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福島原発事故は規制当局と事業者のもたれ合いによる人災=国会事故調

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 【ワシントン】東京電力福島第1原発事故を調査してきた国会の事故調査委員会は5日、事故の原因は政府、規制当局、東京電力の過失によって引き起こされた人災だとする報告書を公表した。

 10人の委員で構成される事故調は640ページにわたる報告書で、規制当局と東電が最も基本的な安全基準の構築を怠ったために福島第1原発は2011年3月11日に発生した地震と津波に対して脆弱(ぜいじゃく)な状態であったとし、原子力事業者および監督官庁を厳しく批判した。

Reuters

福島第1原発(2011年3月)

 また、規制する側とされる側の関係に焦点を当て、本来原子力安全規制の対象となるべき東電は、電気事業連合会を通じて規制当局に規制の先送りあるいは基準の軟化に向け強く圧力をかけてきたと指摘し、「規制当局は電力事業者の『とりこ』となっていた」と述べた。

 そのうえで、政府、規制当局、東電は、原発事故の危険を回避する国民の権利を実質的に裏切ったと強く非難した。

 一方、事故調は今後の対策に向けた提言も盛り込み、原子力業界や規制構造の全面的な改革を求めた。年内に設立される新規制当局を監視する目的で、国会に原子力に係る問題に関する委員会を常設することや、「世界の安全基準の動向および最新の技術的知見等が反映されたものになるよう」法規制全般の抜本的な見直しを提言した。

 事故調の黒川清委員長は報告書で、数多くの誤りや未必の故意によって「日本の原発は、いわば無防備のまま、3.11の日を迎えることとなった」と述べ、「この事故が『人災』であることは明らか」と断定した。

 経済産業省原子力安全・保安院の森山善範・原子力災害対策監は会見で、報告書の内容を真摯(しんし)に受け止め、改善が必要な箇所については十分に考慮すると語った。

 原子力事業の監督官庁である経産省の広報担当者は報告書についてコメントの用意がないと述べ、東電の広報担当者は報告書の内容を確認中とした。

 事故調は国会から付託された委員会で、主に科学者、弁護士、学者によって構成されている。福島第1原発事故の原因究明を行っている3つの調査委員会の1つで、唯一証人や証拠を召喚する権限を持つ。報告書をまとめるために延べ900時間にわたって1167人の聞き取り調査を行い、事故当時に首相を務めていた菅直人前首相や米国原子力規制委員会のリチャード・メザーブ元委員長などを参考人として聴取した。

 政府は国会事故調の提言に従う義務はないが、報告書に影響力があるのは間違いない。東京大学経済学部の元教授である八田達夫氏は、国会事故調による報告書は政府がまとめた報告書よりも「客観性があるのでより重みがある」と指摘した。

 政府は年内に原子力安全基準と規制当局の見直しを予定しており、国会議員や地方政治家の多くが国会事故調による報告を考慮するよう要請している。

 同報告書は福島原発事故の原因について政府、規制当局、東電がまとめた見解に真っ向から反論している。政府と東電は地震による停電で原子炉3基が制御不能となったのは想定外の規模の自然災害によるものとしたが、事故調は事故が「人災」で「防げた可能性がある」と結論付けた。

 また、最大震度7を記録した地震が重要な機器の損傷を引き起こした可能性があるとの見解を示した。政府と東電は福島原発が地震ではなく津波の影響で制御不能になったとしていた。

 専門家は地震が事故の一因と見られるのであれば、原子炉の耐震基準の見直しにつながる可能性があると指摘する。

 これら問題に対応するため、国会事故調は電力会社のリスク管理やガバナンス、安全基準を監視・監督する目的で、行政機関から独立した委員会を設置することを提言した。

 また、安全性を高めるために、廃炉などの基準を明確にしながら既存の原子力法規制を一元的な法体系へと再構築する必要性を訴えた。

 北海道大学で原子炉工学の研究を行い、原発の再稼働前に安全性の確認を行う委員会のメンバーでもある奈良林直教授は、国会事故調の報告書が規制の見直しについて良い提言をしていると評価しながらも、大事故を防ぐ方法よりも大事故を受けた対応に焦点を置き過ぎていると指摘した。

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