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【社会】

川崎で討論型の世論調査 原発比率などエネ政策 草の根で民意

 電力供給に占める原子力発電の割合(原発比率)をどの程度にするかなど将来のエネルギー政策について、「草の根」で民意を探ろうと上智大大学院の柳下正治教授(環境政策)らのグループが今週末にも「討論型世論調査(DP)」に着手する。政府は8月にかけて国民的議論を踏まえて政策を決めるとするが、柳下教授らは中立の立場で集約した「熟議の民意」を政府に示したいとしている。

 政府のエネルギー・環境会議は六月二十九日、二〇一〇年時点で26%だった原発比率を三〇年までに(1)0%(2)15%(3)20〜25%−とする三案を提示。国民の意見を集める方法として、従来のパブリックコメント(意見公募)や世論調査に加え、DPも行う。

 だが運営主体が経済産業省資源エネルギー庁で独立性が担保されないとの批判や、三日にやっと業者が決まり、残り一カ月余では時間不足という指摘も専門家からは出ている。

 柳下教授は昨年来、政府にDP実施を働き掛け、草の根でもDPを計画。一般社団法人「地球温暖化防止全国ネット」(東京)を事務局に全国の研究者らの協力を得て行う。

 調査対象エリアは、首都圏でも工業地帯や住宅街など多様な構成を持つ川崎市。今週末にも無作為抽出した三千人にアンケートを送付。性別や年齢を調整し百二十人程度を選び、八月十二日、上智大で討論会を開き、意見の変化や回答をまとめて政府に届ける。

 討論会では、政府の担当者や総合資源エネルギー調査会の原発推進、反対両派の委員らが質問に答える。市民は対話を重ね、熟慮の上で自分の意見をまとめることになる。

 柳下教授は「これまでは首長や議会で政策を決めれば済んだが、間接民主主義の限界は明らか。環境政策の当事者である市民の選択をしっかり反映させなければいけない」と強調する。

 一方、政府は二日、三案についてパブリックコメントを始めた。国家戦略室のホームページのエネルギー・環境会議のページから書き込み画面に移動して意見を提出できる。ファクス=03(6368)9460=と郵送でも意見を募っている。締め切りは三十一日。

 <討論型世論調査> 米国で開発された民意を探る手法。無作為に選んだ人に資料や専門家の説明など十分な情報を提供し、グループ討議や質疑を経て回答してもらう。アンケートは何も情報がない当初と討議前後に行い、意見の変化も踏まえて民意を把握する。直感的回答になりやすい普通の世論調査や、参加者が偏るパブリックコメントなどの欠点を補完する。国内では神奈川県藤沢市や札幌市などで実施。国の政策レベルでは今回が初めて。

 

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