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ようやくダンジョンに突入した、女戦士アキレス!

彼女の運命は如何に!?
イッツ・ア・ラビリンス
 女戦士アキレスは階段を降りた。

 頼りないカンテラの照明が道を照らす。

 挿絵(By みてみん)

 石畳の通路、壁も天井も石造りの通路。

 ここは、星羅の作ったデス・ダンジョンだ。

 どんな罠や、モンスターが待っているか分からない。

 俺の女戦士アキレスは慎重に進む。

 通路をしばらく歩くと、十字路に出た。

 勘を頼りに、右へ曲がる。

 そして、通路はまた続く、今度はティー字路。

 右か? 左か?

 左へ進もう。

 通路を進んでゆくと、また十字路。

 とりあえず、真っ直ぐ進んでみる。

 すると、行き止まり。

 引き返して、左に曲がる、またまた十字路。

 おかしい・・・・・・

 何かおかしい・・・・・・

 右へ曲がり、左へ曲がり、たどり着いたのは地下へと降りる階段。

 地下2階、通路を進むと、十字路。

 右へ、左へ、真っ直ぐ、行き止まり、引き返して、右へ、左へ・・・・・・

 やがて、地下へと降りる階段。

 地下3階、やっぱり十字路・・・・・・

 右へ、左へ、右へ、左へ・・・・・・

 北も南も、西も東も分からない。


 地下14階、ようやく俺は気がついた。

 このダンジョン、罠もモンスターも出てこない。

 これは迷路だ。

 そう、巨大な地下迷路。

 方角が分からない、方位磁石コンパスを持っていないからだ。

 帰り道も分からない、地図をつけていないからだ。

 「しまった、ひょっとして迷子になっちまったのか。」

 俺は後悔を口に出す。

 これが、本当のダンジョンの恐ろしさか・・・・・・

 星羅は、クスクスと笑う。


 地下21階、迷いながらも女戦士アキレスは進んでいく。

 こうなれば、勘だけが頼り。

 左手づたいに進むという迷路攻略法もあるが、それは効率が悪すぎる。

 ゲームマスター、星羅は唐突に俺に話しかけた。

 「ねえ、そろそろ喉が渇いたわ。 お茶にしない?」

 俺は軽く返事をする。

 「そうだな、ちょっと一服しようか。」


 茶菓子をつまみながら、紅茶をすする。

 ミルクは入れないが、砂糖はたっぷり入れた。

 「あら、ゲームを始めてからもう1時間経ったわね。」

 星羅は、何気なく俺に語る。

 「もう、そんなに経ったのか。」

 「うふふ、ところでケンちゃん。 知ってる? ゲームの世界の中でも時間は流れているのよ。」

 「ふうん。」

 俺は、何となく鼻を鳴らす。

 「私達にとっては、1時間だけど・・・・・・ 女戦士アキレスにとっては、もう20時間以上もダンジョンの中にいる計算になるわ。」

 星羅は、ノートパソコンをカタカタ叩きながら話す。

 「アキレスにとっては、そんなに時間が経っているのか。」

 俺は感心する。

 星羅は、ニタニタと笑い出した。

 「そうよ、アキレスは飲まず食わずで約20時間も歩きっぱなし。」

 「ああッ!」

 俺は、肝心な事に気付いた。

 「そう、女戦士アキレスは持っていない。 水も食料もね。」

 「ううッ!」

 しまった! やられた!

 水、食料の概念。

 ゲームの中の女戦士アキレスは飢えている・・・・・・

 「さあ、ゲームを再開しましょう! ただし、ここから1時間ごとに生命力は減少していくわ。」

 「ち、ちくしょう・・・・・・」

 俺は、完全に星羅の罠にはまってしまった。

 もう、引き返そうにも帰り道すら分からない。

 女戦士アキレスは、飢えに苦しみながら何も無い迷宮を進む。


 地下33階、女戦士アキレスはついに倒れた。

 「うふふふ! ゲーム・オーバーよ! 残念ね、ケンちゃーん。」

 ゲームマスター、星羅は嬉しそうに勝どきを上げた。

 俺の女戦士アキレスは、本日1度目、通算3度目の死を迎えた。

 今回の死因は、餓死・・・・・・

 「どうする? 降参する? それとも、リトライかしら?」

 星羅はニヤニヤ笑いながら、俺に尋ねる。

 俺は答える。

 「当然! リトライだ!」



 
水と食料、テーブルトークRPGの世界じゃ常識ですね。

さらに細かいゲームになると、装備の重さも影響してきます。
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