俺の女戦士アキレスは、再びゲームの世界に舞い降りた。
「女戦士アキレス! 道具屋に行くぞ!」
俺は宣言する。
今回のダンジョン攻略に必要な道具を揃えるためだ。
まずは、照明・・・・・・ 油式のランプ、カンテラ。
それから、
方位磁石。
そして、今回1番重要なのは、水と食料・・・・・・
水は水筒に入れて、食料は干し肉系の保存食を購入する。
ここで、問題が発生する。
何日分、買えばいい?
俺は、星羅にさりげなく聞いてみる。
「このダンジョンは、地下何階まであるんだ?」
星羅はニヤニヤしながら答える。
「うふふふ、教えてあげない。」
やっぱりダメか・・・・・・
前回の冒険でアキレスが餓死したのは、地下33階だ。
まあいいか。
「水と食料は10日分、購入しておこう。」
俺は星羅に告げる。
今回は、地図を書きながら進めばいい。
いわゆる、マッピングという作業だ。
水と食料が足りなくなれば、引き返せばいいだけの話だ。
全ての準備は整った。
俺の女戦士アキレスは、再びデスダンジョンへ突入した。
地下1階、十字路を北へ、西へ、東へ、南へ・・・・・・
磁石で方角を確かめ、手元のノートに地図を書いてゆく。
こうしておけば、帰り道に迷う事はない。
「うふふふ! ちゃんとマッピングするなんて、偉いわ! ケンちゃん。」
星羅は余裕の笑みを浮かべている。
この、クソビッチめ!
俺は心の中で悪態をつきつつも、迷宮を攻略してゆく。
地下25階、1日分の水と食料を消費する。
地下50階、さらに水と食料を消費する。
地下70階・・・・・・ どんだけ深いんだよ!
地下80階・・・・・・ まだまだ続く。
地下90階・・・・・・ いい加減にしろよ!
そして、ようやく・・・・・・ 地下100階にたどり着いた。
通路の先に、扉が見える。
着いた!
ここが、ゴールだ!
水も食料も、まだ余裕がある。
ついに攻略した! 星羅が作ったダンジョンを!
「よしゴールだ! 女戦士アキレス! 扉を開けるぞ!」
俺は歓喜の声で、宣言する。
星羅はニタリと笑った。
「お馬鹿なアキレスちゃん。 うかつに扉を開けたわね! 何の警戒もせず!」
俺は、はっとなる。
しまった! まさかトラップ?
女戦士アキレスが扉を開けた先には・・・・・・
正方形の部屋、奥には財宝の入った宝箱・・・・・・
だが、部屋の中央に番人がいた。
星羅は、その番人の名前を声に出す。
「うふふふ、部屋の中央にいるのはミノタウロスよ!」
ミノタウロス・・・・・・
牛と人間を合体させたモンスター。
迷宮の番人にふさわしいモンスターだ。
このゲームでも、ミノタウロスの能力はかなり高い。
知能以外は、俺の女戦士アキレスをはるかに上回る。
だが、こっちには銃がある!
CZ75、チェコ製のハンドガン。
先制攻撃をとられても、まだ勝機はある。
星羅は、ダイスを振り攻撃を宣言する。
「ミノタウロスの攻撃! ガトリングガン発射よ!」
「なにッ! ガガガ、ガトリング・・・・・・ ガン?」
俺は驚愕の声をあげる。
ミノタウロスが持っていたのは、斧でも棍棒でもなかった。
ガトリング・ガン! 別名、バルカン砲!
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ・・・・・・
響く振動、戦慄のバイブレーション。
5秒で挽き肉・・・・・・
俺の女戦士アキレスは、無残な姿で飛び散った!
本日2度目の死を迎えた。
通算4度目。
ゲームマスター、星羅は狂喜の声を上げる!
「おほほほほほッ! どう? 本当のダンジョンの恐さ、分かったかしら。」
ミノタウロスに、ガトリングガンか・・・・・・
この女、やってくれやがった!
地下100階のとんでもねえ迷宮を作って、さらにとんでもねえボスを用意してやがった。
「どうする? 降参する? そ・れ・と・も・・・・・・ リトライ?」
星羅は勝ち誇った顔で、俺に聞く。
俺は全身から感じる殺意を、必死に押し殺し、声を出す。
「・・・・・・リトライ・・・・・・だ。」