10%に引き上げれば、滞納はさらに増え、消費税倒産も広がりかねない。「景気好転」が実施の条件として議論されたのも、消費税が企業業績や消費動向と密接につながるからだ。
残される世代の思いは複雑
税制だけでなく、日本をどのような社会にするのか。小さい政府で行くのか、北欧のような福祉国家か。税金を上げるなら、どんな社会を目指すか。突っ込んだ問いかけを政党や有権者にすべきではないか、という意見も省内にある。
「どんな社会にするかは政治家が考えるこどだが、選択肢を示すのは役人の仕事だ。それやらずに国会の仕事である法案の通過に全精力を傾けるのはおかしい」
そう語る若手もいる。勝次官はしばらく留まって法案の成立と政権の行く末を見届けることになる。「あとは君たちが頑張れ」ということなのか。残される世代の思いは複雑だ。
増税で財政再建を目指すなら、IMFが云うように20%を超える消費税率が必要だろう。そんなことができるのだろうか。
20%になったらどんな福祉や行政サービスが国民に提供されるのか。そうしたビジョンを語らず「このままではギリシャみたいなことになる」と半ば脅し、「消費増税に政治生命を賭ける」と首相は、問答無用で突っ走った。
消費税は「全額福祉目的」とされるが、増税で浮いた資金は何に使われるのか。最近、震災対策、景気対策で公共事業が膨らんできた。「コンクリートからヒトへ」と宣言した民主党のマニフェストの旗は降ろされ、新幹線や道路、ダムへの要望が再び増している。
「主計局は予算を付ける組織。事業予算は彼らの権限だから、増税でその枠を広げたいという思いは分からないでもない。しかし政治家と組んで目先の予算を確保するような中途半端な増税は、歳出の膨張を招くことになる。なおさら社会保障削減に圧力がかかる」、と分析する人もいる。
「政権交代すれば予算の無駄を徹底的に削る。10兆円くらいは簡単だ」と言っていたのは、増税大御所の藤井・民主党最高顧問だ。その民主党は、約束したマニフェストをすべて棚上げし増税だけを決めて、分裂した。