社説:JR西3元社長公判 真相解明に率直に語れ
毎日新聞 2012年07月07日 02時32分(最終更新 07月07日 03時26分)
乗客106人が死亡した05年4月のJR福知山線脱線事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴されたJR西日本の歴代社長3人の初公判が6日、神戸地裁で開かれ、3人は無罪を主張した。
3人の中でも陳述が注目されたのが、経営トップを長く務めた井手正敬(まさたか)元会長だった。これまで被害者説明会に出席せず、慰霊式にも参加したことがなかったからだ。初公判で井手元会長は「経営に携わった者として衷心よりおわび申し上げる」と遺族らに謝罪した。そのうえで「あのような事故が起きると想定することは全くできなかった」と公の場で初めて事故に対する認識を示した。
判決は来年夏以降の見通しで、公判では遺族や負傷者が被害者参加制度を利用して、被告に直接質問し、意見を述べる機会もある。井手元会長とその経営路線を引き継いだ南谷(なんや)昌二郎元会長、垣内剛(たけし)元社長は、遺族や負傷者の疑問や問いかけに率直に答えるべきである。
JR西は関西の私鉄各社と競合する都市部で高速化による利便性を高めた。その推進に手腕を発揮したのが井手元会長だ。しかし、効率性を追求するあまり、安全を軽視した企業体質が事故を生んだのではないかと指摘された。強いリーダーシップが上意下達の社風を生んだとの批判も強い。有識者によるJR西の特別委員会は「閉鎖的な組織風土、上に物申さぬ文化をつくった」と報告している。