俺の女戦士アキレスは、冒険者ギルドを出ると、依頼の村へと出発する。
村に到着すると、ある程度の情報収集を実施する。
準備は完了。
女戦士アキレスはゴブリンどものアジトへすぐに向かった。
ゲームマスター、星羅は語る。
「女戦士アキレスの目の前には、大きな丘が見えるわ。 そして、その頂上には古い、廃墟と化した教会がポツンと建っている。」
俺は答える。
「よし! 女戦士アキレスの初陣だッ! ゴブリンどもを一掃するぜ、教会へ入るぞ。」
星羅は、俺に尋ねる。
「教会までどうやって行くの?」
ん? 質問の意味が分からない。
少し戸惑いながら、俺は返事をする。
「普通に、歩いていけばいいんじゃないか?」
星羅はニヤリと笑う。
「そう、分かったわ。 教会までの距離は約500メートルの地点。」
何だ? トラップか?
星羅は続けて話す。
「教会の2階から、ゴブリン
Dが女戦士アキレスを狙撃する。」
「何ッ! 狙撃だって?」
俺は、思わず声を上げる。
想定外だった、しかしゴブリンなら弓矢を使用してもおかしくはない。
だけど距離500メートル・・・・・・ かなり遠距離だが。
星羅は、ノートパソコンのキーをカタカタ叩きだす。
「ゴブリンDの武器は、バレットM82。 この距離と、アキレスの状態から命中判定値は、6以上ね。」
バレットM82、アメリカ製の対物用スナイパーライフル!
星羅は、ダイスを2つ振る。
出目は、2と5の合計7。
「やったわ!
命中! 次は、ダメージ判定よ。」
星羅は、再びダイスを2つ振る。
6と6のゾロ目、このゲームではダメージ判定時の6ゾロは、クリティカルヒットを意味する。
つまり、ダイスをもう一度振ってダメージを加算できるのだ。
「うふふ、クリティカルしなくてもよかったんだけどね。」
星羅は、さらにダイスを振る。
1と4、合計は5。
星羅はニタニタと笑顔で俺に話す。
「うふふふ、ダメージは83ポイントよ。」
俺は呆然としながらつぶやく。
「女戦士アキレスの生命力は17・・・・・・。」
星羅は嬉しそうに俺に宣告する。
「女戦士アキレスは死亡したわ! ゲーム・オーバーよ! アハッ!」
俺の中で、ふつふつと黒い感情が湧き上がる。
ゴブリンが近代兵器で、狙撃しやがった。
最近のゲームじゃ、主人公が2丁拳銃を乱射してドラゴンと戦ったり・・・・・・
ミサイル、バズーカ、魔法に超能力、何でもありだ。
別に、スナイパーライフルくらい珍しい事じゃない。
だけど、このゲーム『ソード・アンド・ワールドRPG』
こいつは、オーソドックスな剣と魔法のRPG。
星羅から渡されたルールブックには載ってない。
バレットM82というスナイパーライフルも、USAも載ってねえッ!
この女は自分でルールを作りやがった!
俺の女戦士アキレスを一方的に虐殺するために。
この女は、楽しんでるんだ。
俺を一方的に敗北させて、笑ってやがるんだ。
星羅は、怒りで震える俺に尋ねる。
「どうするケンちゃん? ギブアップする? それともリトライ?」
俺は、殺意をなんとか抑えながら返事をする。
「リトライだ。」