日蓮宗 現代宗教研究所
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宗報 平成14年7月号 第172号 改訂 第4号

創価学会の会則・宗教法人規則変更
日蓮宗現代宗教研究所主任 伊藤立教 

 創価学会の内部規範である会則が、この平成14年4月1日に改正施行された。この時点で、宗教法人創価学会そのものの規範である宗教法人規則は変更されていなかった。
 会則・規則とも従前は日蓮正宗の外護をうたっているが、変更後の会則ではこの文言が削除されている。つまり、会則では日蓮正宗を外護せず、規則では日蓮正宗を外護することになって、矛盾することになった。この点をついた批判も、出た。
 その矢先の4月26日、規則が文部科学省の認可を受け変更施行されて、矛盾に対する批判は無意味になった。これで、平成3年の日蓮正宗による創価学会破門以来の会則・規則と実態との矛盾も、ようやく解消される形になった。

会則の変更−内棲型宗教から単独新宗教となっての再出発
 全14章74条から全15章81条に変更した会則には、次のような特徴がある。
一、 旧会則にはない前文で、牧口常三郎初代会長と戸田城聖第二代会長について述べたあと、
  池田大作第三代会長は、日本のみならず世界に日蓮大聖人の仏法を弘通し、更に仏法の理念を平和・文化・教育などの分野に展開して、仏教史上初めて世界広宣流布の道をひらいたのである。
として、「三代会長」を「永遠の規範」とうたっている。日蓮宗はちょうど百年前から海外開教に着手して7ヶ国に23拠点をもち、日本山妙法寺は85年前から海外開教して7ヶ国に17仏舎利塔を建て反戦平和を訴えている。72年前設立の創価学会が初めて世界広宣流布の道をひらいた、のではない。
二、 教義については、旧会則の、
  日蓮正宗の教義に基づき、日蓮大聖人を末法の御本仏と仰ぎ、日蓮正宗総本山大石寺に安置せられている弘安2年10月12日の本門戒壇の大御本尊を根本とする。
を削除し、新会則で、
  日蓮大聖人を末法の御本仏と仰ぎ、一閻浮提総与・三大秘法の大御本尊を信受し、日蓮大聖人の御書を根本として、日蓮大聖人の御遺命たる一閻浮提広宣流布を実現することを大願とする。
と変更した。このすぐ後に、「三代会長」に関する一条を新設し、
  牧口常三郎初代会長と、戸田城聖第二代会長、池田大作第三代会長の「三代会長」は、広宣流布実規への死身弘法の体現者であり、この会の永遠の指導者である。
とうたっている。歴代三会長をあげているが、現在生きているのは池田氏。とすれば、池田氏を永遠の指導者とするわけで、名誉会長・SGI会長どころではない「教祖」の誕生である。両雄並び立たずと言うことか、教団内教団という内棲型宗教であった創価学会は、自前の教祖をもって教権をにぎり、日蓮正宗法主の膝下を離れたが、教義は、いまだに日蓮正宗のそれを借りている。
三、 人事については、「三代会長」−実際には池田大作氏−を別格とし、場合によっては置かれる「名誉会長」がいて、
  会長は、この会を統理する。
とうたう通り、「会長」がいて、その下に「理事長」「副理事長」「副会長」がいる。
  理事長は、宗教法人「創価学会」の代表役員を兼務する。
とある「理事長」は、会長が任命する。創価学会は、宗教法人創価学会代表役員である理事長の上に会長がいて、その会長の上に池田大作氏がいるという組織である。会長・理事長・副理事長・副会長は、総務の中から選ばれるが、その総務は、
  信仰経験、人格、識見、指導力、教学力ともに優れた会員の中から、参議会の諮問を経て、総務会の議決により翠出し、これに基づき会長が任命する。
となっていて、最初の総務はどうやって選出したのか、選挙等の互選のことも書かれていないし、わかりにくい。もっとわかりにくいのは、
  この会に、三代会長の学会精神を厳正に保持し、深化・継承していくため、最高指導会議を置く。
と規定しているが、最高指導会議員若干名をどうやって任命するのかが不明である。これを、永遠の指導者池田大作氏が直接間接に指名しているとしたら、言わずもがなである。
四、 注目すべき点として、
  この会に、社会問題についての見解ならびに国・地方白治体の選挙に関する対応を協議・決定する機関として、中央、方面、県の各本部にそれぞれ社会協議会を置く。
と新たに書き加えられた社会協議会は、福祉関係の組織と紛らわしい名称だが、ずばり選挙対策のための組織である。政教一致でどこが悪い、といっているように読める。
五、 もうひとつ注目すべき点として、
  この会は、この会と教義、目的を共通にする世界各国の団体からなる国際的機構として、創価学会インターナショナルを設置する。
と、初めて創価学会インターナショナル(SGI)を明記したことである。平成7年制定のSGI憲章には、SGIを創価学会海外支部とはうたっていないが、実態は創価学会海外支部といえる。ここでも、この辺を暖昧にしたまま規定している。SGI会長は、池田大作氏である。これで池田大作氏は、名実共に創価学会全組織の頂点にたった。
六、 会則の最後に補則として、
  この会則は、この会およびその運営に関する基本的事項を定めるものであり、この会の会務のうち法人の運営について定める宗教法人法に基づく宗教法人「創価学会」規則と相俟って、この会の基本的な規範となるものである。
と書かれている宗教法人「創価学会」規則について、以下、みてみたい。

