中核派は、国内最大のテロ組織です。同派は、規約に「軍事委員会」を明記し、非公然組織を有していますが、2年の「90年天皇・三里塚決戦」(124件の「テロ、ゲリラ」事件を敢行)以後、武装闘争一辺倒では革命に向けて限界があるとしてテロ、ゲリラを控えています。しかし、同派の方針は、将来の武装闘争に備えて「テロ、ゲリラ」戦術を堅持しつつ、一時的に組織拡大のため労働運動中心の活動に重点を置く(3年「5月テーゼ」等)とするものでテロ、ゲリラを放棄したものではありません。 中核派は、15年夏の政治集会で「新たな指導方針」の名の下に「労働運動強化」路線を打ち出し、特に、青年労働者の獲得をねらって、12月には「マルクス主義青年労働者同盟」の再建大会を開催しました。16年の機関紙「前進」の年頭アピールにおいても労働運動の強化を訴えて「マル青労同」の1,000人建設や「四大産別」(注:同派は、自治体、郵政、教育、JRの産業別労組を「四大産別」と呼称している。)に対するオルグを重点に取り組む方針を示しました。 同派が最も重視した「11月労働者集会」(11月7日、東京都)では、「万余の結集」を目標に掲げて強力に取り組み、米国の「国際港湾倉庫労働組合」、韓国の「韓国民主労働組合総同盟」関係者を招請するとともに、 幅広く労組等に参加を呼び掛けた結果、同集会としては過去最高の約2,350人を集めましたが、同派が掲げる目標には大きく及びませんでした。一方、大衆運動では、同派がイニシアチブを取る「百万人署名運動」が中心となって反戦運動を重点に取り組むとともに、「イラク開戦一周年」の3月20日には、米国反戦団体「A・N・S・W・E・R」が提唱した「国際反戦共同行動デー」に合わせて、超党派の「陸・海・空・港湾労組20団体」が主催した集会(東京都、全体約1万人)に約2,100人を動員しました。しかし、これらの闘争は、「百万人署名運動」が「成立阻止」を掲げていた有事関連7法が6月14日に成立し、主要闘争課題を失ったことや、イラクへの自衛隊派遣が数次にわたり、反対世論の盛り上がりも薄れてきたことなどにより衰退しました。 それに代わって9月の「百万人署名運動」全国集会では「日の丸・君が代」問題と「教育基本法改正」問題を主要な闘争課題に据えることとなり、その後、両問題を通じた組織拡大をねらって、超党派の教職員関係者が主催する「教育基本法の改悪をとめよう!11・6全国集会」に約270人を動員するなど、大衆運動への介入を強めました。 同派は、17年も引き続き「労働運動強化」路線の下、青年労働者の獲得を最重点に教育、自治体等の労働組合に対するオルグ活動を強め、組織拡大を目指すものとみられます。同時に「百万人署名運動」を中心に、党派色を極力隠して「教育基本法改正」問題等の闘争課題に対する取組みを強めながら、大衆運動の盛り上げを図るものとみられます。また、同派は、東京都議会議員選挙に唯一当選経験のある候補者を擁立する方針を決めたことから、17年の上半期は、選挙での支持拡大等に組織を挙げて取り組むものとみられます。
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