高級な北欧系っぽいテーブルに向かい合って、俺と星羅は椅子に腰を掛けた。
「さあ、始めましょう! テーブルトークRPGを!」
彼女は楽しそうに声を出す。
「オッケー! 始めようか。」
俺も返事をする。
テーブルの上には、このゲームのルールブック『 ソード・アンド・ワールドRPG ルールブック 』
そして、それぞれの筆記用具と、サイコロが2つずつ、星羅のノートパソコン。
最後に・・・・・・ 恐怖のお菓子、ポッキーが1箱。
星羅は楽しそうに、ポッキーをむさぼりながら話し始める。
「ゲームの世界でも、前回の冒険から数日たった事になっているわ。 女戦士アキレスが現在いるのは、冒険者ギルドよ。」
ゲームの世界に舞い降りた、俺の女戦士アキレス。
ここは、剣と魔法のオーソドックスなファンタジーの世界。
だが、俺の女戦士アキレスが両手に持つのはチェコ製のハンドガン、
CZ75!
もはや、戦士というより
銃士というべき風貌に変わり果てた。
アキレスに罪は無い。
悪いのは、この幻想世界を捻じ曲げたゲームマスター。
最初の冒険で、ゴブリンに
拳銃持たせてぶっ放した! 星羅が悪い。
冒険者ギルド・・・・・・ このゲームでは、冒険はいつもここから始まる。
「今日のミッションを聴こうか。」
俺は、ゲームマスター星羅に話しかけた。
「うふふ、今日の依頼は遺跡調査。 すなわち、ダンジョン・クエストよ!」
星羅は嬉しそうに叫ぶ。
「ダンジョン・クエスト・・・・・・。」
俺は静かに復唱する。
何だか、嫌な予感がビンビンする。
「うふふ、ケンちゃん! 今回はRPGの本当の恐ろしさを教えてあげるわ。」
星羅は、ニタニタと俺を見ながら言う。
どうせなら、面白さを教えてくれよ!
「冒険の舞台は、
街から少し離れた所にある古代の遺跡。」
星羅は、ゲームのシナリオを語り始める。
「その遺跡、すなわちダンジョンの中に財宝があるらしいわ。」
「財宝ね、悪くない話だ。 乗ったぜ!」
俺は回答する。
このゲーム、テーブルトークRPGではプレイヤーは自由に行動できる。
遺跡調査など断る事もできるのだが、それではゲームにならない。
ゲームマスターとプレイヤーが協調して、ゲームを進めていくのだが・・・・・・
ゲームマスターは、星羅だ。
どんな、デスダンジョンが待っているか想像もつかない。
だけど、行くしかない。
「よし! 女戦士アキレス! ダンジョンに向かって出発だッ!」
俺は勢いよく宣言する。
俺の女戦士アキレスは、地獄への入り口へ向かって静かに歩き出した。