2012年上半期の映画興行を振り返る 

2012年7月4日

(執筆:梅津文)

7月に入り2012年も折り返し地点ということで、上半期の状況を振り返る。

まず、映連の統計での2012年の興行収入ランキング集計期間(2011年12月から2012年5月まで)における、主要配給会社12社の興行収入合計の推移は以下のとおりである。ほぼ昨年と同じペース(101%)、2008-11年平均をやや下回る(96%)ペースである。


以下の通り、過去10年間でもっとも興行収入が少なかった2011年と同程度のペースである今年上半期の状況を、まずはヒット作の顔ぶれを検証し、邦画・洋画、配給会社ごとのシェアなどの観点から分析していく。

◆今年のヒット作の顔触れは?

6月末までに公開された作品の最終興行収入10億以上の作品(推定値)のランキングは下記の通り(推定値)。

洋画の本数は38作品中13作品、トップ10には3作品しかないなど、洋画作品の勢いのなさが表れている。
また、ここ数年同じ傾向が続いているが、東宝配給作品の強さが目立つ(38作品中17作品が東宝配給作品)。

◆邦画:洋画のシェア:近年の邦高洋低の状況がさらに進んでいる

上記に挙げた10億以上作品の数値をもとに、邦画:洋画のシェアを計算すると【65:35】であり、これは邦画のシェアが過去10年間で最も高かった2008年を大きく上回る。(なお、例年、最終興行収入10億以上の作品が全体の7割程度を占めており、これらの作品で大まかな傾向はつかめる)

もちろん、これからのヒットの仕方次第で、邦画:洋画のシェアは大きく変わりうる。
しかしながら、2008年ー2011年の間で邦画のシェアが最も高かった2008年はジブリの『崖の上のポニョ』だけで155億円、全体の10%弱を占めていた年であり、今年はその年よりも邦画のシェアが高く、洋画シェアの落ち込みは深刻である。

◆配給会社別のシェア:東宝の存在感は近年最大に

以下に示す図は、主要配給会社12社の興行収入シェアの推移を月別にみたものである。
12月はやや洋画メジャーに押され気味だったが、4月・5月は東宝のシェアが50%を越えている。

2008年以降の推移は下記のとおりである。これまでも東宝が強い強いといわれてきたが、今年上半期の東宝のシェアは、この5年間でシェアが最高だった2008年(先述の通り「ポニョ」があった年)よりも高い。ジブリ作品がなくても、東宝ラインナップは十分すぎるぐらいに強くなっていることが伺える。

◆展望:今年も昨年同様1800億円代か?

初めの図で見たとおり、2012年上半期は2011年(1810億円)比で101%、2008-2011年平均(2007億円)比で94%であり、このペースだとすると、1830億円ないし1880億、つまり『2012年の興行収入合計は1800億円代の半ば』という見通しになる。

いうまでもなく、夏休みは興行の書き入れ時であり、ここからの興行次第では年間興行収入は変わってくる。

というわけで、次回は、トラッキングデータや最近実施したマーケティングリサーチ結果を踏まえて、下半期の見通しを考える。

資料:月別・配給会社別興行収入は文化通信より。作品別興行収入は文化通信ほかGEM Partners調べ。

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