俺の名前は、
山田 健一。
今日は休日、天気もいい、爽快な青空だ。
だが、俺の心は曇っている。
あの女から呼び出しを受けたのだ。
女の名前は、
赤城 星羅。
俺の「彼女」だ、ド
Sで人間失格の最低女。
星羅の趣味は、テーブルトークRPGというゲーム。
先日、そのゲームにつきあわされて酷い目にあった。
でも最終的には、俺は勝った!
今日は、そのリターンマッチといったところだろう。
星羅の家に到着する。
相変わらず、嫌味なほど広い庭に、立派な豪邸。
この国に生まれて、貧富の差をこんなに肌で感じるのは久しぶりだ。
キンコーン♪
玄関でチャイムを鳴らす、そしてドアが開いた。
「やあ、いらっしゃい。」
ドアを開けて出てきたのは、知らない人だった。
たくましい筋肉、ムキムキの筋肉、上質な肉・・・・・・
何故か上半身が半裸のナイスガイだ。
なんて鍛え上げられた肉体なんだ、俺は思わず見とれてしまう。
「ひょっとして、君がケンちゃんかい?」
ナイスガイは、俺に向かって爽やかに話しかける。
俺は緊張しながらも、返事をする。
「あ、はっ、はい。」
緊張して声がうわずってしまった。
「はじめまして、僕は
赤城 星士郎。 いつも妹が世話になってるね。」
ナイスガイは、爽やかに自己紹介する。
星羅の兄さんか、兄弟がいたんだ。
「よろしく、ケンちゃん!」
星士郎は右手を俺に差し出す。
握手を求めているようだ、たくましい腕だ。
俺は緊張で顔が赤くなる、だがその求めに応じようとした。
「こッ、こちらこそッ! よろしくお願いします。」
手と手が、触れ合いそうになった瞬間!
ヒステリックな叫び声が、それを制止する!
「私のケンちゃんに触らないでッ! バカ兄貴ッ!」
いつの間にか、星羅が立っていた。
「なんだよ? ただの握手じゃないか。」
星士郎は、ちょっと困った顔をする。
「ケンちゃんは私の
所有物よ! そのゴリラみたいな手で、気軽に触らないでちょうだい!」
星羅は険しい顔で、実の兄を威嚇する。
星士郎は、やれやれ・・・・・・・・・ という感じで両手を広げる。
「こんな妹だけど、よろしく頼むよ! じゃあね、ケンちゃん。」
星士郎は、ため息混じりに俺に声をかけ、手を振りながら去っていく。
漢だ! なんて男らしい、男の中の
漢だ。
「2度と、ケンちゃんに近寄らないでッ! 半径10メートル以内に入らないでッ!」
星羅は、去り行く実の兄の背中に叫ぶ。
「今の人、星羅のお兄さんなんだ。」
俺は星羅に声をかける。
「恥ずかしいわ、あんな筋肉ゴリラが身内だなんて。」
星羅はすました顔で答える。
「すごいマッスルだったな、びっくりしたよ。」
星羅は、ジィーッと俺の顔を見る。
「まさか、ケンちゃん。 ああいうのが好きなの?」
「好き? いや、べべ別に、そういうんじゃないよ!」
俺は何故か焦る。
「それにしても、全然似てないね。」
「よく言われるわ、あんなのと兄弟なんて自分でも信じられないわ。」
似てない、特に性格が似てない。
星士郎さんは、とても人格者に見えたぞ。
「さあ、行きましょ! 私の部屋に。 今日もやるわよ!」
星羅は、俺に顔で合図する。
「ああ、『 ソード・アンド・ワールド 』の続きだろ。」
俺も返事をする。
俺たちは、星羅の部屋に向かった。
それにしても、すごいマッスルボディだったなあ・・・・・・
もっと、じっくり見とけばよかった。
俺の頭の中は、筋肉でいっぱいになっていた。