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違法ダウンロード罰則化の波紋

6月21日 19時20分

西村敏記者

インターネット上の動画サイトなどにあふれる海賊版の音楽や映画などの映像。
これまでは、投稿した人だけが処罰の対象でしたが、ことし10月からはダウンロードした人にも罰金などの刑事罰が適用されることになりました。
今回の法改正が広げた波紋について、科学文化部の西村敏記者が解説します。

違法ダウンロードに罰則

インターネットの動画投稿サイトや掲示板、ファイル交換ソフトなどに掲載されている音楽や映画などのファイル。
この中には権利者に無断でアップロードされた、いわゆる海賊版が多く含まれています。

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これまで、こうしたファイルをインターネット上にアップロードした人に対しては、懲役10年以下か罰金1000万円以下の罰則が適用されてきましたが、ダウンロードすることに関しては、おととし、法律で禁止されたものの、罰則はありませんでした。
それが、20日に開かれた参議院本会議で改正著作権法が可決・成立。
ダウンロードした人に対しても懲役2年以下か罰金200万円以下の罰則が適用されることになったのです。

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罰則の対象は?

法律は、ことし10月1日に施行されます。
何が、どう変わるのでしょうか。
例えば、YouTubeなどの動画投稿サイトから、音楽や映像を違法なものと知りながらダウンロードする行為はすべて処罰の対象になります。
ただ、捜査権の乱用を防ぐため親告罪となっていて、アーティストや制作会社など被害者からの告訴がないかぎり、処罰はできません。
また海賊版であっても、動画サイト上で再生して閲覧するだけでは、処罰の対象となりません。

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違法ダウンロード・年間43億件超

今回の法律改正の背景には、海賊版のファイルの流通が一向に減らない現状があります。
実際に渋谷駅前でインタビューしたところ、10代や20代の若者の多くが、CDなどは購入せず、インターネットから無料でダウンロードして聴いていると話していました。
中には、「無料で音質のいい音楽が手に入るので、CDを買うのがばからしくなった」と話す学生もいました。

日本レコード協会が2010年に行った推計では、音楽の配信数は正規のものが年間4億4000万件だったのに対し、およそ10倍の43億6000万件が違法なものでした。
被害額はおよそ6600億円に上るとしています。
日本レコード協会は、「違法なものが流通する状況がこのまま続くと、新しい音楽が作っていけなくなる。罰則の導入によって違法利用をやめてほしい」と話し、今回の法改正を歓迎しています。

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十分な議論なし

一方で、法律関係者やネットの利用者の間には、反対の声が広がっています。
理由の1つが国民に広く関わる重要な法改正にもかかわらず、衆議院では審議が行われないなど、十分な議論がなかったためです。
ダウンロードの罰則については、もともと平成18年から平成21年にかけて文化庁の審議会などで議論されてきました。
このときは、犯罪として軽微であることや、家庭内で行われる私的な行為を取り締まるため、実効性に疑問が残るとして適用は見送られました。
それが、6月15日に議員立法として法案が国会に提出され、税と社会保障の一体改革の陰で、僅か5日間でスピード成立したのです。
このため、法律関係者などからは、文化庁の審議会で罰則が見送られてから状況がどう変わったかや、おととしダウンロードが違法化されたあと、どういう変化があったかの検証が尽くされていないとして批判の声が上がりました。

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ダウンロードは減るのか?

法改正に反対する人が挙げるもう1つの理由は、本当に違法ダウンロードが減るのかという問題です。
親告罪のため、誰もが取り締まられるわけではありませんが、違法ダウンロードの件数を考えると、幅広く取り締まることは難しいのが現状です。
今回、渋谷の街頭でインタビューした若者からも、今回の改正をきっかけに違法ダウンロードはやめるという声がある一方で、逮捕されることはないだろうから、今後も続けるといった声が聞かれました。
違法ダウンロードの罰則は海外でも導入されていますが、フランスなどは3回違反した場合に初めて処罰の対象とするなど、啓発と取り締まりを両立させながら、慎重な運用を進めています。
日本弁護士連合会も捜査権の乱用につながるなどといった課題を指摘していて、どういったときに摘発されるのか、分かりやすい説明が必要です。

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コンテンツを守るには

日本のコンテンツ文化を守るために、違法ダウンロードは放置できない問題です。
ただ、違法ダウンロードをなくすには、罰則を適用するだけでなく、著作権の重要性を訴える教育や、違法なものと正規のものを分かりやすく判別できる仕組みを整えることも重要です。
今回の改正をきっかけに、どのように実効性のある形で違法ダウンロードをなくしていくのか、国民的な議論を深める必要がありそうです。

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