日体大時代に川澄が作った横断幕。60人近い部員全員の似顔絵を一人で描いた【拡大】
なでしこジャパンの攻撃を牽引(けんいん)するMF川澄。ピッチ外ではMF沢にネイルアートを施すなど、「おしゃれ番長」として名をはせる。また、今年4月に都内で開かれた「なでしこジャパンの書」展では、「夢」の一文字を力強い達筆で披露した。
そんな川澄の多才さを懐かしく思い出す人がいる。日体大の1年先輩で、川澄が3年時に女子サッカー部主将だった藤本まどかさん(27)だ。藤本さんの最後の全日本大学選手権前の2006年12月。「イラストが得意だったナホ(川澄)が、60人近い部員全員の似顔絵を描いた横断幕を作ってくれたんです。サプライズでした」。
「最高の仲間と最高の勝利を!!」とも大きく書かれた横断幕を会場に掲げたチームは発奮し、決勝(東京・国立競技場)へ進出。大体大に0-1で惜敗したが、川澄は藤本さんに「来年は絶対に優勝します」と誓った。
しかし、07年は苦難が訪れた。4月の練習試合で左膝前十字靱帯断裂の大けがを負い、手術。医師から復帰には最低8カ月と告げられた。それでも「絶対に治します」と宣言。懸命のリハビリを続けて12月、全日本大学選手権の準決勝に途中出場して公式戦に復帰。決勝では大体大を下し、約束を果たした。
川澄はINAC神戸入団翌年の09年にも、全日本大学選手権3連覇を狙っていた後輩のために横断幕を作った。自宅で新聞紙を広げ、「Yes,We Can!」と白い歯をむき出す米オバマ大統領のコミカルな似顔絵入りで、1人で作り上げた。
「優しくて仲間思い」は今も変わらない。なでしこジャパンのDF熊谷紗希(フランクフルト)は、「似顔絵はよく描いてくれますよ。私だけじゃなくて(MF阪口)夢穂ちゃんにも」と明かした。
藤本さんは、ロンドンへ旅立つ川澄にエールを送る。「ナホらしく、スピードあるスタイルで世界にアピールしてほしい。何色でもいい。メダルを取って帰ってきてほしい」。期待を背負う暑い夏が、いよいよ幕を開ける。
★川澄のイラスト入り商品
得意なイラストの才能を生かして、Tシャツ、小物などさまざまなデザイン、プロデュースも展開している。胸に愛らしい像の絵が描かれたパーカーや、赤、白、青のロンドンカラーに地球儀のイラストがあしらわれたTシャツなどが人気商品。洋服以外にも、ハンドタオルやネックストラップ、また自らの似顔絵が描かれたiPhoneカバーなど、種類はバラエティーに富んでいる。販売はインターネット通販サイト「PURE CITY shopping」などで。
★笑顔でビラ配り2時間
元INAC神戸監督で川澄獲得を決めた田渕径二氏(42)は、「独特のリズムと間合いを持っていた」と振り返った。川澄は入団直後、帰宅ラッシュのJR三ノ宮駅前でリーグ開幕戦のビラ配り。恥ずかしがる先輩もいた中、率先して「観に来て下さーい」と約2時間、笑顔で呼びかけた。「当時から物おじせず、何事にも動じなかった」と田渕氏。大舞台に強いのもうなずける?
★今後の川澄
INAC神戸の一員として、8日のなでしこリーグ杯・千葉戦(ホムス)に出場予定。翌9日から代表合宿に参加する。11日に豪州との五輪壮行試合(国立)を行い、16日に直前合宿地のパリへ出発。19日に同じく五輪に出場するフランスとの強化試合に臨み、翌20日に英国入り。25日の五輪1次リーグ初戦・カナダ戦(コベントリー)に備える。
(紙面から)