだから
あがいても仕方が無いということですね。
「足るを知る」というのは脳科学から見れば、ただのやせ我慢でしかありません。
2012年07月09日 07:32
> 人間の脳は絶対的な価値ではなく目に入るものとの相対的な優劣に対して
> 喜びを覚えるように出来ているからですよ。
>
> ...
>
> 「足るを知る」というのは脳科学から見れば、ただのやせ我慢でしかありません。
まあ現状に満足できてしまう人間ばかりでは人類が前に進んでいかないでしょうから、そういう感情の集まりをポジティブな方向へもっていけるシステムが一番豊かな社会につながっていくんでしょうね。
ただし、価値基準には個人差もあるから、みなが皆同じ価値観で優劣をつけているわけではないというところも重要でしょうね。
僕は実際にあまり金銭や物の所有欲というのは、自分でも困るほどに感じないんですよね。でも、キレイな女性たちに囲まれていたいという方の欲はすごくあるんですよ(笑)。でもそう考えてしまうと、女性は資産を持っている男が大好きですから、無一文であるわけにもいかない。
人生うまく行かないもんです。
2011年10月20日 07:38