先週、大阪で行われた「K―POP」アーティストのライブ。
会場は、いつも開演前からファンの熱気に包まれます。
<女性のファン・6月28日 大阪城ホール>
「『KARA』とか『少女時代』とか『SISTAR』が好き」
中でも韓国の女性歌手グループ、「KARA」はおととし、日本でデビューし爆発的な人気を集めています。
ところが、その「KARA」も出演するライブを巡って、涙を呑んだファンがいます。

(Q.どのメンバーが好き?)
<山田君(仮名)>
「ジヨンちゃんっていって、(ポスターを指して)この子です」
兵庫県豊岡市に住む高校2年生の山田君(仮名)。
「KARA」の大ファンです。
そのライブが地元で行われることになり、念願のチケットを手に入れたのですが、それが紙くずになったというのです。

<山田君>
「『KARAが来ない』というので、その日は眠れなかったですね。『KARA』が来ないって・・・ もう・・・」
「K―POP IN 豊岡・神鍋高原」と題したライブイベント。
「KARA」や「超新星」など、「K―POP」スターが勢揃いし、6月30日・7月1日の2日間、豊岡市で開催される予定でした。

ところが1週間前、主催者側が突然、中止を発表したのです。
「開催する資金をねん出することができなくなり、イベントについては中止させていただくこととなりました」(「アンフィニジャパン」が出した文書)
イベントを主催していたのは、大阪市にある「アンフィニジャパン」。
会社が債務超過状態に陥り、自己破産の申し立ての準備を進めているといいます。
しかも、ホームページなどを通じて直接、「アンフィニジャパン」から購入した人には、払い戻しに応じないというのです。
12,000円のチケットを買うために、小遣いを切り詰めて貯めてきたという山田君。
修学旅行で沖縄を訪れた際も、涙ぐましい努力をしていました。
<山田君>
「(沖縄で)お菓子とかおいしそうなものいっぱいあって食べたいと思ったけど、『KARA』のグッズとか買おうと思っていたので、我慢して我慢して…」
息子の落ち込む様子を見て、母親の香織さんはチケット代くらいは返金してほしいと訴えます。
<山田君の母親 山田香織さん>
「辛いかなぁ… すぐ泣けてしまう、それを考えると。なんとかしてほしいかなと」
<但馬ドーム 山崎格男館長>
「ここがステージになって、『KARA』や『超新星』の控え室はここを予定していた」
イベント中止で肩を落としているのは、ファンだけではありません。
会場となるはずだった「但馬ドーム」。
この場所を利用させてほしいと「アンフィニジャパン」が伝えてきたのは今年3月。

施設の関係者は、なんとか開催にこぎつけようと多くの調整をしたといいます。
<但馬ドーム 山崎格男館長>
「地域振興、活性化の大きな公益目的のために、すでにドームを利用しようとしていた団体に対して、理解をいただいてスケジュール調整をしたんですよ。そういう意味で裏切られたわけですから」
幻となった夢のイベント。
しかし一部の関係者の間では、今回の中止発表の前から、ある憶測が飛び交っていたのです。
<日本ステージ 豊田毅さん>
「『ひょっとしたら、中止になるのちゃうか』という話はしていた」
韓国の人気グループ「KARA」などが出演し、豊岡市で開催される予定だった「K-POP」イベント。
ところが、主催者の「アンフィニジャパン」が資金繰りの悪化を理由に突然、中止を決めたのです。
<チケットを購入した 山田君(仮名)>
「中止になって『プロダクションにお金を渡しているから返金できない』って書いてあったので、泣きそうになりました」
そんな中、イベント開催自体が難しかったのではないかという声も上がっています。
「アンフィニジャパン」から舞台設営を委託されていたこの会社は、契約金を期限の6月11日に支払ってもらえなかったといいます。
<日本ステージ 豊田毅さん>
「6月11日までに半金が入らないと、入金の確認ができないと、契約破棄すると」
実は今回のイベント、舞台設営や照明、音響などを行う会社は「アンフィニジャパン」から事前に契約金の半分を受け取る取り決めをしていました。

ところが期限の日に振り込みはなく、全ての会社が手を引いたのです。
<日本ステージ 豊田毅さん>
「今回のステージプランとか、テクニカル(技術)チームの判断では、11日がやっぱりリミットだと」
6月11日には、すでにイベントが実現する可能性は低くなっていたとみられます。
しかし「アンフィニジャパン」は、中止を発表した21日の前日まで、ホームページを通じてチケットを直接販売していたとみられます。

さらに、山田さんの夫は、先月18日、「アンフィニジャパン」の担当者から頼まれて、チケット数十万円分を購入したといいます。
ところが、その翌日から担当者と連絡がつかなくなり、中止が決まったというのです。
<山田君の母親 山田香織さん>
「あっけにとられて、意味が分からなかった。(夫は)『時間がないけど頑張って売らないとなあ、成功させなくては、息子の友達もいっぱい買っているし』って」
「アンフィニジャパン」は、「開催準備や韓国プロダクションへの前金を支払ったため、チケット代が返金できない」としていますが、取材班が「KARA」や「超新星」などのプロダクションに確認したところ・・・
「お金のやりとりは一切なかった。私たちのせいで払い戻しができないというのは、言い訳ではないですか」(「KARA」のプロダクション)
真相を調べるために、取材班が大阪市内にある「アンフィニジャパン」の事務所を訪ねると・・・
「ピンポーン・・・」(チャイム)
返事はありませんでした。
チケット代は、どこへ消えたのでしょうか。
代理人の弁護士は、「プロダクションとの間を仲介するプロモーターに前金を支払った。その先は分からない」と主張しています。
消費者問題に詳しい弁護士は、「破産した場合、返金は難しいが経営陣の責任を問うことはできる」と話します。
<消費者問題に詳しい 斎藤英樹弁護士>
「契約費用が払えていなくて、公演を開催できないのが分かっていれば当然、その時点でチケット販売を販売中止すべきだったから、場合によっては『詐欺』だといえる」
「KARA」の大ファンでイベントを楽しみにしていた山田君。
この日、ライブで使うためにネットで予約していた応援グッズが届きました。
(Q.複雑な気持ち?)
<山田君>
「そうですね、でもこれからのコンサートでも使おうと思っているので、今回の中止の件でやっぱり見たいのがいっそう強くなった。一番は返金してもらいたい。みんな頑張ってお金を貯めて買ったチケットなので」
6月30日。
ライブの当日、会場は悲しみの雨が降り注ぎました。
なぜチケットは紙くずになったのか。
購入者の一部は、詐欺容疑での刑事告訴も検討しています。
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