厚生労働省は5日、2010年の1世帯あたりの平均所得が538万円と前年比11万6千円(2.1%)減少したと発表した。1987年(昭和62年)以来23年ぶりの低水準で、これまで最も多かった94年と比べて約126万円減った。
2008年のリーマン・ショック後の雇用環境の悪化や非正規雇用の増加が影響している。生活が苦しいと感じている世帯の比率は61.5%で、86年の調査開始以来、過去最高になった。
特に18歳未満の未婚の子を持つ、子育て世帯の減少額が大きく、所得は39万2000円(5.6%)減少した。子ども手当の支給で現金収入の「社会保障給付」が前年から12万4千円増えたが、働いて得る「稼働所得」が37万8千円減り、全体の所得を押し下げた。
子育て世帯は所得の9割近くを稼働所得が占める。景気の影響を受けやすく、生活が苦しいと感じている子育て世帯は69.4%に上った。
一方、65歳以上の高齢者世帯は307万2千円と、7千円(0.2%)減少にとどまった。年金などによる所得が全体の7割を占めており、景気の影響を受けにくい。
世帯所得の減少の要因を専門家は「企業の価格競争が激しくなるなかで、非正規雇用が増えたことが所得低下につながっている」(日本総合研究所の山田久調査部長)とみている。政府が検討する社会保障改革についても「限られた財源のなかで生活の苦しい現役世代への配分も考える必要がある」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)という。
世帯所得とは住居と生計を共にする家族の所得を合算したもの。宮城・岩手・福島の被災3県を除く全国の世帯を対象に11年6~7月に調査した。11年の平均世帯人数は2.58人で調査開始以来の最低になった。
厚生労働省、河野龍太郎
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