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【コラム】

中日春秋

 きょう七月一日の朝。みなさんがこの新聞を手にした今、時計の針はどこを指しているだろうか。午前九時前だったら、もうすぐ特別な一瞬が訪れる

▼八時五十九分五十九秒の次は、今朝に限っては、九時ちょうどではなく、五十九分六十秒。この一秒が「うるう秒」だ。セシウム原子の振動を基にした正確無比な「原子時計」と、地球の自転を基にした時間のずれを調整するために付け加えられる

▼地球の自転は遅くなっているそうだ。地球が生まれた四十六億年前には五時間ほどで一回転していたのが、六億年前には二十二時間に。月との引っ張り合いなどで回る力を消耗しているためだという

▼地球がペースダウンしているのに、生活はせわしくなるばかりだ。「時の研究家」として数々の著書がある織田一朗さんは、日本人の時間感覚の変化を探っていて、昭和初期に来日した英国人サンソム夫人の手記『東京に暮す』に驚かされた

▼夫人は日本で暮らしての自身の変わりようを記す。<日本人のように蜜蜂(みつばち)のごとく働いたかと思うとゆっくり休みまた働くという頭の切り替えができるようになるのです>。欧米人もうらやむような時間の使い方を、つい数十年前の日本人はしていたのではないか、と織田さんはみる

▼一秒だけ得した気分の日曜日。小沢昭一さんの句で、ひと息を。<時計屋の微動だにせぬ金魚かな>

 

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