「4月8日は何の日ですか?」
・三人称の練習として書いてみました。
・先に謝っておきます!聖ファンの方、すみません!!
ここは命蓮寺。
かの異変以来、この寺に居を構えた聖白蓮を始めとする面々は平穏な生活を送っていたのだが、今日は不穏な空気が寺全体を包んでいた。
「ね、ねぇ、ナズーリン……。聖、どうしたのかな……?」
毘沙門天の弟子である寅丸星が、自分の部下であるナズーリンに耳打ちした。
「知らないよ……。てか、御主人。私の後ろに隠れるのやめてくれないか?」
ナズーリンが、自分の後ろでぶるぶると震えている星に呆れた顔を向けながら答えた。
「だ、だって……。聖、さっきから怖い顔でずっと黙ったままだし……。あぁでも、怒った顔の聖も素敵だなぁ……」
命蓮寺の面々は聖の自室に呼び出されていた。しかし、当の聖がだんまりを決め込んでしまっているため、一同は緊張した面持ちのまま聖の前に座らされ続けていた。
「ねぇ、聖~?どうしたの、怖い顔しちゃって~。顔を強張らせてるとシワが増えるよ~?」
集団で生活しようとすると、どういうわけか必ずと言っていいほど空気が読めない奴が紛れ込む。
命蓮寺においては、聖の周りをうろつきながら顔を覗いたり、頬を引っ張ったりしている封獣ぬえがそれにあたる。
「ひいいいっ!!」
「ぬえ!何やってんだ!?」
血相を変えて聖からぬえを引き離したのは、入道使いの雲居一輪と舟幽霊の村紗水蜜。命蓮寺の苦労人三人衆のうちの二人だ。
ちなみにもう一人は「ぬえめ……なんて羨ましいことを……」と、歯ぎしりしている星を冷ややかな目で見ているナズーリン。
この三人は先の異変の折、魔界に封印されていた聖を救うために奔走したのだが本筋とは関係ないので省略する。
「あぁぁぁぁ!妬ましい!!」
「ひゃあっ!姐さんが壊れた!!」
村紗と二人で、ぬえを取り押さえていた一輪が驚いて声をあげた。
「ひ、聖!シワ云々って話が気に障ったのですか!?若い娘が妬ましいのですか!?」
一輪と同じく、ぬえを押さえていた村紗が、ぬえを手放して苦悶の表情を浮かべながら髪をかき乱している聖の肩を抱いた。
「なんなら、この宝塔で常に聖の顔を照らしましょうか!?そうすれば、シワのひとつやふたつ目立たなくなりますよ!?」
と、星が懐から宝塔を取り出して聖の顔を照らした。
まさか宝塔も、こんな使い方をされるとは夢にも思わなかっただろう。
「そんなことはどうでもいいのです!!」
仮にも主筋の聖に対して、失礼極まりないことを喚き立てる面々を聖が一喝した。
「そんなこととはなんですか!?聖には常に美しくあって欲しいという私の忠誠心がお分かりになりませんか!?」
「御主人!その話はもういい!」
命蓮寺の常識人、ナズーリンが聖に食ってかかる星を止めた。
「で?聖、そろそろ本題に入って欲しいんだが?」
このままでは話が進まないと思ったナズーリンが進行役を買って出た。
常識人とは、いつもいつもこのような役回りである。紅魔館のメイドしかり、白玉楼の庭師しかり。
その二人と肩を並べるのが、命蓮寺の小さな賢将ことナズーリンだった。
村紗と一輪もナズーリンと同じく苦労人であることには変わりはないが、聖を慕うあまり時々言動がおかしくなることがある。
それを考慮すると、苦労人三人衆の筆頭はナズーリンだと言えた。
「聞いてくれるのですか!?ナズーリン!」
「いや……。聞くもなにも、そのために我々を呼んだのでしょう?」
しかし、ナズーリンのツッコミも聞かずに、聖は勢いよく立ち上がった。
「星っ!!」
「は、はひっ!」
そして、星をびしっと指差した。
名前を呼ばれた星は、びくっと体を震わせると慌てて立ち上がった。
「4月8日は何の日か知ってますね!?」
「は、はい!お釈迦様がお生まれになった日であります!!」
立ち上がった星は、何故か軍隊式の敬礼を聖に向けながら答えた。
「よろしい」
と、聖が満足そうに言うと星はきびきびした動きで着席した。
「そう。4月8日はお釈迦様がお生まれになった日。いわゆる『降誕会』」
聖は机の上に乗ると、舞台の悲劇のヒロインのような芝居がかった動きで両手を天井にかざした。
「なのに!何故!?」
そして聖は、天井にかざしていた手を胸の前で組んだ。
「こんなにも地味なのでしょう!?クリスマスはあんなにも盛り上がるのにっ!大体、クリスマスはキリストの誕生日であって、家族でワイワイしたり、恋人同士でキャッキャッウフフをしたりするイベントでは無いはずです!」
「「「「「えぇぇぇっ!?」」」」」
ここで、聖を覗いた全員からブーイングの声があがった。
「いやいや姐さん!去年のクリスマスに一番はしゃいでた人が今さら何を!?」
「そうですよ!『ちゃんぽんなのも文化よね~♪』とか言って、美味しそうにケーキ食べてたじゃないですか!?」
村紗と一輪が、非難の声をあげた。
「うるさい!うるさい!うるさぁぁぁいっ!」
しかし聖は机の上で地団太を踏んで、二人の非難を退けた。
「うわぁ……。ちょっと御主人。場を収めなくていいんですか?」
「すまんナズーリン……。地団太を踏んでる聖を見てたら、不覚にも鼻血が……。何か詰めてくるから、ここを頼む」
退場していく星を見て、ナズーリンは盛大にため息をついた。
果たして、聖の目的とは何なのか?
