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 「結構進めたな」

 「でも奥まではまだまだだと思うよ」

 私、ミランダは一流冒険者の知り合いと共に<静寂なる地下樹海>に来ている。
 この辺りまでは人が来たことがあるらしく、この先から前人未踏だそうだ。最深部までは程遠い。

 「それにしても不思議なダンジョンなことだ」

 「そうだね。見たこともない魔物や植物の宝庫だよ」

 「そんなにすごいのですか?」

 私は辺りを警戒しながら進む知り合いに聞く。

 「ああ、この幻想的な雰囲気からもなんとなくわからないか?」

 「僕は飛蝗男って言う魔物が特に珍しいと思うな。虫系の魔物で人に近い型をしているものは存在しないからね」

 「森林系ダンジョンに適応した甲殻系の魔物だって他には存在しないぞ」

 「回転しながら襲ってくるスイカとかもうビックリだよ」

 二人は周囲を警戒しながらも饒舌にしゃべる。
 そんな時、前方に複数の新手が現れた。

 「なんだありゃ?テントウムシに大砲か?と言うことは・・・・・・」

 「間違いないね。撃って来るよ!」

 ドンッドンッと音を立てて砲撃された。
 幸い、避けることが出来たがあれはかなりの威力だ。当たったらひとたまりもないだろう。

 「後ろからも来たぞ!」

 「あの大砲君は僕に任せて!」

 「なら私は後ろを対応します!」

 声を掛け合って戦闘に入る。
 最初に声を掛け合うことの大切さを教えてもらっている。
 私が剣を向けた魔物は、今まで見なかったアリの魔物だ。地上にも現れていない種類、恐らく上位種だろう。
 私は剣を振るうも、洗礼された動きでかわされてしまう。

 「このヤドカリのハサミ硬ェェェェェェェ!!」

 「ああ!更に新しい奴が現れた!て、うわぁぁぁ!?ニンジン!?」

 一流の冒険者でも苦戦する相手に、私が勝てるはずがなかった。

 「ミランダちゃん!」

 魔法剣士のほうの冒険者が私を庇い・・・・・・。

 「グハッ・・・・・・」

 グシャリッ

 何かが潰れたような音を立てて、アリの顎に食い千切られた。下半身が・・・・・・。

 「ロイドさん!」

 私は気が動転するあまり、剣を投げ出して駆け寄る。

 「ごめんなさい!ごめんなさい!私が弱いばっかりに!私の我が儘で!」

 「バカ!こんな状況で!」

 その時、待ってましたと言わんばかりに、たくさんの魔物たちが集まりだした。
 虫虫虫、蠢く植物や蟹、通路を塞ぐほどに集まり始めた魔物たち。
 おかしい、どう考えてもおかしい。

 「嘘だろ・・・・・・」

 私を庇うように大剣を構えた冒険者が真っ青になってつぶやく。
 私なんて恐怖に体を震わせている。
 初めてこのダンジョンで魔物に相対した時から思っていたけど、絶対に変だ!このダンジョンは明らかにおかしい!
 なんでこれほどの魔物が統率を取れた動きで襲ってくるのだ。自分勝手で利己的な思考回路を持つ魔物がだ!
 大きい群で動けば餌を得られにくいと言うのに、この異常なまでの数はなんだ!
 ふと足元の茸や苔に目が行く。
 これだけの数の魔物がいるのにほとんど荒れていない植物たち。それを見て思った。
 餌なら十分にある。別に狩りをする必要はなかった・・・・・・。なぜなら外界から遮断されていたのだから最初から狩りをする必要はない。
 魔物は共食いをしない。基本的にはだが、余程空腹でなければ他の魔物を食べることはない。
 別種の魔物同士でもそれは同じだ。魔物は他の魔物を食事の対象として狩らない。
 外の、普通の魔物が私たちを襲うのは餌や道具を得るため。稀に繁殖道具として人を捕まえる魔物もいるそうだが、そんなのは全体から見て一パーセントにしか満たない。
 こうして考えられるのは・・・・・・。

 「俺たちを天敵か外敵として見ている?」

 にじり寄って来る魔物たちを威嚇しながら大剣を構える冒険者が答えた。
 それなら納得がいく。実際に、ゴブリンやコボルトの巣に冒険者が入り込めば連携を取った動きで追い出そうとする。

 「終わりだ。逃げ道がない・・・・・・」

 「ミリア、ゴメンね・・・・・・」

 私たちの呟きなどどうでもいいと言うように、魔物たちは一斉に襲い掛かってきた。






























 「殲滅完了、女は連れて来い」

 俺は樹海内の映像を見ながら命令を送る。
 あの白翼のセレスティアの女が気に入った。気が強そうだが、それは今後の調教でどうとでも変わる。
 引き締まったり女性の象徴がたわわに実った肢体、美しい流れるような金髪、強い思いを秘めた碧眼。美少女と呼んでもお釣りが来るような娘だ。

 「ユーグ様は私だけではダメなのですか?」

 「酒池肉林のハーレムがいいんだよ。お前がダメなわけではない」

 「そうですか」

 しょんぼりとするリーナ。あとで可愛がってやるから勘弁してくれよ。
 十数分後、セレスティアの娘が最深部まで運ばれてきた。

 「リーナ、治療してやれ」

 「はい」

 リーナは指先を切って体液(血かな?)で治療を始める。リーナの体液には強い薬効があるからすぐに治るだろう。
 意識が戻ったら交渉して新能力<眷属化>を試そうと思う。
 よくダンジョンや魔王が主人公の奴にありそうな能力だな。
 結構いろんな種類の眷属を作ることが出来るようだ。この娘はどの眷属にするかもう決めてある。

