本日3度目、ゲームという想像の世界に構築された、俺の女戦士アキレス。
直後、冒険者ギルドの建物の天井を突き破って現れるドラゴン。
赤き神竜、エンシェント・レッド・ドラゴン!
俺はコマンドを宣言する。
「女戦士アキレス! 装備を変更する、右手に魔法の短剣を装備する!」
魔法の短剣・・・・・・ 最初の冒険で手に入れた、マジックアイテム。
これは、攻撃力は低いが全ての敵にダメージを与えられる。
俺は、星羅に聞く。
「この魔法の短剣なら、ドラゴンにもダメージを与えられるよな?」
星羅は、ニヤニヤと余裕の笑みを浮かべる。
「ええ、少しだけどね。 うふふふ、先制攻撃はアキレスにあげるわ。」
「じゃあ、遠慮なく攻撃させてもらうよ。」
左手でダイスを軽く振る。
出た目は・・・・・・
6と6のゾロ目、これは攻撃の絶対命中を意味する。
星羅は、笑いながら話す。
「あら、ラッキーじゃない!」
俺は静かに返事をする。
「そうだな、次はダメージ判定だ。 そらよっと!」
左手でダイスを軽く振る。
出た目は・・・・・・
6と6のゾロ目、これはクリティカルヒットを意味する。
このゲーム、『 ソード・アンド・ワールドRPG 』においての、クリティカルヒット。
再度、ダイスを振りダメージを加算する事ができる。
「あら、またラッキーね。 でも、そんな攻撃じゃドラゴンは倒れないわよ。」
星羅は、まだまだ余裕の素振りを見せる。
俺は静かに話す。
「2度あることは、3度あるって言うぜ。」
左手でダイスを軽く振る。
出た目は・・・・・・
またもや、6と6のゾロ目。
ダブル・クリティカルヒット!
星羅の顔が少し、引きつる。
俺は、星羅に話しかけながらもダイスを振る。
「なあ、星羅?
麻雀って、やったことある?」
ダイスの目は、6と6のゾロ目。
トリプル・クリティカルヒット!
4度目の6のゾロ目・・・・・・
星羅の顔が、驚愕の表情に変わってゆく。
「ちょっと、ケンちゃん・・・・・・ 」
俺は、星羅に話しかけながらも、淡々とダイスを振る。
「2の2の
天和っていう技があるんだ。 知らないだろう?」
ダイスの目は、6と6のゾロ目。
4回目のクリティカルヒット!
5度目の6のゾロ目・・・・・・ 加算されるダメージ。
星羅の体が震えだす、怒りなのか悲しみなのか顔が歪んでゆく。
「ケンちゃん! ちょっと、何をやってるの?」
俺は、星羅に話しかけながらも、淡々とダイスを振る。
「これが、このゲームの本質さ! ダイスを振る事。
麻雀と同じようにね。」
ダイスの目は、6と6のゾロ目。
5回目のクリティカルヒット!
6度目の6のゾロ目・・・・・・ どんどん、加算されるダメージ。
星羅は、俺からダイスを奪い取る!
そして、ダイスを色んな角度から調べだした。
俺は少し笑いながら、星羅に話す。
「ダイスに種も仕掛けもないよ。」
星羅は、キッと俺を睨むと叫ぶッ!
「じゃあ、どうやって6のゾロ目を連続して出せるのよッ!」
俺はニタニタと笑いながら、星羅に話す。
「努力の
賜物ってヤツさ! 練習したんだよ。」
星羅は、不思議そうな顔をする。
「・・・・・・練習?」
「そうだよ、ダイスを振る練習だ。 何度も何度も練習した。」
「ま、まさか・・・・・・ 」
俺は、星羅に左手を見せる。
「最初のキャラクターメイキングを覚えているか? 俺は、あの時に3回連続で6のゾロ目を出している。 この、左手でね!」
星羅は、口をポカンと開けて、じっとしている。
俺は、星羅からダイスを取り戻す。
「さあ、ゲームマスター! 教えてくれ、俺はあと何回、クリティカルをすればいいんだ?」
そう言いながらも振った、ダイスの目は、6と6のゾロ目。
6回目のクリティカルヒット!
7度目の6のゾロ目・・・・・・ どんどん、加算されるダメージ。
・・・・・・俺は、ダイスを何度も振った。
そして、101回目の、クリティカルヒット!
エンシェント・レッド・ドラゴンは、地面に倒れた。
たった、1本の魔法の短剣の攻撃で・・・・・・
俺は、勝利の歓声をあげる。
「あははははッ! 勝った! 勝ったぞ! 女戦士、いや。 ドラゴンスレイヤーだ! アキレス!」
攻撃力は低いが、全ての敵にダメージを与えられる魔法の短剣。
100回以上、連続で6のゾロ目を出せる、俺の左手!
このゲームの世界で、アキレスは無敵となった。
ゲームマスター、すなわちゲームの世界の神を倒したのだ。
星羅は、無言の表情で黙っている。