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【コラム】

中日春秋

 ライオンが、洞穴の中で病気で寝込んだふりをして、見舞いに来る動物を次々平らげてしまう…。そんな話がイソップにあるが、猛獣などいなくても、洞穴には少し人を恐怖させるところがある

▼思えば、原発というシステムは洞穴に似る。稼働させればさせるだけ放射性廃棄物、つまり原発ゴミはたまっていくが、その処分先はどこにもないからだ。つまり洞穴と同じで進む先に出口がない。洞穴の怖さも暗さより、そこにあるかもしれない

▼各電力会社の株主総会の模様を伝えた記事によれば、どの社でも、脱原発を求める株主提案がたくさん出されたものの、ことごとく否決されたという。会社側は「原発は必要」だとあらためて訴えたようだ

▼だが、たまり続ける危険極まりないゴミは一体どうするのか。原発維持を主張する“ムラ”からも、この問いへの明快な答えはついぞ聞いたことがない。仮に事故のリスクを脇に置いても、その一点だけで、将来まで原発を動かし続ける選択肢はあり得ない

▼ライオンよりずっと怖いものの潜む洞穴ではなおさらだが、出口がないとなれば、人は普通どうするか。引き返すはずだ。既に一昨年、世界の発電容量で再生可能エネルギーが原発を超え、差は広がると予想されている

▼さすれば、こう言っても構うまい。原発に未来はない。あるのは、原発のない未来だけである。

 

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