ポキッ!
ポッキーが、折れるたびに、俺の心の何かも折れていく。
星羅は、笑いながら新しいポッキーを取り出す。
「ダメじゃない! 途中で折れちゃったわ、もう1度、最初から。」
星羅は、再びポッキーを口にくわえる。
ポキッ!
ポキッ!
ポキッ!
俺の心の中で、小気味良い音で、何かが折れてゆく。
星羅は、ため息をつく。
「しょうがないわね。 これじゃあ、キリがないわ。」
・・・・・・ん?
ひょっとして、あきらめたのか?
折れかけた、俺の心に小さな希望の光が宿る。
「ポッキーなしで、やるわよ!」
星羅は、俺の顔を両手で押さえつける。
「ひいッ!」
俺は、小さな悲鳴をあげる。
罰ゲームは、ポッキーを食べる事のはずなのに!
星羅は、ポッキーを介さずダイレクトに顔を近づけてくる。
この女、「俺の初めての・・・・・・」を奪う気だッ!
必死に抵抗しようとするが、押さえ込まれる。
何てことだ、この女の方が力が強い!
もう、逃げられない!
俺は、目を閉じた・・・・・・
その直後、ガチャッと部屋のドアが開く音!
「やあ、星羅、ケンちゃん! 差し入れを持ってきたよ。」
現れたのは、星羅の兄。
星士郎さんだ。
何故か半裸で、筋肉モリモリのナイスガイ!
何故か、家の中なのにサングラスをかけている。
俺と星羅は、あわてて離れるッ!
星羅は、真っ赤な顔をして兄に向かって叫ぶ。
「ちょっと! バカ兄貴ッ! なに勝手に入ってくるのよ!」
星士郎さんは、全く動じずに笑顔で答える。
「だから、差し入れだってば! 北海道の
鮭トバだぞ、結構うまいんだよ。」
おやつというより、酒のツマミみたいだ。
「あと、ケンちゃんにはコレをあげるよ。」
星士郎さんは、俺に木彫りの熊の置物をくれた。
北海道の定番のお土産だ。
助かった!
俺は、大きくため息をつく。
ありがとう、星士郎さん!
星羅は、ヒステリックな声で兄を怒鳴る。
「用が済んだら、さっさと出て行ってちょうだい!」
マズい!
星士郎さんがいなくなったら、罰ゲームが再開してしまう。
俺は、勇気を出して声をだす。
「星士郎さん! 一緒に、テーブルトークRPGをしませんかッ!」
「ちょっと! ケンちゃん! 急に何を言い出すの!」
星羅が、俺を睨む!
だが、俺の声は星士郎さんに届いた。
「テーブルトークRPGか、楽しそうだね! いいよ! やろうか!」
星羅は、わめきだす。
「何、言ってるのよ! バカ兄貴! 嫌よ! 絶対、嫌!」
星士郎さんは、全く動じずに笑顔で答える。
「何を言ってるんだ、星羅! テーブルトークRPGは、人数が多いほうが楽しいぞ!」
助かった!
ありがとう、星士郎さん!
俺は、ムキムキの筋肉をうっとりとした表情で見つめる。