特集

南相馬・渡辺病院が新地移転 原発事故で医師・患者減

新地町への移転を決めた渡辺病院=南相馬市原町区

 福島県南相馬市原町区の渡辺病院(175床)は福島第1原発事故で事実上撤退し、福島県新地町に移転する。放射能に対する不安から医師と看護師が減り、患者も避難の影響で激減したことが響いた。同病院の移転で同市の総合病院は四つになる。

 新病院は140床で町が2.4ヘクタールの用地を貸与する。総事業費は約30億円。国、県から合わせて10億円規模の補助金を見込み、4日の県議会では一部関連予算が可決された。既に着工し、来年5月に開院する予定。
 病院は東北大の協力病院で原発事故前は常勤医9人、看護師約80人がいたが、事故で若い世代を中心に離脱。入院病棟を閉鎖し、外来に限って診療を続けた。現在は常勤医3人、看護師約40人で診療に当たっている。
 患者は南相馬市のほか、原発事故で避難区域に指定された双葉郡の住民が多く、集団避難に伴って患者が減った。「入院患者を受け入れられない上、外来患者が減り、収入は原発事故前の10分の1に減った」(渡辺泰章院長)という。
 病院は同市での経営継続は難しいと判断。新地町は南相馬市より原発から遠く、医師と看護師を確保しやすいことや総合病院がないことから、同町への移転を決めた。病院の意向調査では、かつてのスタッフの約8割が「新病院で再び働きたい」と回答したという。
 病院は新病院が完成するまで外来診療を続ける。移転後も原町区にある系列の介護老人保健施設を現病院に移し、診療機能を一部残す。
 渡辺院長は「一時は廃院も考えた。原発事故前と同規模の医師、看護師の確保が課題になるが、克服して早く開業できるようにしたい」と話している。
 同病院の移転と南相馬市のほかの4総合病院の運営規模の縮小で、同市内の病床は原発事故前の1046から300台に減る。


2012年07月05日木曜日

Ads by Google

△先頭に戻る