米軍発注工事「本土ゼネコン寡占」打開へ

2012年6月25日 09時41分

 米軍が県内で発注する住宅改修などを一括した巨額の工事契約で、ボンド(履行保証)が障壁となって県内業者が入札・契約できない状況を踏まえ、県は県内業者の工事参入の可能性を探る調査研究に初めて着手する。過重な基地負担を抱えながらも基地関連の工事が受注できず、本土ゼネコンの寡占状態となっている「沖縄の特殊性」の改善に向け、一括交付金を活用する。建設業界は早急な打開策の提示を要望している。(政経部・具志大八郎)

 ボンドは、建設業者が入札や契約を履行しない場合、保険会社等の保証元が業者に代わって金銭もしくは役務で、発注者側の損害補償を約束する。米国法では米軍発注の15万ドル以上の建設工事についてはボンド提出が入札参加要件となっている。

 履行ボンドは契約額の100%で、100億円の事業なら同額の保証額が必要となる。県外企業に比べ資金力の弱い県内の建設業者、保険会社では対応がほぼ不可能で、基地内の巨額契約は本土ゼネコンの寡占状態となっている。

 県の資料などによると、嘉手納基地での大型一括工事は2001年から11件(落札総額約700億円)実施されているが、うち県内業者の落札額は5%にも満たない2件(同31億円)にとどまっている。過去7期は西松建設(東京)と大林組(同)の2社で占めている。

■ゼロ回答

 米軍は手続きの効率性などから一括契約方式を取っているとみられるが、工事内容は水道・電気メーターの取り付け、台所の改修など、県内業者でも十分に対応できるものが多い。県は米国や日本政府に、ボンドの軽減や分離分割発注などを求めてきたが、ほぼ「ゼロ回答」の状況だ。

 事態打開に向け、県土木建築部は本年度一般会計5月補正予算に「米軍発注工事参入支援可能性調査事業」として、一括交付金を活用した1178万円を計上した。20億円以上の米軍発注工事で、県内業者が活用できるボンド枠確保のために必要な支援策などを民間コンサルタントなどに委託して調査研究する。

 具体的には(1)在沖米軍が発注する大型工事の見通し(2)ボンドに関する米国法規の確認(3)海外基地の米軍発注工事に関する地元業者受注時の支援体制(4)ボンド枠確保に向けた支援策の検討(5)支援に必要な保証規模、保証を実現のために必要な資金調達額および運営計画―などを検討する。

■目前の市場

 公共事業の落ち込みで、県内建設業界の経営環境は年々厳しさを増している。11年度までの10年間に448社が倒産しており、「目の前の巨額市場」への参入を阻む〝ボンドの壁〟の打開策を求める声は根強い。

 土木建築部は「調査が改善の端緒となれば、県外に流出している建設投資が地元で還流することになり、建設業界の活性化、雇用の維持につながる。実現可能性のある新たな方策を模索したい」としている。

 県建設業協会の幹部は県の調査費計上を「打開に向けた一歩前進だ」と評価しつつ、米国法ではボンド減免が可能だと指摘し、「徹底的に調べ上げ、対策法を提示してほしい」と要望した。

 一方、「大型工事はいずれ終わる。調査が長引いている間に工事がなくなってしまっては元も子もない」とし、早急な調査で即効性のある打開策の提示を期待した。

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