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【本県産 安値取引】農産物東京市場で苦戦 風評被害、出荷重複が痛手 懸命に売り込み

 本県産農作物の最大の出荷先の東京都中央卸売市場で、東京電力福島第一原発事故以前は全国平均価格より軒並み高かった県産の青果物主力7品目の価格が今年、平均より34・6~4.5%の安い値段で取引されていることが6日、全農県本部などのまとめで分かった。原発事故前に1キロ当たり341円だったブロッコリーは172円に。風評被害に加え、春先の低温で関東圏の出荷時期が本県と重なり、商品がだぶついたことが主な要因。主力産品モモの本格出荷を前に、関係者は懸命なPRを続けている。

■ダブルパンチ 
 「このままでは生産意欲がなくなってしまう」。南会津町のJA会津みなみアスパラガス部会長の湯田重利さん(61)は価格低迷を嘆く。一束当たりの収益は原発事故前の200円強から事故後は半額近くまで落ち、回復の見込みがない。
 全農県本部、JA福島中央会が集計した6月上旬の東京都中央卸売市場の本県産青果物主力7品目の平均価格は【表】の通り。
 例年、ブランド力の強さから高値で取引される本県産キュウリも全国平均を下回る。ブロッコリーやサヤエンドウ、アスパラガスは深刻で、全国平均より20~30%以上安い。
 今年は春先の低温で関東圏の収穫期間が延び、本県と出荷時期が重なった。価格下落の要因について市場関係者は、市場で商品がだぶつき、選択肢が増えて本県産離れが加速したとみている。JA関係者は「本来なら風評被害の影響は少しは改善されるはずなのに、逆に昨年より深刻だ。農家の努力も限界」と二重の要因による痛手を訴える。
 風評被害はコメも同様。全国的には津波の影響で作付面積が激減したため価格が10%程度上昇している。本県産は会津は全国並みを保つが、中・浜通りは横ばいだ。

■危機感 
 7月中旬からはモモの出荷が本格化する。昨年は贈答用の出荷が激減し、半値以下に値崩れした。県は安全性をアピールするため、モニタリング体制を強化するが、市場関係者の見方は今年も厳しい。東京都大田市場の青果業者は「贈答用としての福島県産は扱いづらい。今年も値段が下がるのではないか」とみている。
 夏秋もののキュウリ生産量が日本一を誇る須賀川市では収穫が最盛期を迎える。放射性物質検査体制は整っているが、市内和田の農家佐藤政美さん(53)は「安全性は確かでも、安心して買ってもらえるのか」と危機感を持つ。

■情報発信 
 佐藤雄平知事は今月から8月にかけ、関東圏などでトップセールスを展開する。昨年よりも2回増やし、5回の予定だ。県の担当職員は「今年は2万点以上のモニタリング実績がある。データを示せば分かってもらえる」と期待をかける。
 県内のJA、漁協、森林組合、生協でつくる「地産地消運動促進ふくしま協同組合協議会(地産地消ふくしまネット)」は今月から県内外の企業約150社に県産モモの購入を働き掛けてもらう取り組みを開始。果樹王国の象徴としてモモを強力に売り込む。
 6日は全農県本部などが東京都内の市場で本県産のキク、リンドウをPRした。農産物の中でも花卉(かき)は価格が下がっていないが、関係者は「地道に活動していくしかない。生産者が心1つにアピールしていくことが大切だ」と強調した。

【背景】 
 東京電力福島第一原発事故を受け、県が昨年3月30日に実施した野菜の放射性物質検査では43品目のうち25品目で放射性セシウムの暫定基準値(1キロ当たり500ベクレル)を超えた。政府は基準値を超えた品目の摂取と出荷を制限、モニタリング検査で暫定基準値を下回った品目から解除した。コメからも基準値を超えるセシウムが検出されたため、平成24年産米は全袋を対象に自主検査する。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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