朝日新聞社説をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
|
野田首相は、沖縄県の尖閣諸島の3島を政府が買い上げる方針を明らかにした。政府による安定した管理のもと、領有権を主張する中国や台湾との緊張を和らげる第一歩とすることを期待[記事全文]
ネット社会に住む以上、いつ大規模な攻撃を受けるかもしれない。わかっている対策をとるだけでも、ホームページやデータの被害は抑えられる。先日、財務省や最高裁のホームページが[記事全文]
野田首相は、沖縄県の尖閣諸島の3島を政府が買い上げる方針を明らかにした。
政府による安定した管理のもと、領有権を主張する中国や台湾との緊張を和らげる第一歩とすることを期待する。
尖閣諸島をめぐっては東京都がすでに購入に動いている。何かにつけ中国への敵意をむき出しにする石原慎太郎知事だ。都が購入すれば、中国との間で緊張が高まる懸念があった。
石原氏は政府の購入計画に積極的に協力すべきだ。
国有化すれば、中国などの反発は必至だ。しかし、長い目で見れば、政府の管理下、いらぬ挑発行為を抑え、不測の事態を避けるのが目的だ。中国には冷静な対応を望みたい。
尖閣諸島は、日本政府が実効支配する日本の領土であることは間違いない。政府はいまも3島を所有者から借り上げ、民間人の上陸を禁じている。
1972年の日中国交正常化交渉の時から、両政府間で領有権問題は意識されていた。だが、中国側が先送りの意向を示し、しばらく沈静化していた。
それが近年クローズアップされてきたのは、中国海軍の膨張、尖閣周辺海域での中国船の活発な活動がある。
2010年9月には中国漁船衝突事件が起き、日中関係が悪化した。
ナショナリズムがからむ領土問題では、一方がことを起こせば他方は対抗措置をとらざるを得ず、事態はエスカレートしがちだ。政治指導者が抑制的な対応をすれば、ただちに「弱腰」批判にさらされる。
都が島を買い、人を上陸させたり施設をつくったりしたからといって、中国は領有権の主張を取り下げまい。秋に指導部の交代を控え、より強硬な措置に出てくるのは明らかだ。
先日、東京で開かれた日中双方の識者らによるフォーラムでは、尖閣をめぐる日中間の軍事衝突の懸念が語られた。
だれも望まぬそんな事態を招いてはならない。
漁船や監視船による挑発を繰り返す中国には、自制を強く求めたい。
一方、日本政府は中国側に購入の意図を説明し、海域で偶発的な衝突が起きないよう全力を挙げるべきだ。
日本政府は「日中間に領土問題は存在しない」という立場をとってきた。理屈はその通りとしても、それ一辺倒では問題の前進は難しいのも確かだ。
これを機に争いがあることを認め、双方が虚心坦懐(きょしんたんかい)に向き合うことを望む。
ネット社会に住む以上、いつ大規模な攻撃を受けるかもしれない。わかっている対策をとるだけでも、ホームページやデータの被害は抑えられる。
先日、財務省や最高裁のホームページがサイバー攻撃を受けて、閲覧できなくなったり、改ざんされたりした。
いまや、ネット経由の攻撃プログラムは簡単に手に入り、標的の情報を入れ、「発射」ボタンをクリックするだけで、国境を越えて攻められる。
前日に、ネット上の国際的な活動グループ「アノニマス」が日本への攻撃をほのめかした。グループの名は英語で「匿名」を意味する。「ネットの自由」をかかげ、敵対的と見なす世界各国の政府や企業にサイバー攻撃を繰り返している。
日本で海賊版の映像・音楽ファイルのダウンロードに刑事罰を科す改正著作権法が成立したことに反対し、標的として日本政府と日本レコード協会の名前をあげていた。
特定のリーダーはおらず、ネットのつながりが中心というその実態はとらえどころがない。
今回の攻撃もツイッターやチャットで指示が出され、メンバーらがそれに呼応したようだ。
メンバーは公の場にはそろいの仮面をかぶってあらわれる。7日にはその仮面姿で、日本のメンバーを中心に東京で路上のごみを拾って抗議の意思を表した。硬軟まじえた動きを、どう受けとめるべきか。
海賊版ダウンロードの刑罰化には、日本弁護士連合会も「1週間足らずの審議での可決は拙速」と批判している。
だがそんな議論から一足飛びに、サイバー攻撃があるかもしれない。アノニマスからとは限らないし、だれもが標的になりうる。ネット社会ならではの現実に、備えが要る。
サイバー攻撃を完全に防ぐことは難しく、いたちごっこの面がある。それでも、安全対策の整備と点検の繰り返しにより、安全性は向上する。
たとえば、政府には安全対策のための技術や運用を定めた統一基準がある。多くの企業にも安全指針がある。
せっかくの対策がきちんと使われているか。サイバー攻撃の脅威に準備できているか。
ホームページを書き換える攻撃では、すでに知られたソフトの弱点を突く手法が使われる。ソフトの更新を怠って、わかっている弱点が放置されてはいないか。
ウイルス対策ソフトの更新も含めて、基本的なことの積み重ねは役に立つ。