そしてナズーリンの胃は大丈夫か?
謎を残しつつ、次パートへ続く。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あぁ、なるほど……。クリスマスに対抗して、『降誕会』を広めたいと?そういうことですね?」
すっかり司会進行役が板についてきたナズーリンが、聖の話をまとめた。
聖を含めた他の面々は落ち着きを取り戻し、改めて机を囲むと、やっと会議らしくなってきた。
「そうです!我ら仏門に帰依する者として、お釈迦様の誕生日を世に広めずして何とします!?さぁ、何か良い考えがある者はいませんか!?」
一同は天井を見上げ、あるいは額に指を当てて考えに耽った。
命蓮寺は基本的に絶対君主制である。
聖というカリスマを頂点として、その意向や指示を忠実に守ることで体制を維持している。
この場合、君主である聖へ鉄の忠誠を誓うことが前提条件となるが、命蓮寺の者たちは皆、聖を慕うものばかりなのでその点は心配なかった。
しかし、この体制の最大の弱点は『指示待ち』に陥りやすいことである。
つまり、命令を忠実にこなすことは出来るが、普段『自ら考えて動く』ということを無意識に怠ってしまっているため、「さぁ、自分の考えを言え!」と言われても、なかなか難しい話であった。
(となると、可能性があるのは私と……)
ナズーリンは横目で、ちらりぬえを見やった。
ぬえは、あの異変後に命蓮寺の仲間になった。そしてナズーリンは、毘沙門天の命で命蓮寺の仲間に加わった。
この二人は、生粋の命蓮寺メンバーというわけではない。聞こえは悪いが外様だと言える。
しかし、時にはそうした俯瞰で見るような視点が必要になる時もある。それがまさに今の状況だった。
(だけど、それは期待し過ぎか……)
と、ナズーリンが鼻で笑いながらぬえから視線を外した時。
「はい!はい!!」
ぬえが元気よく手を上げた。
「ぬえ!何か妙案が思いつきましたか!?」
なかなか意見が出てこず、業を煮やし始めた聖がぬえに期待の眼差しを向けた。
「そもそも『降誕会』って呼び方が堅苦しいと思うんだよね。だから、皆が親しみやすい名前に変えたらどうかな?」
その意見に一同が手を同時に手を打った。
「斬新な意見ね」
と、一輪。
「盲点だったわね」
とは、村紗。
「むぐぐ……。ぬえごときに遅れをとるとは……」
そして、歯ぎしりをして悔しがっているのは、鼻に詰めたちり紙がトレードマークの星。
「しかし、卑しくもお釈迦様の生誕した日。勝手に呼び名を変えるのはいかがなものだろう?」
皆がぬえに賛同する中、ナズーリンが反対の意見を述べると「確かに……」と、一同が頷き、また沈黙が流れた。
「はい!はい!!」
しかし、ぬえがまたもや沈黙を破る。
「なら、内容を変えるのはどうかな?ほら、クリスマスだって本来の趣旨とは違う内容で広まってるわけだし。正直、お経を読んで仏像に甘茶をかけるだけって地味じゃない?」
その意見に、またもや同時に手を打つ一同。
「斬新な意見ね」
と、一輪。
「盲点だったわね」
とは、村紗。
「むぐぐ……。一度ならず二度までも……」
そして、怒りのせいで血の気が多くなり、ちり紙の白が徐々に赤に染まっていく星。
「では、ぬえ。どのような内容が良いでしょう?」
議論が流れ始めたことで、すっかり機嫌を良くした聖が嬉々としてぬえに尋ねた。
「まず、私の能力で仏像をサンタクロースに見せて……」
「目的が変わってるよ!」
最後の良心であるナズーリンが、議論が変な方向に流れないようにと必死に食い止める。
「じゃあ、一輪が雲山を操って仏像を白ひげに見せかけて……」
「サンタから離れようよ!」
「なら村紗が……。あ、やっぱりなんでもない」
「ひどい!何か考えてあげて!」
出す案を片っ端から却下されたぬえが頬を膨らませた。
「じゃあ、ナズーリンは何か考えがあるの!?」
そしてナズーリンを指差すと。
「そういえば、お前はさっきからぬえの意見を否定してばかりで自分の意見を言ってないじゃないか。ナズーリン?そういうのは良くないと思うぞ?」
星が人差し指を立てて諭すような口調でナズーリンに語りかけた。
(こ、こいつ……)
自分のことを棚に上げて説教モードで星が語り掛けてくると、ナズーリンの眉が怒りでぴくっと上下した。
さらに、一輪と村紗も「そうよね~?」「意見も言わずに人の意見にいちゃもんばっかりつけるのはね~?」と、ひそひそと囁き合ってるのが聞こえてくると、腹の底が熱くなってくるのを感じた。
