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山田厚史の「世界かわら版」
【第13回】 2012年7月5日
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山田厚史 [ジャーナリスト 元朝日新聞編集委員]

勝栄二郎次官は異例の在任3年目に突入
財務省も懸念する消費税増税“完勝”の結末

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 「財務省内では常識です。しかしそれを言えば消費増税は通らない。世の中はやがて気付き、財務省に騙された、と思うでしょう。その時が大変ですが、イヤなことは考えない。それはそうなったときに何とかすれば、というのが上層部の姿勢です」

 前出の官僚は言う。「自分たちは正しいことをしている。だが大衆は目先のことしか考えない。本当のことを伝えると賛成を得られない。大事なことは知らせず、我々の責任で遂行するしかない――」。

財務省権力の源泉

 そんな中で勝栄二郎事務次官の続投が内定した。3年目に入る。次官は通常1年で代わる。2年続けると大物次官と云われるのがこの世界だ。財務省で3年次官を続けたのは、日銀総裁になりそこねた武藤敏郎氏以来である。

 「勝さんは後輩に譲りたいと申し出たが、野田首相が留任させた」という話もある。

 その通りだとしても、形式的なやり取りだろう。「人事を政治家にやらせない」ことを、財務官僚は誇りとしてきた。人事不介入すなわち政治主導を許さない役所である。

 だが役人は自分から「あと1年やります」とは言わない。「後任に席を譲る」と辞意をもらしながら、財務相や首相に根回しして「留任」の空気を作る。

 勝次官は主計局長の頃から「影の首相」と云われてきた。霞ヶ関・永田町に張り巡らされた情報ネットワークが財務省権力の源泉だ。予算配分権と人事権を握り官僚機構に君臨する。官邸には首相・官房長官らに秘書官を送り込み遠隔操作する。国会や選挙で責任を問われない官僚が、国会の外に長期政権を築き統治する。これが日本の特徴である。

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山田厚史 [ジャーナリスト 元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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