先日リリースされたばかりのSandy Bridgeを搭載したデスクトップPCが、本日エプソンから発表された。前モデルの「Endeavor MR6700」同様、コンパクトな26Lタイプのミニタワーケースを採用しつつ、アーキテクチャを一新。試作機が送られて来たので早速レポートをお届けする。
●Sandy Bridge搭載のデスクトップPC前モデルの「Endeavor MR6700」は、CPUにLynnfield(Core i7系)もしくはClarkdale(Core i3/i5系)、チップセットはIntel H57 Expressと、2010年仕様と呼べる内容だった。机の上に置いても邪魔にならない26Lタイプのミニタワーケース、そして豊富なBTOなどを特徴に持つデスクトップPCだ。
その特徴を引き継ぎつつ、今回は年初に発表された第2世代Core iプロセッサ、“Sandy Bridge”を採用した2011年型の最新版となっている。筆者はSandy Bridgeのマシンを触るのは今回初めて。前評判も良いため期待度は高い。手元に届いた仕様は以下の通り。
【表1】「Endeavor MR6900」の仕様OS | Windows 7 Ultimate 64bit |
CPU | Core i7-2600(4コア/8スレッド、3.40GHz/TurboBoost 3.80GHz、L3 キャッシュ8MB) |
チップセット | Intel H67 Express |
メモリ | 8GB(PC3-10600 DDR3 SDRAM/4GB×2使用/4スロット、空き2) |
SSD | 128GB×2(SATA3.0/RAID0) |
グラフィックス1 | ATI Radeon HD 5770、DVI-I×2、DisplayPort、HDMI |
グラフィックス2 | Intel HD Graphics 2000、DVI-D×1、ミニD-Sub15ピン |
拡張バス | PCI Express x16×1、PCI Express x4×1、PCI Express x1×2 |
LAN | Gigabit Ethernet |
光学ドライブ | Blu-ray Disc |
そのほかインターフェイス | USB 2.0 ×3(フロント)/×6(リア)、USB 3.0×2(リア)、IEEE 1394、音声入出力(フロント/リア)、5in1マルチカードリーダ、PS/2×2 |
電源 | 450W |
サイズ/重量 | 179×396×368mm(幅×奥行き×高さ)、約10.1kg |
価格 | 250,635円(上記の構成/送料2,625円込み) |
【表2】今回の構成
ベースユニット | 44,100円 |
OS | 21,000円 |
CPU | 34,650円 |
GPU | 29,400円 |
メモリ | 27,300円 |
SSD | (RAID0構成)67,200円 |
Blu-ray Discドライブ | 17,850円 |
PS/2キーボード | 1,050円 |
PS/2マウス | 630円 |
USB 3.0 | 4,830円 |
送料 | 2,625円 |
計 | 250,635円 |
【表3】最小構成
ベースユニット | 44,100円 |
Windows 7 Home Premium | (ベースユニット込み)0円 |
Corei5-2400 | 21,000円 |
内蔵GPU | 0円 |
メモリ | (2GB×1) 6,300円 |
HDD | (250GB 7,200rpm) 6,300円 |
光学ドライブ | (DVD-ROM/再生ソフト無し) 3,150円 |
送料 | 2,625円 |
計 | 83,475円 |
※2011年2月21日17時まで、14万円(税込)以上の構成にカスタマイズした場合、14,700円引き
CPUは、Core i7-2600。4コア/8スレッド、クロックは3.40GHzでTurboBoost時、3.80GHzまで上昇する。L3キャッシュは8MB。またTurboBoostのロジックが変更されバージョン2.0となり、短時間であればTDPを超えた電力レベルまで周波数を引き上げることも可能。この新しくなった部分は、エンコードなど長時間負荷のかかる処理には向かないが、アプリケーションの起動など瞬発力に差が出そうだ。またBTOで選択できるCPUは、Core i7-2600に加え、Core i5-2400(4コア/4スレッド、3.1GHz/3.4GHz、L3 キャッシュ6MB)、Core i5-2500(4コア/4スレッド、3.3GHz/3.7GHz、L3 キャッシュ6MB)となっている。
チップセットはIntel H67 Express。第2世代Core iプロセッサに対応したIntel 6シリーズチップセットとしては、他にP67、Q67、B65、H61などあり、H67は、RAID対応、CPU内蔵のグラフィックス機能をサポートしたもの。USB 3.0の対応は残念ながら見送られたものの、SATAは2ポートのみ6Gbpsに対応している。
OSは、64bit版のWindows 7 Ultimate。BTOでは、32bit版/64bit版全てのWindows 7が選択できる。
