SoCへ舵を切ったことは正しかったのか?
日経マイクロデバイスに煽られブームになって、それがゆえに、日本半導体は、一斉にDRAMから撤退して、一斉にSoCへ舵を切った(ようだ)。
自分で決断できず、常に横を見て“皆で渡れば怖くない”的に行動する是非はちょっと置いておくとして、「DRAMから撤退してSoCへ舵を切った」ことは間違いだったのか? ちょっと冷静になって考えてみたい。
図2に、WSTS(World Semiconductor Trade Statistics:世界半導体市場統計)が発表した半導体製品別売上高の推移を示す。DRAMを含むMOSメモリは、好不況により、大きく乱高下している。特に1995年と2000年に大きなピークがある。95年のピーク後のDRAM不況の際、日経マイクロデバイスは「DRAMなんか止めろ、SoCに舵を切れ」と書きまくった。
インテルの主力製品プロセッサを含むMOSマイクロは、DRAMの大不況に陥った97年以降、最も大きな売上高を示す。ところが、2004年以降はSoCを含むMOSロジックがMOSマイクロを上回るようになる。
SoCの議論とは関係ないが、最先端の微細化とは無縁なアナログICとディスクリート(個別半導体素子)が、意外と順調に市場を拡大していることが分かる(これらに徹している半導体メーカーは金のかかる微細化競争とは無縁なところで利益を得ることができている。どの分野にも見るられる現象だが案外とローテクが儲かったりする)。
図3は、MOSメモリの中のDRAMとフラッシュ、MOSマイクロの中のMPU(インテルの主力品種のプロセッサ)、MCU(ルネサスの主力品種のマイコン)、DSP(TIの主力品種)、MOSロジックの中の特定用途向けロジック(SoCを含む)だけを抜き出してグラフにしたものである。
1995年のDRAMのピークがいかに大きかったかが改めて分かる。Windows95の発売を見込んで、作り過ぎたのだ。まったくDRAMというのは(正確に言うとDRAMを作っている人たちというのは)加減というものを知らなすぎる。売れる(と言うより売れそう)となると一気にアクセルを踏んで作りまくるのである。その挙句、値崩れを起こし、過剰在庫が積み上がり、底知れぬ不況に突入していくのである(クルマメーカーの人たちが、「お前ら集団自殺してるんじゃないの?」と言っていたのを聞いたことがあるが、まったくその通りだ)。
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