(こ、こいつらも……。もうやだ……。早く部屋に帰ってチーズ食べたい……)
わなわなと震えるナズーリンだったが、聖の前で喚き散らすわけにはいかないと、それらの声を無視して平静を装っていた。
しかし、周りを味方に付けたぬえが舌を出して挑発してくると、彼女の中の何かが切れた。
「あぁぁぁっ!だったらチーズでも食べればいいじゃないかっ!!」
勢いよく立ち上がり、大声で叫んだナズーリンだったが何か考えてものを言ったわけではない。
ただ、さきほど「チーズ食べたい」と思っていたことが、怒りで我を忘れ、思わず口からこぼれてしまっただけだった。
一同は、そんなナズーリンをぽかんとした顔で見上げている。
「そ、その……なんて言うか……クリスマスではケーキを食べるだろ?だっ、だから!それに対抗して……ち、チーズをっ……!!」
泥沼だった。
何とかそれらしくまとめようと必死になればなるほど深みにはまっていく。
ナズーリンは恥ずかしさのあまり、頭から湯気が出るんじゃないかという位に顔が赤くなり、それを両手で隠した。
(ぎゃぁぁぁっ!穴があったら入りたい!むしろ自分で穴掘って逃げ込みたい!……いや、そうしよう!!今すぐ逃げて、ほとぼりが冷めるのを待とう!)
この間、わずか三秒である。腐っても賢将は賢将だった。
そして意を決したナズーリンが逃げ出そうとしたその時。
一同から「おぉぉっ!」と、歓声が上がった。
「斬新な意見ね!」
と、一輪。
「盲点だったわね!」
とは、村紗。
「すまん!お前にそんな深い考えがあるとは知らず、私は酷いことを言ってしまった!許してくれ!」
そして、ナズーリンに抱きつき、頬ずりをしながら許しを請う星。
激しい頬ずりのせいで鼻の詰め物が落ち、ナズーリンの頬が朱に染まっていく。
(え……えぇぇぇ~……?)
そんな中、ナズーリンはただ立ち尽くすことしか出来なかった。
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そして迎えた四月八日。
命蓮寺が開催した『降誕会、春のチーズ祭り』は大盛況のうちに幕を閉じ、以後、幻想郷では『四月八日にはチーズを食べる』という風習が一般化した。
このブームの火付け役となったナズーリンは賢将の名をさらに高めることとなったが、何故か四月八日が近づくと毎年複雑な表情を浮かべ。
「世の中、何が流行るかわからないものだね……」
と、呟いたと言うが、その真意をくみ取ることが出来る者はいなかった。
~おしまい~
書いてるうちに何故かナズーリン推しになってしまいました。ロリですみません。
はい、どうも私です。
実は「『星』組で書くのは無理だな」とか前々から思ってたりしました。
『アリスと魔理沙』のような、独自解釈の話をもっと書きたいと思ってる私的には公式設定がしっかりしてるチーム命蓮寺には、いまんとこ入り込む隙が無いんですよね~。
この話は、前書きにもあるように三人称の練習しようと思ったので「季節のネタで一本」と思い、ちょっと書いてみたんですが、思った以上に楽しいかったです。
こういう路線で何か書いてみようかな?
さてさて、本編に目を向けますと、キャラ崩壊がひどいですねwww
特に聖。次いで星。
いやだって、ナズがツッコミ役になった以上、星がボケ担当に回るのは仕方のない事なわけで……。
え?聖?
ヒジリサンハカワイイデスヨ?
まぁ、そういうことです。
いや!ホントに聖好きですよ!?
『感情の摩天楼』聞いた時には号泣しましたし、弾幕も鬼畜ですけどアリスママとのつながりを匂わせるような意味深なものもあって興味深かったですし!
え?聖本人を褒めてない?
……ヒジリサンハカワイイデスヨ?
泥沼だ……もうやめよう……。
ちなみに、私はちらっと思い出しただけでしたが4月8日が何の日か知ってて読んだ方っているんですかね?
まぁ、イベント的には確かに地味ですけどね。
シーズンネタだと、『正月』とか『クリスマス』とか『バレンタイン』とかがテッパンなので、たまにはこういう話もいいのかなぁ。なんて思ったり。
では!ぬえのニーソ、マジニーソ!!ってことで、この辺で!
お読みいただきありがとうございました!!
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