1つ目のGPUは、ATI Radeon HD 5770(1GB)。5000シリーズ中ではミドルレンジに相当、SP800基、DirectX 11にも対応している。DVI-I×2、DisplayPort、HDMIの出力を持つ。なお、Intel H57 Expressは内蔵GPUと外部GPUとは排他式だったが、新しいチップセットでは同時使用が可能となっている。BTOでは、外部GPU無し、NVIDIA GeForce GTS 450(1GB)、NVIDIA Quadro FX 380 LP(512MB)、ATI FirePro V4800(1GB)、NVIDIA Quadro FX 1800(768MB)の選択も可能だ。
2つ目のGPUは、Sandy Bridgeで初登場となる内蔵GPU、Intel HD Graphics 2000。DirectX 10/OpenGL 2.1からDirectX 10.1/OpenGL 3.0対応で機能アップしている上に、MPEG-2およびH.264のビデオエンコードエンジンを搭載しているのが特徴。同作クロックも最大で900MHzから1,350MHzへ引き上げられた。Intel HD Graphics 2000と3000の違いは、SPが6基か12基かの違いで、3000なのは今のところCore i5-2500Kとi7-2600Kの「K」が付いたリミッター解除タイプのみ。出力はDVI-D×1、ミニD-Sub15ピン。「Endeavor MR6700」はDVI-DではなくHDMIだったので、一般的にはこちらの方が使い易いのではないだろうか。
拡張バスは、1×PCI Express x16、1×PCI Express x4、2×PCI Express x1。驚く事にPCIバスが無い。これはチップセット自体がPCIバスに対応していないのが最大の理由だろう。また、ATI Radeon HD 5770/1GB装着時、2レーンを占有するため、PCI Express x1の片方は使えなくなる。
そのほかのインターフェイスは、GbE、IEEE 1394、USB 2.0 ×3(フロント)/×6(リア)音声入出力(フロント/リア)、5in1マルチカードリーダ、PS/2キーボード&マウスポート。リアスロットにあるUSB 3.0×2はBTOでのオプションだ。
ドライブは、光学ドライブがBlu-ray Disc、HDDはSATA3.0/6Gbpsに対応した128GBのSSDをRAID0の構成で搭載している。BTOでは250GB SATA 3Gbps対応 7,200rpmから2TB SATA 3Gbps対応 7,200rpmまでのHDD、SSD、RAID構成、2台目の光学ドライブ、2/3台目HDDなど、さまざなドライブ構成を選ぶことができる。
以前「Endeavor MR6700」で電源が350Wで不安と書いた部分は、「Endeavor MR6900」では450Wタイプにパワーアップされているため、外部GPUの選択の幅が広がった。
ケースは「Endeavor MR6700」と同じなので、以前筆者が書いたことがそのまま当てはまる。26Lのケースは幅約17cmと適度なサイズ。フロントは目隠し用のカバーは無いものの、5in1マルチカードリーダ、電源、USB 2.0に音声入出力と、使い易いレイアウトで2台目の光学ドライブを搭載できるなど拡張性も高い。
内部には左サイドのカバーをネジ2本外しだけでアクセスでき、HDDのマウンターは90度回転する「HDDスウィングアクセス」でメンテナンスも容易だ。SATAは計6つ。内3つはSSD×2と光学ドライブに使われている。
各PCI Expressバスは、PCI Express x16はボード長312mmまで、PCI Express x4はボード長180mmまで、PCI Express x1はボード長312mmまでと、PCI Express x4のみ短くなる。またUSB 3.0×2カードはこのPCI Express x4にセットされている。オプションのシリアル、パラレル、eSATAに関しては、PCI Express x1での対応となる。
ファンは、電源、CPU、リアパネルに加え、今回の仕様ではATI Radeon HD 5770があるので、計4つとなり、流石に静音というわけには行かないが、それでも静かな方だ。また、後述する内蔵GPUのIntel HD Graphics 2000はかなりパフォーマンスが良く、エンコード能力も高いため、3Dゲームやワークステーション用途で使わない限り、外部GPUを必要とせず、ファンが4つ以上になるパターンは少ないのではないだろうか。
●驚きのパフォーマンスOSは64bit版のWindows 7 Ultimate。8GBのメモリ空間を全て活用できる。後述するWindows エクスペリエンス インデックスのグラフィックスが7.4と言うこともあり、Aeroの切れも良く、CPUパワーも加わり、とても快適に操作できる。更にSSD×2/RAID0構成なので、ディスクアクセスも速く、Windows 7があっという間に起動する。
Blu-rayドライブは「DH12B2SH」、RAID0の構成になっている128GB×2のSSDは「C300 CTFDDAC128MAG」が使われていた。SATA3.0に対応したMLCタイプだ。C:ドライブ1パーティションで238GBが割当てられている。USB 3.0のホストコントローラーはNEC製だ。
デスクトップ。64bit版のWindows 7 Ultimate。デスクトップには同社お馴染みの「PCお役立ちナビ」などのショートカットが並んでいる | デバイスマネージャ/主要デバイス。光学ドライブは「DH12B2SH」、SSDはここからでは分からないが、「C300 CTFDDAC128MAG」が使われていた | ドライブ構成。C:ドライブ1パーティション、238GBが割当てられている |
