20世紀遺跡:近現代史をめぐる/23 秋田・花岡事件跡地

毎日新聞 2012年06月20日 東京朝刊

 ◇強制労働の果てに

 今から67年前の6月、秋田・花岡である事件が起きた。故郷の中国から強制連行され、労働を強いられていた人たちの「蜂起」である。「未完の悲劇」の現場を訪ねた。【栗原俊雄】

 太平洋戦争中の1943〜45年、日本政府は閣議決定に基づき、労働力不足を補うため中国人約4万人を強制連行した。全国35企業135カ所の炭鉱や港湾施設などで労働を強いられた中国人のうち、約17%の6830人が死亡したとされる。

 秋田県大館市の花岡は、戦略物資である銅や鉛、亜鉛を産出していた。中国人986人が、ダム建設や採掘を円滑に行うための、花岡川の付け替え工事などに従事させられた。工事には鹿島組(現鹿島建設)の事業所が当たっていた。

 ここでは最終的に約42%にあたる418人が死亡したという。死亡率の異常な高さが、彼らのおかれた凄惨(せいさん)な状況を物語っている。

 事件は45年6月30日に起きた。中国人が決起、日本人の管理員ら5人を殺害し、逃げたのだ。およそ800人とされる。

 飢えと寒さ、重労働。生き残った人の証言をみると、「蜂起」というよりは死なないための「逃亡」の要素が強かったようだ。いずれにせよ土地勘のない場所で、武器も食料もほとんどない。絶望的な抵抗だった。「蜂起」は警官や地元の警防団員らによって1日足らずで鎮圧され、逃亡者のうちおよそ100人が命を落とした。

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