俺の女戦士アキレスは突撃する。
向かう先は、丘の上の廃墟と化した教会。
待ちかまえるのは近代兵器で武装したゴブリンたち。
銃に剣で勝つことはできるのだろうか?
普通は無理だ。
でも、勝算が全く無いわけではない。
俺の女戦士アキレスは、知能は最低だが・・・ それ以外は最高の能力を持つ戦闘民族。
対する敵は、銃を持っているとはいえ、訓練された兵士ではない。
このゲームの中では能力の低いザコ、ゴブリンだ。
全速力で疾走するアキレスの側を、銃弾がかすめる。
「チッ! なかなか、命中しないわ。」
ゲームマスター、星羅はイライラした声を出す。
バレットM82の射程距離は、約2000メートル。
優秀なスナイパーライフルだが、狙撃手は優秀じゃない。
「教会までの距離、20メートル!」
星羅は俺に続けて話す。
「教会の入り口から、ゴブリンAが出てくるわ。
CZ75で、女戦士アキレスを攻撃する。」
おいおい、今度はチェコ製のハンドガンか!
星羅はダイスを振る。
「うふふッ! 命中よ! 次はダメージ判定ね。」
撃たれてしまった! また死んでしまうのか? アキレス。
星羅は続けてダイスを振る、結果は芳しくないようだ。
「チッ! ダメージは15ポイント。」
女戦士アキレスの生命力は17、15ポイントのダメージを受けると・・・・・・
残りは、2ポイント。
十分、瀕死の状態だよ。
だけど、やってきた!
ようやく、やってきた!
俺が、ダイスを振るターンがついに来たんだッ!
俺は叫ぶッ!
「女戦士アキレス! ゴブリンAを攻撃するッ!」
俺はダイスを振る!
判定値をクリア! 攻撃は命中した。
続けて、ダメージ判定。
ダイスを再び振る、悪くない結果だ。
「ゴブリンAに、9ポイントのダメージだッ!」
ゲームマスター、星羅は面白くなさそうな声を出す。
「ゴブリンAは死亡したわ。」
やっと、1匹しとめたッ!
俺は、歓喜の声を上げる!
「やった! 1匹撃破だッ! 人間様をなめるんじゃねえッ! ゴブリン野郎!」
接近すれば、所詮はゴブリン! 恐るるに足らず。
「残りのザコどもも、さっさと片付けるぜ! 女戦士アキレス、教会に入るぞッ!」
俺のテンションは最高潮だ!
しかし、星羅はニヤリと笑いながら話す。
「うかつに入ったわね。 うふふふ、お馬鹿なアキレスちゃん。」
しまった!
教会の中には、BとCがいた。
そう、2匹のゴブリンが待ちかまえていた。
2匹とも、手に持っているのはチェコ製のハンドガン。
CZ75!

ゴブリンは人間の言葉は喋れない。
だから、女戦士アキレスには聞こえない。
でも、たぶんこう言っていたんだろう。
「どこの組の鉄砲玉じゃあ? われぇッ!」
「ええ度胸しとるのうッ! 蜂の巣にしたるぁッ! ボケェッ!」
ゴブリンBが発砲!
女戦士アキレスの体を凶弾が貫く。
星羅の高笑いが聞こえる。
「あははははッ! あんまりゴブリンを舐めないでちょうだい!」
俺の女戦士アキレスは地面に倒れた。
今回の戦果は、ゴブリン1匹撃破。
その後、あっさり殉職。
星羅はニコニコしながら、俺に聴いてくる。
「どうするケンちゃん? ギブアップする? それともリトライ?」
俺の体は震えていた。
怒りと憎悪に満ちていた。
俺は、星羅に答える。
「・・・・・・リトライだ。」
違う!
リトライじゃねえッ!
こいつは、
復讐だッ!