また、45ナノミリ以降の微細化をするか否かは、半導体メーカーの重要戦略の1つである。米TIが止めたからと言って大騒ぎすることではない。微細化をどうするかは自分で決めればいいのだ。
実際、このエピソードの約1週間後に、東芝で講演する機会があった。その懇親会で、東芝の幹部らに、「米TIが45ナノミリ以降の自主開発をやらないようですが、東芝はどうするんですか?」と聞いたところ、「TIはTI。うちはうち。東芝は微細化を進めますよ」との返事だった。これが普通の反応だろう。
前回の記事、「合弁や分社化で弱体化した半導体メーカー、組織をいじるとロクなことはない」(2012年6月4日)で、日本の大手半導体の中で、東芝だけが分社化や合弁を行わず売上高を増大させていることを書いた(図1)。これは、東芝だけがまともな経営ができている証しだと思う。
半導体産業においては、「自らの意志で戦略を決められるか否か」ということが、生き残れるか否か、成長できるか否かを決める決定的に重要なファクターだということだ。
ルネサスが窮地に陥っているのは、自己決定能力がないためだ。2003年に日立製作所と三菱電機が合併してルネサス テクノロジ(赤いルネサス)を設立した時も、2010年にNECエレクトロニクスと経営統合してルネサス エレクトロニクス(青いルネサス)になった時も、おそらく経済産業省やそれぞれの親会社などの外野から「こうしろ、ああしろ」と指示されたから、そういう行動を取ったに違いない。
今、ルネサスに、経産省、親会社、銀行筋、証券会社筋が、寄ってたかって「こうしろ、ああしろ」と意見を言っていると思うが、すべて無駄である。ルネサスが生き延び、成長するためには、「自主的に決断して行動する」ことが必須条件である。それができない限り、車載半導体のみを製造するクルマメーカーの一工場として買収されるか、または淘汰されるかしか、道はない。
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