5. (犯罪集団)
5. (犯罪集団)
稲葉事件当時の小樽や札幌周辺で中古車業を営んでいるパキスタン人の顧客の殆んどがロシアマフィアである。札幌市内やその近郊には正規の中古車業者は山ほどあるので怪しい胡散臭い外国人の店で怪しい中古車をわざわざ買う日本人は皆無である。
つまりロシアマフィアが主にロシア船員と商売するためにパキスタン人に中古車業をやらせているわけだ。
ロシアマフィアのフロント企業であるパキスタン人による中古車業者マリックと、「稲葉という警察官を頂点とした渡辺司、工藤、小山、石上、小林という道警のSたち犯罪集団」が、密接に絡み合うことでより強大な犯罪集団を形成していた。
彼等S たちの前科の合計は8犯になる。
稲葉が主に使っていたSは5人であるが全部で20人以上いたと公判で稲葉自身が証言している。稲葉だけではなく生活安全部が銃器と覚醒剤の摘発のために「捜査協力者」として暴力団関係者を常時13人ぐらい(途中で服役の者を除く)は使っていたことになる。
「恥さらし」のなかでは密接に付き合っているSは常に10人ぐらいいたとも稲葉は語っている。
この稲葉を頂点とした犯罪集団は小樽港に寄港したロシア船船員を通じてロシアマフィアから覚醒剤や拳銃を仕入れる。
そしてその覚醒剤や拳銃をS(捜査協力者)に密売させ、その売った先を稲葉が検挙する。
Sは囮であり稲葉が拳銃押収で並はずれた実績を挙げたカラクリのひとつである。
逮捕の数年前から稲葉は覚醒剤の使用だけでなく直接自ら密売もしている。
Sを使うようになってから稲葉は道警からの毎月の給料をまるごと別居の妻に渡し、覚醒剤や拳銃の密売取引で得た金は自身の生活費やSたちの面倒をみる経費として使っていた。
年間600台以上の盗難車をロシアマフィアに売り、支払いが全て現金ではなく時には北朝鮮製の覚醒剤やマカロフなどの拳銃や密猟カニで支払われる。
渡辺たちSの仕事のひとつが代物支払いされた物を換金するために売りさばくことである。
そして、カニ以外の「覚醒剤」や「拳銃」を買ったものたちを検挙するのが稲葉の仕事であり、事件を造り上げて実績をあげていたのである。
渡辺は盗難車を小樽港に移送してマリックに引き渡し新潟港や留萌港などに持ち込まれる覚醒剤や拳銃を引き取って運ぶという最も危険な仕事もさせられている。
ロシアマフィア関係者によると、稲葉の逮捕前にパキスタンに逃げたマリックは小樽港の税関職員から埠頭を閉鎖しているゲートの合鍵を受け取っていたという。その見返りに密輸出した車一台当たり数万円をマリックたち犯罪集団は税関職員に支払っていたという。
小樽港や石狩湾新港は事件捏造とおとり捜査の舞台となり、盗難車や拳銃や覚醒剤の密輸をめぐって警察、暴力団、ロシアマフィアさらには税関までもが入り乱れて犯罪の秩序が構築されていた。
1997年11月に小樽港の岸壁付近で張り込んでいた道警銃器対策課の捜査員たちによってアンドレイというロシア人船員が現行犯逮捕された。逮捕容疑はトカレフと実包16発を持ちこんだ銃刀法違反、所持である。
この拳銃押収事件は、道警と稲葉とS(捜査協力者)であるマリックとその従兄弟のハンザフルと渡辺司の事前の綿密な打ち合わせにもとづく捏造事件である。
拳銃1丁と嵌められた「人身御供にされた逮捕者一人」の目立たない事件なのだが道警が組織的に仕組んだ捏造事件の中でも象徴的な事件である。
『この事件のポイントはロシア人の拳銃所持事件を立件するのと引き換えにパキスタン人たちは盗難車の密輸を道警に許されていたということだ。しかも税関を通さずに船に積み込むというやり方で。』
公判でアンドレイの国選弁護人はハンザフルとマリックを利用した道警の違法な囮捜査であるということを一貫して主張し続けた。
三人の警察官(方川、千葉、稲葉)は検察官の了解の上、法廷で偽証し、検面調書においてもSたちに虚偽の供述をさせている。札幌地検の検察官も共謀していたということだ。
警察官を証人として法廷に出廷させる場合、銃対課長や生活安全部長などが検討会を何度もやって本部長までの決済を仰ぐという。
結局アンドレイは、道警銃対課の幹部警察官や稲葉の偽証により捏造事件の犠牲になり懲役2年の実刑判決を受けている。
後に稲葉は死んだ方川一人にすべての責任を押し付ける幹部たちの態度に怒り、獄中から幹部たちを告発しアンドレイ事件の詳細を証言している。