規則の変更−会則に比べて軽い扱い
 全5章37条から全5章42条に変更した規則は、先に機関紙聖教新聞で大きく扱われた会則変更とちがって説明や関連記事もなく、条文を掲載するだけの小さな扱いである。内容についても、前述した会則変更と同じであるが、次の点は会則変更でふれていない。
七、 会計監査について、
  監査法人または公認会計士の外部監査を受けなければならない。
と初めて規定した。また、公益事業として墓苑の経営を行うことは旧規則でも明記されているが、公益事業に対する支援については、次のように条文が変更されている。
八、 公益事業に対する支援について、旧規則にあった「宗教法人日蓮正宗を外護すべく供養し」の文が削除され、
  学校法人創価大学、学校法人創価学園その他この法人と関連のある公益法人および公益事業に対し、事業資金その他の援助を行なうことができる。
の文だけを残している。

いま会則・規則を変更した理由
 平成3年の日蓮正宗からの破門、平成7年の宗教法人法改正など、実態にそぐわない会則・規則を変更する機会があったのに、いま会則・規則を変更した理由はなにか。
 本尊について、聖教新聞3月30日号に載っている、全国総県長会議での斉藤教学部長の「創価学会会則の改正について」という記事の中で、
   次に「一閻浮提総与・三大秘法の大御本尊を信受し」とあります。これは、創価学会に貫かれてきた「大御本尊への信心」の本義をしめしたものです。
と説明し、弘安2年10月12日に大御本尊を図顕された大聖人の心に呼応する信心こそ「大御本尊を信受する」という意味で、一閻浮提総与の語に大御本尊の本義が明らかで、
   「分身散体」の意義に照らして、弘安2年の大御本尊を書写した御本尊を正しい信心で受持することはそのまま大御本尊の受持になります。(中略)したがって、各自が家庭に御安置した御本尊を拝することが、そのまま大御本尊を信受することになるのです。どこか特定の場所に参拝しなければ成仏できないという日顕宗(筆者注−現日蓮正宗阿部日顕法主の名を用いて日蓮正宗を揶揄攻撃する言葉)のような誤った考えは大聖人の御本意ではありません。
と論じている。総本山大石寺への参詣を絶対視していたことへの釈明は、ない。「日顕宗」という言い方には、現法主が悪い、伝統ある宗門は別、という意味があるのか。
 前記の会議で、秋谷会長が会則改正について、宗門とのしがらみを排し、仏意仏勅による大聖人直結の教団と明かし、「三代会長」の精神継承のために制度・機構を整備し、杜会的使命や国際的役割を果たす体制を整備するため、と言っている。
 池田大作氏が永遠の指導者であり続けるために、公明党が連立政権与党でいるうちに、池田大作氏長男池田博正副会長への世襲後継問題も含めて対応しておこう、報道機関の「自主規制」が利いているうちに、ということか。実際、今回の創価学会会則・規則変更については、政治・宗教等に関わる問題であるのに、新聞雑誌等でほとんど報道されていない。
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