プリインストール済のアプリケーションは、同社お馴染み「PCお役立ちナビ」、「初期設定ツール」、そして「マカフィーPCセキュリティセンター 90日期間限定版」、「i-フィルター 5.0 1ヶ月試用版」などと、割とあっさりしている。
Intel ラピッド・ストレージ・テクノロジー | ATI Catalyst Control Center | USB 3.0ホストコントローラ情報 |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。またATI Radeon HD 5770と内蔵Intel HD Graphics 2000(カッコ内の値)との比較も行なっているので参考にして欲しい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 7.4(5.5)。プロセッサ 7.6(7.6)、メモリ 7.6(7.6)、グラフィックス 7.4(5.5)、ゲーム用グラフィックス 7.4(5.9)、プライマリハードディスク 7.9(7.9)。ATI Radeon HD 5770も含めかなりの高スコアだ。「Endeavor MR6700」のIntel HD Graphicsではグラフィックス 5.1、ゲーム用グラフィックス 4.2だったので、Intel HD Graphics 2000は、それなりに強化されているのが分かる。
CrystalMarkは、ALU 73837(73757)、FPU 65060(65026)、MEM 50479(50929)、HDD 42701(42416)、GDI 17627(18405)、D2D 4244(1766)、OGL 34104(3300)。SATA3.0に対応したSSDをRAID0構成なのでHDDは爆速だ。内蔵GPUは、OGLが桁違いに遅くなっているものの、3Dゲームでもしない限り十分なパフォーマンスだろう。
Sandy Bridgeは、ビデオエンコードエンジン(Intel Quick Sync Video)を内蔵し、Intel Media SDK 2.0に対応したエンコーダであれば、MPEG-2とMPEG-4 AVCに関してはハードウェアエンコードが可能となる。早速対応している「TMPGEnc Video Mastering Works5の試用版」でその性能を試すことにした。参考までに筆者のメインマシンであるCore 2 Quad Q9550(4core/4thread、2.83GHz、キャッシュ12MB)+GeForce GTX260(SP216基)の値も掲載している。
結果は、Quick Sync Videoを使わないx264エンコーダ同士の比較でも約2倍(CPU vs CPU)。対CUDAでほぼ同等(CPU vs GPU)。そしてIntel Media SDK Hardware使用時には02:44(Intel Media SDK Hardware vs CUDA)と、驚くべき速度でエンコードが終了した。Intel Media SDK HardwareでCUDAの約半分の処理時間となると、筆者の様にエンコード目的だけでCUDAを使っている(しかも電源を1KWに増強して)ユーザーにはかなり魅力的な環境だ。
これまでエンコードは動画編集と言うイメージが強かったが、去年辺りから流行っている、スマートフォンやタブレットPCなどへ動画をコピーする場合、多くのケースで解像度などを変更しつつMPEG-4 AVCへのコンバートが必要となるため、この機能をGPUに内蔵したのは動画編集しない一般ユーザーにとっても嬉しいポイントとなる。
ただし、「TMPGEnc Video Mastering Works5の試用版」の仕様なのか、Quick Sync Videoの仕様なのか分からないが、今回のように外部GPUがあり、デュアルディスプレイ構成になる場合、プライマリディスプレイをIntel HD Graphics 2000にしないとIntel Media SDK Hardwareが使えなかった。プライマリディスプレイ以外もOKであれば、例えば10bit出力対応の外部GPUをメインで使い、エンコードだけにIntel HD Graphics 2000を割当てると言う事もできるのだが……。
・TMPGEnc Video Mastering Works5
x264エンコーダで04:57 | Intel Media SDK Softwareで25:46 |
Intel Media SDK Hardwareで02:44 | Core 2 Quad/Q9550+GTX260(参考:エンコーダにCUDA使用)。05:05(x264エンコーダだと11:07) |
【表4】ベンチマーク結果
エンコードタイプ | 時間(秒) |
Intel Media SDK Hardware | 164 |
x264エンコーダ(i7-2600) | 297 |
CUDA(GTX260) | 305 |
x264エンコーダ(Q9550) | 667 |
Intel Media SDK Software | 1,546 |
以上のように「Endeavor MR6900」は、アーキテクチャをSandy Bridgeへと一新しながらも、26Lのコンパクトなボディ、そして豊富なBTOと、エントリーな構成からハイエンドまで幅広く対応できるモデルとなっている。メーカー製でいち早く2011年版デスクトップPCを体験したいユーザーにお勧めの1台と言えよう。