2000年に「泳がせ捜査」の名目で道警銃器対策課が主導し函館税関の協力で石狩湾新港に荷揚げされた違法薬物は、1回目は香港から覚醒剤130キロ(40億円)、2回目はシンガポールから大麻2トン(60億円)である。
S(元暴力団幹部石上)の計画と関東の暴力団の話にのった道警銃器対策課と函館税関小樽支所が画策したことなのだが、つまり暴力団と警察と税関がコラボレーションし「泳がせ捜査」の名のもとに大量の違法薬物を密輸入したのである。
これらは拳銃200丁を中国人に密輸入させて身柄つきで200丁もの銃を摘発するために、大量の拳銃が欲しい道警の銃器対策課が大量の覚醒剤、大麻が欲しい暴力団と手を組んで画策実行したことである。
「泳がせ捜査」といえば聞こえはいいが、銃対課の数字の実績を挙げるためと、警察庁からの1丁あたりいくらという予算をとるために海外から大量の銃を手に入れるための捜査であるから、最初から道警主導の単なる「拳銃の密輸入計画」である。
道警の幹部たちが暴力団に調達を依頼した銃を密輸入するために、その見返りとして先に暴力団側にに覚醒剤と大麻を与えるために道警が先頭に立ち税関もグルになって違法薬物を密輸入したのである。
最終的に「覚醒剤」は暴力団を手玉に取り失踪した道警のSを介して、「大麻」は関東の暴力団を介して国内にすべて流通させてしまったのである。拳銃200丁の話は暴力団と道警をだしぬき覚醒剤をまんまと手に入れて失踪した道警のS(元暴力団幹部)の「架空のハナシ」だったのである。
何の成果も得られず、税関に2回も大きな借りをつくった道警はその恩に報いるために2001年さらに新たな事件を捏造した。ロシア船に拳銃を仕込み、それを函館税関小樽支所に摘発させたのだ。常時数十丁の拳銃が手元にあった稲葉がそのうちの20丁を提供しロシア船に仕込み税関が押収したのである。
稲葉氏の証言による道警銃器対策課の非常に悪質でかつ間抜けな事件なのだが、稲葉事件が発覚しなければもともと表面化しなかったことでもある。
警察と暴力団との昔からの「緊張関係」と同時に「信頼関係」を考えると、全国の警察で表面化していない類似のケース(内容や程度は違うだろうが)が相当あるのではないか。
稲葉事件が発覚したあと摘発できる情報を持っていても敢えて暴力団やマフィアの小樽港でのビジネスを野放しにし、道警が手を下さなかった理由は適正な捜査をすれば稲葉事件の規模が拡大してしまうからである。
税関や道警の不作為や関与を立証してしまう捜査はあえてしないのである。
小樽港でのでっち上げ事件や違法捜査に関わった税関職員は稲葉事件の陰に埋もれてしまいまったく追及されていない。
事件発覚以後に税関職員の人事異動がさかんに行われたという。
2001年の大阪府警による札幌発大阪着のトワイライトエクスプレス号の個室での10丁の拳銃押収事件は稲葉がパキスタン人を経由してロシアマフィアから仕入れ、渡辺が暴力団組員に売った拳銃だった。その銃を組員が空路で先回りし「大阪駅で回収」の予定が手違いで客室に鍵がかかってしまい入られなくなった組員が取引した銃を回収できず、そのまま逃走した。後に暴力団組長と組員13人が逮捕されている。
実はこの事件にも裏があり、道警が自分の管内で押収すると渡辺たちSが危険にさらされるのと、稲葉を頂点とする「事件捏造システム」がバレるのを防ぐために道警の銃器対策課が大阪府警の銃器対策課にあえて情報を提供した結果である。
この事件では稲葉以外に渡辺たち捜査協力者を動かしていた警察幹部がいることを示唆しているが稲葉自身の告白によればトワイライトエクスプレス事件での関与も強く否定している。それが事実とすれば別の銃対課の道警幹部がSを使っての拳銃の密売に深く関わり直接犯罪を指示していたということになる。
ある大阪府警の関係者によると、家宅捜索の時に組事務所から「○○県警に○丁」という走り書きのメモが押収されていたという。
2001年のことだが暴力団が警察の注文を受けて拳銃を手配していた可能性を示している。
道警だけでなくどこかの県警も拳銃の押収実績づくりのために暴力団に依頼して拳銃を調達していたのではないか。
「そんなことがあるわけがない。」と常識的には一笑に付される想像なのだが、笑いながら顔が引きつりそうである。
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