ここは、剣と魔法の世界、『 ソード・アンド・ワールドRPG 』
俺の女戦士アキレスが持っているのは、チェコ製のハンドガン、
CZ75。
ここは、実弾と薬莢が飛び交うファンタジーの世界。
硝煙と火薬のにおいがたちこめる、廃墟と化した教会の1階。
俺の女戦士アキレスは、鼻歌を歌いながら2階への階段を登る。
「エー♪ ビー♪ シー♪ ディー♪ ・・・・・・。」
2階へ到着する。
「レッツ♪ アイ♪ キル・ユー♪ ・・・ん?」
だが、2階には誰もいなかった。
おかしい・・・・・・
少なくとも、ゴブリンDが残っているはずだが・・・・・・
女戦士アキレスは、教会の窓から外を見る。
遠くに、バレットM82を抱えて逃げていくゴブリンDの姿が見える。
「チッ! ゴブリンにしては、ずいぶん利口じゃねえか。」
おそらく、ゲームマスター星羅は、こう判断したのだろう。
『 バレットM82まで奪われては、たまらない! 』
女戦士アキレスは、ゴブリンDの背中に銃口を向ける。
CZ75の有効射程は、約50メートル。
アキレスは、ため息をついて銃を下ろす。
「無駄な弾は、使えねえな。」
教会の2階には、宝箱がひとつ置いてあった。
箱の中には、ナイフが1本入っていた。
それは、魔法の短剣。
攻撃力は低いが、どんな敵にもダメージを与える事ができる。
いわゆる、マジックアイテムってやつだ。
「今さら、魔法ね・・・・・・。」
俺はつぶやく。
バレットM82が入手できなかったのは残念だが・・・・・・
CZ75が3丁手に入ったのは大きい収穫だ。
1匹逃してしまったが、ミッションは達成した。
女戦士アキレスは、2度の死を経験したが、最初の冒険をクリアした。
ゲームマスター、星羅は苦笑いをしながら話す。
「おめでとう、ケンちゃん・・・・・・ 最初の冒険、達成ね。」
俺も、少し口をひきつらせながら話す。
「ありがとう星羅、楽しいゲームだったよ。」
ふと、時計を見ると午後6時を過ぎている。
「そろそろ、帰らなきゃ。 楽しかったよ、星羅。」
俺は立ち上がりながら、星羅に声をかける。
「うふふふ、私も楽しかったわ・・・・・・ ケンちゃん。」
俺は手を振りながら、最後に嫌味を言ってやる。
「そうだ! 残念だけど、一人で食べてくれよ、ポッキー。」
星羅は笑顔を取り繕っているが、邪悪な表情にゆがむ。
「ええ、次は覚悟してちょうだいね・・・・・・。」
俺は帰り道、一人で小さなガッツポーズをする。
くふっ! 勝った! 勝ったぞ!
ざまあみろ! クソ女めッ!
小さな幸福感を握りしめながら、俺は家に帰って行った。