「イエスッ! イエスッ! イエーースッ!」
ドラゴンを倒した俺は、小さなガッツポーズを連発する。
俺は勝った! 勝利した!
ザワ・・・・・・ ザワワ・・・・・・
「次は私のターンね、ケンちゃん。 うふふふ。」
敗北したはずの、ゲームマスター星羅がダイスを持っている。
俺は、不思議そうに尋ねる。
「何を言ってるんだ、星羅? ドラゴンは、もう倒したぞ。」
「ええ、ドラゴンは死んだわ。 でも、1つ忘れてない?」
「忘れる? 何をだ?」
「ドラゴンは、ある者と契約してアキレスを殺そうとしたのよ。」
「あ、ある者・・・・・・?」
「その、ある者は、ずっと狙ってた! 女戦士アキレスを!」
「だ、誰だよ。」
「距離は、200メートル。 女戦士アキレスを狙撃する。」
星羅は、そう言ってダイスを振る。
「狙撃って・・・・・・」
俺は事態が理解できず、混乱する。
「
命中! 次は、ダメージ判定。」
さらに、星羅はダイスを振る。
この展開は・・・・・・
「ダメージは、47ポイント。 女戦士アキレスは死亡したわ。」
「ちょ、ちょっと待て! 何だそれ! 誰が攻撃したんだ!」
「攻撃したのは、ゴブリンD。 武器は、バレットM82。」
最初の冒険で、女戦士アキレスを瞬殺した、ゴブリンの
狙撃手。
確か、仕留め損ねて逃がしてしまった・・・・・・ ゴブリンD・・・・・・
ゴブリンは、人間の言葉は喋れない。
たぶん、ゴブリン語でこう言っていたんだと思う。
「兄さん達、
敵は討ったよ・・・・・・ でも、俺は嫌だね。 こんな世界。」
俺の女戦士アキレスは死んだ。
本日、3度目の死を迎えた。 通算、7度目の死を迎えた。
星羅は、ニヤニヤと笑って言う。
「言ったでしょ。 ゲームマスターは、神! プレイヤーは、絶対に勝てない!」
俺は、絶望の表情を浮かべ、その場にひざまずく。
星羅は、ガサガサとポッキーの箱から1本のポッキーを取り出す。
「さあ、受けてもらうわよ! 罰ゲーム!」
星羅は、ゆっくりと俺に歩み寄る。
「あ、ああ、ああああ・・・・・・」
俺の思考回路は、崩壊してゆく・・・・・・
星羅は、1本のポッキーを口にくわえて、顔を近づける。
黒いチョコレートの先端が、俺の口に近づいてくる。
俺は、動けなかった。
絶望の声にならない声を発した、その口にポッキーは進入してくる。
甘いチョコレートの香りが舌に伝わる。
それと、同時に絶望の感情が心に伝わってくる。