俺の名前は、
山田 健一。
ごく普通の平凡な高校生だ。
俺の好きなものは、「格好良い言葉」
最近のお気に入りの言葉は、「アプリボワゼ」
意味はよく分からない・・・・・・でも、言ってみたい。
家の玄関、トイレのドア、とにかく扉を見たら叫びたい。
「開けッ!電気ウナギッ!」
いや、ウナギじゃなかったか。
そして、中に入って手を振りかざし!叫ぶんだッ!
「アプリボワゼーッ!」
格好良いだろう? 言ってみたいだろう?
しかし、アプリボワゼってどういう意味なんだ?
たしか、フランス語で・・・・・・星の王子様に出てくる・・・・・・。
まあ、どうでもいいや。
俺が現在いるのは、近所のショッピングセンター。
今日は休日、「彼女」の家に遊びに行く事になっている。
手土産に、ケーキか菓子でも買っていこうと思って立ち寄ったんだ。
「彼女」の名前は、
赤城 星羅。
ロングヘアーで美人だ、おまけに頭もいい。
俺は、その女が嫌いだ。
大嫌いだ!
初めて会ったときの嫉妬、二度目に会った時の屈辱・・・・・・
思い出すと、だんだん腹が立ってくる。
イライラしてくる・・・・・・
落ち着け、落ち着こう。
そうだ!素数を数えよう、1、3、5、6・・・・・・ダメだ、6は素数じゃない!
それから、カブト虫、カブト虫・・・・・・ふぅ。
落ち着いたところで、ケーキ売り場を探そう。
俺は辺りを見回した。
ちょっと気になるものが目に入る、家具売り場の方向だ。
子供用の二段ベッドの上に、幼稚園児の服を着たパンダのぬいぐるみが置いてある。
そうか、入園シーズンか・・・・・・
俺は、何気なくそのパンダを見つめる。
よく見ると、服に赤い名札が付いている。
「何ッ!」
俺はその名札を見て衝撃を受けた!
その赤い名札には、六文銭の家紋のマーク。
そして、「1-1 さなだ 」と書かれている。
このパンダ!
真田 幸村だッ!
日本一の兵と呼ばれた幸村がパンダに! ショッピングセンターに!
もしや、彼のいる二段ベッドは「
真田丸」
大阪城冬の陣で、徳川軍勢に大打撃を与えた「
真田丸」
俺には聞こえる、パンダとなった幸村の声が・・・・・・
「ここが俺の「
真田丸」だ! 死にたい奴から、かかって来い!」
格好良い・・・・・・
俺も言いたい、叫びたいッ!
今すぐ、あそこのサービスカウンターを占拠して叫びたいッ!
「ここが俺の「
山田丸」だ! 死にたい奴から、かかって来い!」
ん?
「
山田丸」は、あんまり格好良くないぞ。
そういえば、何しに来たんだっけ・・・・・・
「彼女」の家に持っていく手土産を買いに来たんだった。
俺は、ケーキ屋に向かった。
「彼女」に家に呼ばれた理由は、テーブルトークRPGっていうゲームをするためだ。
どういうゲームかは、よく知らない。
しかし、あの女からの挑戦なら受けて立つしかない!
俺はケーキを2つ買うと、「彼女」の家に向かった。