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「自殺練習」追加調査しない考え…大津市教委

追加調査に否定的な見解を繰り返す沢村教育長(中央)(4日、大津市役所で)

 大津市で昨年10月、市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が飛び降り自殺したことを巡る全校生徒アンケートで、「自殺の練習をさせられていた」との回答を市教委が公表していなかったことについて、4日に記者会見した沢村憲次教育長は「事実と確認できなかったため公表しなかった。隠したわけではない」と述べ、対応に問題はなかったとした。そのうえで、「可能な限り、いじめの事実を調べた」として、現時点では追加調査などはしない考えを示した。

 市教委はこの日、男子生徒が亡くなった直後に実施したアンケートで、「自殺の練習をさせられていた」と回答した生徒を16人とした。このうち4人は記名で回答していたため、市教委は聞き取り調査をした。

 この生徒らの記載は伝聞によるものだったことから、4人に話したとされる生徒からも事情を聞いた。しかし、自分でその場面を見たとは言わなかったという。

 さらに、無記名だった生徒の回答にも、場面を直接見たことをうかがわせるものはなく、名前が不明で追跡調査もできないため、市教委は「自殺の練習をさせられたとの確証は得られなかった」としている。

 記者会見で沢村教育長は、生徒の両親が、大津市と、加害者とされる3人とその保護者を相手取って損害賠償を求める訴訟を起こしていることを理由に、追加調査などについては「現時点では何も申し上げられない」と繰り返した。

 また、市教委が昨年11月、男子生徒へのいじめについて明らかにした際、アンケートの回答の一部を公表しなかった点を問われると、「公表した内容については、かなり慎重に確認しており、そのほかのことを隠したとは考えていない。自殺の練習については、事実と確認しきれないという結論に至った」と説明した。

 男子生徒が通っていた中学では、自殺の1週間前、担任教諭が「(男子生徒が)いじめられているのではないか」と別の生徒から聞いたものの、本人に確かめると、「大丈夫」と答えたという。

 このため、学校は当初、「いじめなどの事実はない」としていたが、両親の依頼で全校生徒にアンケートを実施。「トイレで殴られていた」「ハチの死骸を食べさせられそうになっていた」といったいじめがあったことがわかった。校長が両親に調査結果を報告して謝罪したが、両親は継続調査を望んでいた。

 この日の市教委の記者会見を受け、男子生徒の父親は「いじめで子どもを亡くすようなことが二度と起こらないようにすることが大切なのに、事実や原因が明らかにされなければ、対策の取りようがない。大津市や加害者側には事実を全て出してほしい」と話した。

 長谷川博一・東海学院大教授(臨床心理学)の話「伝聞が含まれていたとはいえ、アンケートでいじめについて回答した生徒の数は多く、内容も多岐にわたっている。市教委は『可能な限り調べた』としているが、問題への深入りを避けているようにも映る。証言内容が真実かどうかを改めて調べたうえで、遺族が納得できるような説明をしなければならない」

2012年7月5日  読売新聞)
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