IMF(国際通貨基金)は5月に出した対日審査報告書で、消費税増税の必要性を強調し、来年度から10年かけて15%にする案を軸に、22%まで上げる超増税を選択肢として示した。IMFは国際機関だが、財務省が理事や幹部職員を多数派遣しており、「対日審査報告書」は財務省による「腹話術」、つまり財務省が言いにくいことをIMFの口を借りて発言する、という構造である。
10%程度の増税では日本の財政再建はできない。これも財務省内の常識だ。主税局などでは「将来、どのような税制が望ましいのか」が検討されてきた。消費税だけで賄えないなら、所得税の累進税率の引き上げや相続税の増税など、高額所得者への課税を検討すべきだ、という意見は根強い。
強者に有利な消費税
消費税が抱える「欠陥」になにも手が打たれないまま、税率引き上げだけが決まってしまったことへの違和感も残っている。
輸出企業が恩恵を受ける「輸出戻し税」。輸出製品には消費税がかからないので製品を輸出する企業が、下請けが払ってきた消費税を「戻し税」として受け取れる。トヨタ自動車は2200億円(2010年)もの戻し税を受け取った。
下請けは「企業努力」で消費税分のコストダウンを求められ、メーカーは戻し税で潤う、という仕組みは「強者に有利な消費税」を印象付ける。
弱者に厳しい逆進的とされる消費税の欠陥を埋める策として、生活必需品に軽減税率を設けることや、低所得者に所得に応じて還付金を支払うことなどが検討されたが結論がでないまま、増税だけが決まった。雇用不安や所得格差が問題になっている現状で、税率10%への引き上げが実施されれば、重税感は増すことは避けがたい。
消費税は、消費者が負担する税金だが、納入義務者は消費税を含む代金で売った業者だ。この不況で、消費税の滞納が増えている。小さな商店や下請け業者が、消費税を価格に転嫁できず、納税できないことが問題になっている。