宮城県南三陸町の漁港で４月初め、東日本大震災で被災した養殖業者が震災後に初めて収穫したワカメに、油が混入される事件があり、宮城県警が器物損壊容疑で調べていることが７日、捜査関係者らへの取材で分かった。業者は「復興に向けた第一歩すら踏み出せなかった。来年の収穫も被害に遭わないか心配」と話している。

　この養殖業者は、震災で自宅や養殖設備全てを流され、現在は仮設住宅で暮らす同町の男性（57）。ワカメ約１トンが廃棄処分になった。

　県警などによると、収穫したワカメを、塩漬けにするためのタンクに貯蔵していたところ、何者かが夜間に油を混入したとみられる。タンクは屋外に置かれており、油を鑑定したところ、ガソリンと潤滑油を混合したものと判明した。

　男性は、直前にワカメの加工に使う機械のエンジンオイルを抜かれる被害にも遭ったといい、県警は嫌がらせ目的の可能性もあるとみて捜査を進めている。

　事件後、男性は親族と交代で車に寝泊まりし、ワカメの収穫が終わる５月までの約１カ月間、タンクなどの監視を続けた。一時休業したが、その後被害はなかった。

　男性は来年の収穫に向け、養殖のための漁具作りを始めており、「収穫したてのころは高値の『ご祝儀相場』で買い取ってくれる時期だったので、なおさら悔しかった。再起できたのは全国からの支援があったおかげなので、来年もおいしいワカメを育てて恩返ししたい」と意気込んでいる。〔共同〕