財政難に喘ぐ我が国が、今、消費税率の引き上げの岐路にあり国会で審議されている。
こうした中、自民党の議員が大きな税負担となっている生活保護費について質疑し、不正受給に一石を投じた。
お笑いタレント(芸能人)の母親が、堂々と生活保護費を受給している事実を取り上げ、数人の芸人がピックアップされて記者会見をしている。
反省している者もいれば、そうでないも者もいるが、数千万円のマンションに住みながら生活保護費を受給し続け、会見では何の罪悪感を示さない芸人には驚きである。
生活に困窮しているなら、安価な家賃で住むことのできる公営住宅があり、こうした住居に住むのが常識だろう。
こんな芸人は、国民が正しく評価し、今後、芸能界(世間)で生きていくためには猛省するしか道はないが、所属事務所は、できの悪い芸人には教養をしなくてはいけない。
ところで、芸人の記者会見で(言い訳・弁解)共通するキーワードがある。
そのキーワードは、「福祉の人と相談して・・・・」いう言葉である。
つまり、「自分たちは不正をしていないのであって、福祉の人(言い換えれば公務員)がすべてを知っていて生活保護費を受給することを勧めてくれた。」との責任転嫁の主張である。
もし、芸人の言うこれが事実なら、担当した公務員に対して事実調査をすべきである。
そして、そこに不正があれば、公務員を適正、厳格に処罰すべきである。
そして、芸人が記者会見で言ったことが事実に反するなら、再度、芸人に会見させ、また、不正受給嫌疑(法律的には詐欺罪)で追及すべきである。
記者会見で謝ったから、それで終わりとするなら、自民党議員が追及し、一石を投じた生活保護費支給問題の本当の解決にはならず、今後、さらに不正受給を含めて受給者は増え続け、税負担率は増大することは必至である。
在職中、生活保護費の不正受給に捜査のメスを入れようと試みたことがある。
今から、ちょうど30年前のことで、当時は、今ほど生活保護費の受給はなく、むしろ、生活保護費を受給することを世間的には「恥ずかしいこと」とされていた。
田舎で一人暮らしの老婆が生活に困窮しても、自ら受給を申請することはなく、民生委員が見かねて説得して生活保護費を支給する手続きをした時代でもある。
田舎を離れて都会にでた息子は、このことを知るなり、必死になって働き、母親の生活保護費の受給を断ろうとして頑張ったのである。
ところが、こうした時代にあっても、勤労意欲を欠き、この制度を悪用している者も少なくはなかった。 具体的な事例を紹介すると、夫婦で同じ家屋に生活していながら、生活保護費を不正受給するため、戸籍上離婚し、そして、それぞれが理由をつけて仕事に就かず生活保護費を受給し、毎日、夫婦でパチンコ通いする者もいた。
しかし、生活保護費の支給を担当した公務員は、この事実を熟知しながら、これを容認していたのである。
はっきり言って、生活保護費の不正受給は、刑法的には詐欺罪、公務員はその共犯(幇助)である。
こうした不正受給は、特定の地域に集中していたし、模倣する者もあったが、公務員はやむなくこうした不正行為の片棒を担いでいた。
何故、片棒を担いだか?それは、そうしないと「何をされるか判らない。」という不安があったからである。
役所の窓口に集団で押しかけて公務員を威迫する。場合によっては、公務員の自宅まで押しかける。警察に相談すると、更に不法行為をエスカレートさせる。
こうしたことから、担当公務員は犯罪の共犯者であるとともに、見方をかえれば被害者である。
当時、血気盛んな捜査幹部(警部)であり、過去に、こうした不正行為にメスを入れないまま放置してきたことが制度を歪め、悪用される土壌を生み出し、その責任は福祉担当者だけでなく、不正に対する警察の姿勢にも責任があると判断したことから捜査に乗り出した。
しかし、当時は、警察内部でも、この生活保護費不正受給捜査はタブー視されていたことに加えて、関係行政機関や担当者の協力が全く得られない状況にあった。
今から思うと、「正義の実現者」を自負していた者として悔しい思いをしたが、捜査の壁は厚く、捜査機関としての責任を果たせなかったことに悔いている。
しかし、その後、15年の年月が経過した平成9年、長浜警察署長の赴任したとき、暴力団対策もさることながら、暴力団でない”やから”が、行政機関や公務員を対象に無理難題を申し入れる不当な要求行為が横行している現状にあったことから、当時の湖北4警察署(長浜、米原、虎姫、木之本署)の合同で、地域発信施策して、不当要求対策プロジェクト計画を策定し、警察管轄の壁を取り払い、不当要求対策プロジェクトチームを立ち上げて捜査に乗り出した。
この施策は、当時の警察本部長の決断により、滋賀県警察組織の改編となり、警察本部刑事部にも不当要求対策捜査班が編成された。
こうしたこと契機に、その後、生活保護費の不正受給に限らず、公務員が被害に遭う事案(これらを総称して行政対象暴力)と位置付け、関係行政機関や公務員ら関係者の勇気ある協力を得て、捜査遂げ、悪人を逮捕し、次第に生活保護費はもとよりそれ以外の公金(補助金を含む)不正受給を根絶させるため、後輩諸氏が努力していてくれる。
その成果は着実に上がっているが、それでも、なお、いまだに生活保護費の不正受給はなくならないし、最近の傾向は、個人見解であるが、不正受給者の多様化、個人情報保護の強化、権利意識の高揚、経済の低迷による失業者の増大等によって不正受給者が増え続け、30年前とは比較にならない難問があるように思える。
特定の芸人のことはさておいて、今、生活保護費の不正受給を省庁横断で検討するチャンスである考える。
最近は、政権の交代も少しは影響している、と言うことは今の政権を交代させた選挙民=国民がそのような社会を望んでいることの裏返しであるが、差別化を悪とし、何もかもが公平な社会を作ろうとしている。でも、本当の公平て何だろうかと考える。
若い時から努力し、必死に働いて自らの生活設計をたて年金を積み立ててきた者と、定職に就くことなく楽のみを追求して年金の積み立てを拒否した者が、いずれも年老いて年金を受給するときに、その年金額が同額であるという社会。こんな制度、こんな社会が公平なのかと言いたい。
最近、テレビを見ないようにしているが、どのチャンネルともワイドショー流行り、そして、芸人がゲスト出演しコメンテーターとして意見を言っている。評論家気風である。
しかし、昔から評論家と大学教授で出来が悪いのは、無責任人間と位置付けている。
言いたいこと言って責任をとらないからである。特に、我が国を代表する東西2つ大学の防災研究担当教授には、「いい加減にしろ!」と言いたい。講釈ばかり、不安を煽り責任を取らない。ここまで言われたら地震の発生を予見しろ。
このゲストに有名な女優が出ていて、芸人仲間の不正受給に同調する評論を展開していたが、これも「いい加減にしろ!」である。
生活保護費支給制度が、その制定趣旨のように真に困っている人を救済する制度であることを願ってやまない。