現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説をもっと読む

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。

有料版のご購読で
朝刊で声やオピニオンも読める!社説など過去1年分の新聞記事が検索できる!
社説だけまとめて読むなら
3カ月分まとめて読める!WEBマガジン「朝日新聞 天声人語・社説」

2012年7月6日(金)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

ヒッグス粒子―宇宙の謎をともに開く

その存在がなければ、宇宙は今のような姿にならなかっただろうし、むろん、私たちも存在しなかったはずだ。物に重さを与える役割から、「神の粒子」とも呼ばれるヒッグス粒子である[記事全文]

日本と韓国―不幸なすれ違いを憂う

日本と韓国。この隣国間で、また不幸なすれ違いが起きた。両政府の間で締結が合意されていた軍事情報の秘密保護協定(GSOMIA)が先週、署名式の段取りまで決まっていたのに、[記事全文]

ヒッグス粒子―宇宙の謎をともに開く

 その存在がなければ、宇宙は今のような姿にならなかっただろうし、むろん、私たちも存在しなかったはずだ。

 物に重さを与える役割から、「神の粒子」とも呼ばれるヒッグス粒子である。

 1960年代にその存在が予言された。ほかの素粒子は次々に見つかってきたのに、手がかりをつかませなかった。それがついに、私たちの目の前に姿を現したようだ。

 追いつめたのは、日本をふくむ約40カ国数千人の科学者からなる、かつてない規模の国際チームである。実験装置はスイス・ジュネーブ郊外、欧州合同原子核研究機関(CERN)の1周27キロの巨大加速器LHCだ。

 宇宙の成り立ちにもかかわる標準理論には素粒子が17種類登場し、ヒッグス粒子が確認されればひととおり見つかったことになる。最終的な確認にはなお実験が必要というが、歴史的な成果といっていい。

 とはいえ、宇宙の起源にせまる、世紀を超えた科学者たちの挑戦の物語は、実はまだ始まったばかり、かもしれない。

 この宇宙にある物質やエネルギーのうち、水素をはじめとするおなじみの物質は4%ほどでしかない。こんな驚くべき事実が今世紀に入って明らかになった。残りの4分の3は暗黒エネルギー、4分の1が暗黒物質と呼ばれ、正体がわからない。その探求に、世界の科学者たちがしのぎを削っている。

 東大のカブリ数物連携宇宙研究機構もその一つで、ハワイのすばる望遠鏡を使った「すみれ計画」にはLHCのように海外から研究者が加わり、暗黒の謎をひらく期待がかかる。

 どうやって宇宙はできたか。大きな問いを追う基礎研究の大切さを考えたい。

 小柴昌俊博士がいうように、ノーベル賞を受けたニュートリノの研究は「100年たっても役に立たない」かもしれない。

 だが、科学が明らかにした事実は、私たちの宇宙観や生命観を築き、知的好奇心を大いに満たしてくれる。

 そして基礎的な研究は、アインシュタインの相対論なくしてカーナビの全地球測位システム(GPS)が正しい位置を計算できないように、思いがけない形で技術の飛躍に貢献する。

 研究を進めるうえでかぎを握るのは財源だ。とりわけ、加速器建設は巨費を要する。各国が財政難のいまは容易でない。

 研究を進めるには納税者の理解が欠かせない。そのためにも、最先端の成果を説明することもまた研究者の務めである。

検索フォーム

日本と韓国―不幸なすれ違いを憂う

 日本と韓国。この隣国間で、また不幸なすれ違いが起きた。

 両政府の間で締結が合意されていた軍事情報の秘密保護協定(GSOMIA)が先週、署名式の段取りまで決まっていたのに、その1時間前になって韓国側の求めで延期された。

 韓国の与野党の反発が原因で、政府高官の辞任騒ぎにまで発展している。

 協定は、自衛隊と韓国軍との間で軍事情報を共有するため、互いに提供された情報を保護するための枠組みだ。

 日韓間の初めての本格的な防衛協力であり、玄葉外相が言うように「歴史的な出来事」となるはずだった。

 それだけに、土壇場での延期は残念だ。

 協定のもとでは、北朝鮮関連の情報提供がおもに想定されていた。日米、米韓の間では共有されているのに、日韓の間にはそれがない。

 4月の北朝鮮による事実上のミサイル発射失敗についての情報が錯綜(さくそう)したのは、まさに日米韓の三角形の一辺が欠けているためだった。だから、日韓の防衛当局の間では、協定への期待は高かった。

 ところが、韓国内からは「日本による再侵略」などという批判が伝えられた。

 日本による植民地支配の記憶を持つ韓国だ。慰安婦問題の再燃もあり、「軍事協力」という響きに敏感になる国民感情はよくわかる。こうした思いはないがしろにすべきではない。

 それにしても、「再侵略」とは、大多数の日本人にとっては思いもよらぬ批判だし、あまりに冷静さを欠いている。

 アジア太平洋地域で、日米韓という、共通の価値観を持つ国が安全保障で協力することは、北朝鮮の不穏な動きや中国の台頭を考えれば、韓国にも利益が大きいはずだ。

 もっとも日本だって、原子力基本法に「我が国の安全保障に資する」との文言を加え、いらぬ不信の種をまいた。これに刺激されたのだろう。大統領選をうかがう韓国の政治家から「韓国も核保有能力を持つべきだ」との発言が飛び出した。

 これから年末に向け、韓国では大統領選がある。日本でも総選挙がちらついてきた。政治家にしてみれば、世論が気になる季節だ。

 どこの国でも、ナショナリズムがからむ問題に世論は敏感だ。ちょっとした政治家の言動が、ネットによって何倍にも増幅される。

 こんな時だからこそ、政治には冷静さを保ってほしい。

検索フォーム

PR情報

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介
サッカー日本代表戦JFAユースプログラム 応募はこちら