 「傷跡は残りそうか?必要なら<生命水>を使ってもいいぞ」

 「その心配はないです。私の体液を使えばこのくらいの傷は何とかなります」

 「そうか」

 俺はリーナから視線をはずし、ステータスを開く。

 ***

 名前:ユグドラシル
 種族:樹海統べる群蟲王
 LV:43
 迷宮:静寂なる地下樹海

 称号:
 樹海統べる郡蟲王 樹海の暇王 森の遊び人
 虫取り 蟹は美味なり 不快な台所
 愚者を葬る者の王…低レベル侵入者を配下だけで撃退した者に送られる
 身体が痒い…新しいユニーク害虫系魔物を召喚可能にした

 能力:
 無限成長 魔物創造 迷宮創造 郡蟲の体 魔毒精製 魔呼び
 眷属化…人間を魔物化させることが出来る

 召喚可能兵:
 鬼蟻 傭兵蟻 兵隊蟻 軍人蟻 人斬り飛蝗 不意打ち飛蝗
 猪飛蝗 飛蝗男 大蚯蚓 双頭蚯蚓 豪蚊 膿蛆
 堕天道 砲台天道 巨芋虫 泉水蠆 民草 独草
 葉刃草 触蔓 蔦蜥蜴 蔦穴 噛付き瓜 跳び付き瓜
 踊る西瓜 弾丸人参 魔棘花 浮花 襲茸 噴き掛け茸
 森蟹 木登り海老 倒木穴宿 森の御器齧り 鼠蟲
 将軍蟻…中型戦闘特化蟻系魔物
 労働蟻…鬼蟻の下位蟻系魔物
 黙蜘蛛…隠密特化蜘蛛系魔物
 狩蜘蛛…中距離特化蜘蛛系魔物
 鬼蜘蛛…中型戦闘特化蜘蛛系魔物
 百々足…機動特化百足系魔物
 多頭百足…異形百足系魔物
 千足…中型戦闘特化百足系魔物
 葉土蠍…奇襲特化蠍系魔物
 逆さ蠍…奇襲特化蠍系魔物
 砲台蠍…遠距離攻撃型蠍系魔物
 虎蠍…中型戦闘特化蠍系魔物
 辻斬蟷螂…切断特化蟷螂系魔物
 巨蚤…蚤型ユニーク害虫系魔物
 苔岩蚤…蚤型ユニーク害虫系魔物

 環境:
 光苔 灯台茸 点滅茸 発光花 妖光花 地下草
 希少薬草 希少毒草 希少香草 地下茶葉 食用苔 珍味苔
 滑苔 粘苔 食用茸 珍味茸 大茸 毒茸
 果実樹 珍果樹 倒木 地下樹 普通の水源 生命の水源
 妖蛍 蚊柱 蟲の卵塊 種の小山 謎の肉塊 肉樹

 ***

 ふむ。侵入者を大量に狩り続けていたから一気にレベルが上がったな。
 <身体が痒い>ってなに?蚤か、蚤だけなのか?環境は肉樹しか増えていないな。
 それにしてもまた一気に魔物兵の種類が増えたな。何故こんなに増えるのが早いんだろう。
 (作者の想像の産物をドンドン追加したせいです)
 ん?なにか電波をキャッチしたような気が?気のせいか?























 「ん・・・・・・」

 目を覚ますと、緑色の水が涌き出る神秘的な場所にいた。
 周りに魔物が数匹いるが、襲ってくる気配はない。どうなっているんだ?

 「目が覚めましたね」

 周りを見回していると、一人の女性が話しかけてきた。葉っぱの下着を付けた姿で、ほとんど裸のような姿だ。恥ずかしくないのだろうか。
 よく見れば、下半身が植物ではないか。と言うことは、魔物なのか?

 「私は<群蟲王の寵愛>を受けし薬草人リーナです」

 「え、あ、ミランダ・ストリンガーだ」

 丁寧に自己紹介をしてきたので、焦りながらも名乗る。
 む?ぐ、ぐんちゅうおうのちょうあい?まさか<樹海統べる群蟲王>の寵愛か!?

 「はい。ご想像の通りです」

 余程顔に出ていたのか、リーナという女性はクスクスと笑いながら言った。
 緑色の髪と瞳、私よりも大きな・・・・・胸。同性から見てもとても綺麗な女性だ。

 「お?目を覚ましたか」

 男の声が耳朶を打つ。
 振り向けば、深緑の髪を持つ好青年が近付いてきていた。
 友好的な笑みを浮かべているものの、圧倒的な力の波動を感じる。間違いない、この男が<樹海統べる群蟲王>だ、と直感的に理解した。

 「そんなに怯えなくてもいいじゃないか」

 群蟲王は少し拗ねたような顔になった。
 手を見れば、微かに震えている。これなら、初めて大型のドラゴンを見せられたときのほうがよっぽどマシだ。

 「俺の名はユグドラシル、ユーグ様と呼べ。早速だが」

 彼は腕を組みながら私を見下ろしている。真面目な雰囲気を漂わせる表情でだ。
 私は何を言われるのか予想しながら身構える。

 「俺に仕えるつもりはないか?」

 ・・・・・・群蟲王はニヤリと笑い、私に告げる。
 まったくの予想外、いや、予想はしていたけどこれはないだろうと高をくくっていたことをだ。

 「へ?」

 私がつい間抜けな顔をして間抜けな声を出してしまったとしても責められたものではないだろう。






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