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【コラム】

中日春秋

 一人の新聞記者が、まだ幼いわが子に、父親の仕事を理解させようと、紙面の自分が書いた記事を示して「これはパパが書いたんだよ」。すると、子は感心したように言ったそうだ。「パパってすごく字が上手だね!」

▼昔、同業者から聞いた話。曇りなき心には「パパが書いた」は文字通り、父親がペンを握って一字一字書いた、と伝わったのだろう。もちろん直筆も活字並みに上手というような記者には会ったことがない

▼今年が没後九十年に当たる大隈重信は悪筆であったらしい。柴田宵曲著『明治風物誌』によれば、大臣として署名する時も、一切人を遠ざけ、姓名四文字を書くのに十分ほどかけて、やっと<高等小学校生徒の上手な程度>だったとか

▼字といえば、今年も今日でちょうど半分が過ぎ、明日からはもう「文月」。七月をそう異称するのは、短冊に字を書き書道の上達などを願う七夕の行事に由来するともいう

▼さて、この月替わりをもって小欄の担当筆者は、論説室の島田佳幸から星浩に交代します。<手のわろき人の、はばからず文かきちらすはよし>(徒然草)。これを勝手に、字だけでなく、文章も「下手でものびのびと書けばよし」の意と解釈し書き続けてきました

▼読者の方々の励ましのお便りにも支えられた、ほぼ五年です。深く深く感謝して、筆をおきます。ありがとうございました。

 

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