「財務省内では常識です。しかしそれを言えば消費増税は通らない。世の中はやがて気付き、財務省に騙された、と思うでしょう。その時が大変ですが、イヤなことは考えない。それはそうなったときに何とかすれば、というのが上層部の姿勢です」
前出の官僚は言う。「自分たちは正しいことをしている。だが大衆は目先のことしか考えない。本当のことを伝えると賛成を得られない。大事なことは知らせず、我々の責任で遂行するしかない――」。
財務省権力の源泉
そんな中で勝栄二郎事務次官の続投が内定した。3年目に入る。次官は通常1年で代わる。2年続けると大物次官と云われるのがこの世界だ。財務省で3年次官を続けたのは、日銀総裁になりそこねた武藤敏郎氏以来である。
「勝さんは後輩に譲りたいと申し出たが、野田首相が留任させた」という話もある。
その通りだとしても、形式的なやり取りだろう。「人事を政治家にやらせない」ことを、財務官僚は誇りとしてきた。人事不介入すなわち政治主導を許さない役所である。
だが役人は自分から「あと1年やります」とは言わない。「後任に席を譲る」と辞意をもらしながら、財務相や首相に根回しして「留任」の空気を作る。
勝次官は主計局長の頃から「影の首相」と云われてきた。霞ヶ関・永田町に張り巡らされた情報ネットワークが財務省権力の源泉だ。予算配分権と人事権を握り官僚機構に君臨する。官邸には首相・官房長官らに秘書官を送り込み遠隔操作する。国会や選挙で責任を問われない官僚が、国会の外に長期政権を築き統治する。これが日本の特徴である。